#20 半分は「やさしさ」
土曜日は、スタートが遅めの日。
目覚ましもかけずに目を覚ますと、
時計は11時を回っていた。
「そろそろ起きるか〜」
半分まだ寝ぼけたままリビングへ行くと、
床に白黒の小さいのが倒れていた。
「かうぽん、おはよ〜」
返事はない。
まぁ、寝てるんだろう。
そう思って歯磨きと洗顔を済ませ、
戻ってきても、まだそのままだった。
「…かうぽん?」
肩に触れた瞬間、
「あっつ!!」
慌てて体を起こすと、
顔を真っ赤にして苦しそうにしていた。
「かうぽん、大丈夫!?」
「ふぅ…ふぅ…」
苦しそうな息づかいだけが返ってくる。

こんなかうぽん、見たことない。
「どうしよう…。
病院? 動物病院?
薬は? 人間のやつ飲ませて大丈夫なのかな…」
何も分からない。
その時、小さな手が
きゅっと私をつかんだ。
(とりあえず、冷やさなきゃ。)
急いでベッドへ運び、
額に冷却シートを貼る。
保冷剤を首の後ろや脇の下にあて、
近くで様子を見守った。
「お水飲める?」
「ご飯は?」
聞いてみても返事はない。
でも、このままでいいはずがない。
「よし、ちょっと待っててね。」
私は急いでお粥を作った。
汗をかいているから塩分も。
食べやすいように柔らかく煮て、
卵も入れる。
出来上がったお粥を運び、声をかける。
「かうぽん、お粥できたよ。」
やっぱり返事はない。
「ちょっとでも食べないと元気になれないよ。」
それでも動かない。
私は少しだけ考えてから言った。
「…これね、
スペシャルお粥なんだ。」
「…すぺしゃる?」
「うん。半分は『優しさ』でできてる。」
「……たべる」
かうぽんをそっと起こし、
背中を支えながら一口運ぶ。
「どう? 食べられそう?」
「…すぺしゃる」
会話はあまりかみ合っていない。
でも、
かうぽんは一口、また一口と食べ進めた。
ときどき
「すぺしゃる」
とつぶやきながら。
最後の一口を食べ終えると、
お水を飲んでまた横になった。
冷却シートを貼り替える時、
おまじない代わりに、
四葉のクローバーをマジックで描いてみる。
効くかどうかは分からない。
でも、
ちょっとでも元気になりますように。
食器を片付けて戻ると、
かうぽんはもう眠っていた。
さっきより穏やかな寝顔を見て、
私も少しだけ安心する。

ソファに腰掛けると、
気が付けば私も うとうとしていた。
「ゴソゴソ」
物音で目を覚ます。
見ると、
かうぽんが布団から起き上がっていた。
「かうぽん、大丈夫?」
すると、
かうぽんは私の足にぎゅっと抱きついて
「やさしさ、きいた」

その一言で、
張りつめていたものが
ふっとほどけた。
「そっか…よかった。」
ちょっと鼻声になったけど、
かうぽんにはひみつ。
かうぽんは、そんなこと気にもせず
私にもたれかかりながら
いつもの調子で言った。
「ふむ」
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