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真面目に書き始めたのに、途中で全部いやになった文章論《今週の三題噺発表》

 
誰も読んだことのない記事を書きたい。そんな無茶を今日も思っている。

文章とは読者の認識に小さな揺れを与える表現である。書き手は言葉によって見慣れた風景の角度を変え、読み手はその揺れの中に新鮮さを見いだす。おもしろい文章とは、既知の景色に未知の入口をつくる営みなのだ。

……あー、もうやめやめ。

なにこれ。町内会の文化講演会が始まったのかって。自分で書いててもう眠い。2行目くらいで眠い。

こういうこと、たまにやるんですよね。いや最近の記事がそうかも。ちょっと賢そうに入りたがる。文章にメガネをかけて腕まで組ませちゃう。しかもレンズにうっすら色が入ってるタイプのメガネ。

でもね、私がほんとうに書きたいのは、こういう優等生のやつじゃない。

もっと変なやつがいい。読んだ人が「うまいですね」と言う前に、一回「え、は?何これ」って止まるやつ。
褒めにくい、でも気になる。
帰り道に「なんやったんやろ」と思い出す。
お風呂で思い出して、なんだかちょっと腹が立つ。次の日また読みに来てくれる。そういう少し感じの悪いおもしろさがほしい。

誰も読んだことのない文章を書きたい、というのは、そういうことなんだろう。

無茶を言ってるのはわかるのよ。そりゃそうだ。人類がどれだけ文を書いてきたと思っているのか。
その中で「まだ見ぬおもしろさを」って、言ってることがほぼ冒険王である。新世界に行くしかない。

でも書く人って、少しは調子に乗ってないと投稿画面に向かえない。
最初から「既存の表現の範囲内で、穏当に尽力いたします」なんて言ってたら、私は3日で飽きてビール飲む。で、すごく満足そうな顔で寝る。自分でも「今日はいい判断だった」と思いながら寝る。

期待されるのって、ちゃんとうれしい。
「この人ならこういう文書くよね」
そう思ってもらえるのはめちゃくちゃありがたい。

でもね、その期待どおりにきれいにまとまった時ほど、左肺のあたりがムズムズする。
よし、ちゃんと書けた。読まれそう。うんたぶん褒められる。そう思った直後に(いやちょ待てよ、ちょっと品行方正すぎないか)って。

学級委員のまま終わった感じがする。
学級委員が悪いわけではない。
学級委員には学級委員のよさがある。
ずっと学級委員だと、たまに机を蹴り飛ばして廊下を走りたくなる。
走らないけど。
年齢的にも走らないけど。
気持ちとしてはちょっと走る。尾崎。

人って、やっぱり「知らないもの」に弱いと思うんですよ。ぜんぜん知らないと怖いけどさ。怖いと離れちゃう。

そこから少しズラす。ちょっと見たことある景色の中に、ひとつだけ変なものが混ざってると、ひっかかりが気になり目が行く。

迷彩ってあの感じあるじゃないですか。見えてないはずなのに、いったん気づくと「いた!」ってなる。文章もあのくらいが理想なんです。

全部が奇抜だと読んでるほうも疲れる。テーマパークで朝から晩まで絶叫マシンに乗せられるみたいなもんで。
もういい。
ベンチに座らせてくれ。
コーラは吐くからオレンジジュースをくれ。

でね、ふつうの景色の中に一個だけ変な角度があると、その文は急に立ち上がる。「ん?今なんかいたよね」ってなる。あれがほしい。とてもとても欲しい。

私は整った文章を書きたいわけじゃない。
途中でちょっと転ぶやつがいい。
いや、本当に転びたいわけじゃないんですよ。そんなことしたら普通に痛いし、今は転んだら直ぐに骨に亀裂が入るし。

でも文としては少し膝をすりむくくらいでいたい。連続ドラマだって、毎週ぜんぶ予定通りだったら、途中で見るのをやめるでしょ。
安心はするけど、「はいはいそれな。……で?」
来週も気になるには、ちょっとした裏切りがいる。

この「ちょっとした」が大変なんですよ。
外しすぎると事故。
外さないと優等生。
毎回そのあたりで、私の中の真面目な自分と、少しひねくれた自分が小競り合いをしている。
かなり小さい戦いである。
世界は1ミリも動かない。

そんな考えだから失敗もする。
かなりする。

今日は出る気がする、今日は何か新しい線が引ける気がすると思って書き始めたのに、あとで読むと、インク切れのサインペンで大事な紙をなぞったみたいな文になってることもある。

線はある。うっすらある。あるけど心細い。
ミミズが午後に反省しながら歩いた跡みたいな線である。こっちは必死だったのに、仕上がりだけ見ると「え、これ?」って。
切ない。
文章の神様がいるなら、せめてもう少し濃く出してほしい。町内会の備品のような、毎回かすれた筆記具で試される身にもなってほしい。

でもまあ、そういう薄い日も込みなんだろうなと思う。誰も読んだことのない文って、最初から堂々としてない気がする。
ちょっと危なっかしい。
少し頼りない。
読むほうも、「おいおい、大丈夫かなこの人」と思いながらついてくる。

その先にしか見たことのない景色ってないんですよね。

ちゃんとした文は立派だし、えらい。けど記憶に残る文って、だいたいどこか少し変だ。
少しだけ感じが悪い。
少しだけ予測を裏切る。
そこに人の匂いが残る。

結局、読者がもう一回会いたくなるのは、完璧な人ではない。

ちょっと転ぶ。
ちょっと外す。
そのくせ、ちゃんと戻ってくる。
そういう文のほうが、「この人また何かやるかも」と思わせる。昔のとんねるずのように「こいつらは何かやらかす」って。

だったら私も、そのへんを目指したい。
少し澄まして入りつつ、途中で自分でも飽きて、あーもう普通にしゃべるか、と崩れていく感じで。

そのくらいがちょうどいい。
少なくとも私はそういう文を読みたい。
でもそんな文はあまり見ない。
ということは、書くしかない。
面倒だけど。

まあその面倒くささ込みで、ちょっと燃えるんですよね。ああ、たちが悪い。
それが飽きずにしつこく書いてる理由なんだろう。
 

《前回の三題噺》
1.インク切れのサインペン
2.迷彩
3.連続ドラマ

説明しよう!三題噺とは、まったく関係のない3つの言葉を強引にひとつの話にまとめる文章遊びであーる。頭をフル回転させながら、「どうつなげる?」「オチどうする?」という落語的プレッシャーが味わえます。エピソード構成力、語彙力、そして無茶ぶり耐性まで育つ、文章版・筋トレRPG。それが三題噺。やってみなきゃ、もったいない!

《今週の三題噺》

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