6万6000歩を歩いて、つながる魅力のかけらたち。2026年、皆さんと巡りたい釜山のこと|Vol.3 チョガッポに現代の息吹をもたらす HANJIHEE CLASSIC、その拠点を訪ねて
こんにちは。
韓国プレミアムギフトセレクション「梅と木もれ日」です。
2026年、当店では韓国・釜山にて、憧れのハン・ジヒ先生に学ぶチョガッポのワークショップを企画しています。その舞台を自らの目で確かめ、最高のプログラムをお届けするために、3泊4日の下見旅行へ行ってきました。
自分の足で歩き、街の空気を感じる中で刻んだ歩数は、6万6000歩。
Vol.1、2では海雲台(ヘウンデ)の景色と食をお届けしました。続くVol.3では、HANJIHEE CLASSICの唯一の拠点、直営ショップとギャラリーを訪ねて、「繋ぎ手」としての私が皆さまにお伝えしたいことを綴ります。
これまでの記事もあわせてお楽しみください。
ローカルブランドが向かう先、「世界」そして「ライフスタイル」
》 世界のハイブランドからも受注する、少数精鋭の工房
展示会を開けば、遠方からも多くのファンが駆け付ける。日本のポジャギ愛好家たちを虜にする釜山のブランド「HANJIHEE CLASSIC(ハンジヒクラシック)」。その洗練されたモダンなデザインは、ほんの数人の手によって小さな工房で生み出されています。
ソウルにさえ直営店を持たず、未だ限られた流通網しか持たないローカルブランド。その工房には、世界のハイブランドやラグジュアリーホテルからも、確かな信頼とともに注文が寄せられています。
》 作品を形作るのは、厳選された「5種類」のシルク
ブランドの最大の魅力は「素材と色」。ですが、意外にも扱う生地の種類は、必要最低限にまで厳選されているのをご存知でしょうか。
例えば、シルク。チマチョゴリに使われる絹素材は、知れば知るほどその種類の多さに驚かされるものですが、HANJIHEE CLASSICのシルクの作品は、サテンのタンから平織りのミョンジュ、そして地模様入りのものを含めても、基本はわずか「5種類」のみで成り立っています。もちろん、作品の用途に合わせてそれ以外の素材を敢えて用いることもありますが、骨格を成すのはこの基本の5種類のどれかです。
伝統技法を用いて、あの都会的でスタイリッシュなデザインを紡ぎ出す。そのために必要なのは、多彩なバリエーションではなく、逆に厳選することで実現する「徹底した質の管理」ではないかと、私は推察しています。

》 ブランドの生命線、精魂を傾けて生まれる「名もなき色」
一方で、「色」については飽くなきまでに豊かです。最高級シルク「ホンドゥッケミョンジュ」だけでも、その数は50色を超えます。その色彩はあまりに繊細で、日々作品に触れている私も、商品説明でその魅力を伝えようとするたび、安易には言い表せない「名もなき色」の奥深さに頭を悩ませることが少なくありません。
HANJIHEE CLASSICでは、モシ(麻)もミョンジュ(絹)も、その大半を染色から手掛けています。さまざまな染料と、果実や植物などの天然素材をも用い、ブランド独自のカラーコードを管理。信頼を寄せる染色職人の技をもって、生地を理想の色に染めています。この精魂を傾けて生まれる色彩こそが、ブランドの美学を支える生命線なのです。

》 原点は韓服デザイナー
生地に対するこうした強いこだわりは、ブランドの代表であるハン・ジヒ先生が「韓服デザイナー」だったことに由来します。先生のキャリアは、約25年前にチマチョゴリのデザイナーとして始まりました。自らデザインし、仕立てる。その工程で生まれる余り布を使って作っていたのが、チョガッポのクッションカバーであり、テーブルランナーでした。それらは、チョガッポ作家として歩み出す前から、すでに顧客たちの間で静かな評判を呼んでいたといいます。

》 目指す舞台は「世界」、そして「ライフスタイル」
ブランドのベクトルが向かう先。それは「世界」です。その志は、ブランド名に冠した「CLASSIC」という言葉にも現れています。
━ 世界に認められる一流のブランドになる ━
その気概が、「一流の」という意味の「CLASSIC」に込められています。創業当初はピアノ教室と間違われることも多かったというそのブランドは、今、着実にその歩みを進めています。

そしてもう一つ。
美学を咲かせる舞台は「ライフスタイル」です。
アートとしてのインテリアを創作しながらも、それは決して遠くから眺めるだけの高貴な対象ではありません。紡いでいるのは、あくまで日々の暮らしに寄り添うデザイン。
あのトーンダウンした優しく現代の生活に溶け込む色合いは、「生活の中に、チョガッポが当たり前にある風景」を願う、祈りの表れのように私は感じています。

