#8 おまじない
思い返すと、昨日の夜から少し違和感はあった。
喉が痛い。
なんだか体もだるい。
まあ寝れば治るだろうと思っていたのだけれど、
朝起きると案の定、熱が出ていた。
重たい体をなんとか起こして、
会社に病欠の連絡を入れる。
あぁー…
今日やろうと思っていた作業があったのにな。
そんなことを考えたのも束の間、
脳みそは思考を停止した。
気が付くと眠っていたらしい。
何か重たい。
そんな感覚で目が覚めた。
布団の上に何かが乗っている。
そう、やつである。
「かうぽん…」
白黒の丸いのは、
私のお腹の上でのんびりしていた。
「今日は体調悪いからさ。そっとしておいてもらえる?」
かうぽんは私の顔を見た。
そして「ふむ」と言って布団から降りると、
どこかへ行ってしまった。

薄情ものめ。
そう思った。
体が弱ると心も弱るらしい。
なんだか無性に悲しくなって、
少しだけ涙が出た。
仲良くなったと思ってたのに。
ちょっとくらい心配してくれてもいいじゃん。
そんなことを考えながら、
私はもう一度目を閉じた。
しばらくして、
ふわりと風を感じた。
やさしくて、
心地いい風だった。
固まっていた体から、
少しずつ力が抜けていく。
そのまま私は、
深い眠りに落ちた。
どのくらい眠っただろう。
自然と目が覚めた。
なんだか
おでこに違和感がある。
手を伸ばしてみる。
「ん?」
指先に触れたのは
冷却シートではなく、四葉のクローバーだった。
「なんで?」
思わず声が出た。
隣を見ると、
白黒の丸いのが転がっている。
私はクローバーとかうぽんを見比べた。
「何かのおまじないかな…?」
もちろん、
熱に効くとは思えない。
でも。
そういえば。
熱が下がっている。
私は起き上がり、
近くのコップにクローバーを生けた。
水を飲んで、ふうっと息を吐く。
すると
転がっていた白黒がむくっと起き上がった。
「かうぽん。クローバーありがとう。
おかげで元気になったよ」
「ふむ」
かうぽんは目をこすりながら言った。

そういえば、
こんなにぐっすり眠ったのは
久しぶりかもしれない。
かうぽん。
薄情ものなんて思ってごめんね。
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