チョガッポの美学が琴線に触れる場所「HANJIHEE CLASSICギャラリー」
》 360度、美しい色彩に包まれて過ごす時間
ちょうど1年ほど前、直営ショップの2階に私設ギャラリーがオープンしました。今回、初めて足を踏み入れた私を迎えてくれたのは、展示会でしかお目にかかれない大型作品の数々、そして先生の原点であるチマチョゴリ。ハン・ジヒ先生の美学が息づく、瀟洒な空間が広がっていました。
ありがたいことに、そこで先生との打ち合わせをさせていただく機会を得ました。360度、豊かな色彩に包まれて、私自身の感性が共鳴していくような贅沢なひととき。それは、まさに至高の時間でした。

さながら博物館のように展示されている

》 見せる場から、交流の場へ
直営ショップの階上にギャラリーを作るという先生の構想を初めて伺ったのは、2年前に遡ります。当時はまだ具体的な青写真を描く前段階でしたが、お話を伺いながら「より多くの人に門戸を開き、誰もが気軽に立ち寄れる空間を作りたい」という先生の熱い思いが、真っ直ぐに伝わってきたのを覚えています。

そしてオープンから1年。ギャラリーは今、単なる展示の場を超えて、「交流する場」へと進化し始めています。先日も、1日限りのブッククラブが開催されたという情報が飛び込んできました。ワインを片手に、1冊の小説について自由に語り合う。それはチョガッポとはまた別のチャネルで繋がるコミュニティです。準備の段階から心底楽しんでいらっしゃるご様子が、SNSを通じてダイレクトに伝わってきました。「チョガッポが日常と共にある暮らし」という理念を、先生はこの場所から実にしなやかに、静かな波紋を広げるように発信し続けています。
》 チョガッポの美学が咲く場所は、意外にも飾らない街
より遠くへ、より広く、その美学を届けようと歩み続けるHANJIHEE CLASSIC。ですが、その直営ショップは、正直に申し上げて、海外からの観光客にとっては決して見つけやすい場所にあるとは言えません。

地下鉄1号線「ヨンサン駅」からバスに乗り換え、「釜山キョンサン大学入口」下車。
バス停から徒歩10分、大通りから少し奥まった静かな市街地の一角にある
「直営ショップに行きたいけれど、どうやって行けばいいかわからない。」ファンの皆さまからも、そんな声をよく耳にします。
そこは、海沿いの煌びやかな観光地でも、華やかな高級ブティックが並ぶショッピングエリアでもありません。目にするのは、緩やかに流れる川、市民が憩う公園、そして団地といった、人々の生活の匂いがする、何気ない日常の風景です。
チョガッポは、かつて布が貴重だった時代に、庶民の暮らしの中で受け継がれてきた生活の知恵でした。直営ショップもまた、そのルーツを物語るかのように、飾らない街に溶け込み、静かに、けれど凛として佇んでいます。

繋ぎ手としての私の願い
》 「梅と木もれ日」が大切にしていること
私が「梅と木もれ日」を通して、日本のお客さまにお届けしたいもの。それは、韓国の手仕事に触れ、その美しさと共鳴する「時間」です。
単なる物販に終わらず、韓国の作家と日本のファンの繋ぎ手でありたいと願っています。作品を通じて繋がることで、皆さまの日々の暮らしに、心地よいひとときが訪れること。それは店主としての何よりの喜びです。

》 2026年、釜山ワークショップの実現に向けて
当店はまだほんの小さな存在です。HANJIHEE CLASSICの全ての作品を仕入れて、ファンの皆さまにご紹介するだけの十分な力は、今の私にはありません。
ですが、皆さまを直営ショップにご案内することであれば、私にもできると思うのです。釜山を訪れて、私が届けきれない数多くの作品を間近でじっくりと見て感じてほしい。当店を立ち上げた当初から、私はその想いを抱いてきました。
そして2026年。その想いをかたちにすべく、釜山でのワークショップを企画しています。HANJIHEE CLASSICの美学を五感で受け止めながら、チョガッポ作りを体験する。今回私自身がギャラリーを訪れ、その舞台としてここ以上にふさわしい場所はないと確信しました。
ハン・ジヒ先生、そして工房の職人の方々との信頼を築いてきた私だからこそ実現できる、ファンの皆さまのための特別なプログラム。
その準備を今、進めています。

「Vol. 4 職人さんたちが立ち寄る地元の店」へと続きます。
