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noteの収益化より前に、人との出会いだ ━━有料記事やメンバーシップの収益化《今週の三題噺発表》

 
4月。新生活や新社会人、新学期。そんな新たな環境にタイムラインはだいたい軽く散らかる。

誰かの気合いの入った発信、誰かの正論、誰かの「これで売り上げがどうこう」という話。風が強い日にスーパーの前へ出ると、紙袋だけが異様に自信満々で歩き出すことがあるけれど、あれに少し似ている。中身より先に勢いだけが道路に出てしまう感じ。見ていると、たまに胸のあたりがざわつく。

もちろん収益化が悪いわけじゃないんだよ。有料記事を売るのも、メンバーシップを運営するのもぜんぶ健全。書いたものに値札がつくのは書いてきた人間からすると、かなりうれしい出来事です。自分の言葉がただの空気ではなく、ちゃんと誰かの財布の前で一度立ち止まらせたということだから。そんなの、うれしくないわけがない。

ただ、そこばかりが話題になると、ちょっと変な感じがしてくる。

テトリスの「消し方」だけ教わっている感じなんだ。本当はどんな形のブロックが降ってきても、いったん受け止めて、いびつなまま置いてみて、積み上がった変な山を見て「あ、これ私っぽいな」と笑う時間があったはずなのに、いつのまにか「4列いっぺんに消す方法」だけが神話になっている。いや、そりゃ消えたら気持ちいいんだよ。気持ちいいけど人生のほうはそんなに都合よく棒が来ない。

書くことまで攻略本の顔をして近づいてくる。タイトルの付け方。導線の作り方。刺さる導入。売れる設計。狙いうちの方法。狙いうちなんて書くとスナイパーみたいで物騒だけど、実際かなりの人が画面の向こうの誰かの心臓ではなく購買意欲のあたりを静かに見つめている。ここを押せば反応する、ここで不安を煽れば申し込む、みたいな地図が配られている。たぶん役に立つのだろう。かなり。悔しいけど。

その地図ばかり見ていると、だんだん人の顔が薄くなる。

お金の向こうには人がいるはずなのに、お金の話だけしていると、人がレシートみたいに細くなる。名前も体温も、その日機嫌が悪かった理由も、昨日たまたま読んだ文章に救われたことも、ぜんぶ省略されて最後に金額だけ残る。

そうなると書くことが急に寒い。乾いたおしぼりで顔を拭いている感じがする。拭いているのにぜんぜん潤わない。

mixiの時代、文章はもう少し不器用だった。
今思えば、あれはインターネットというより、よく知らない町の集会所みたいなものだった。

文章を書いていると向こうから人が来た。ものすごく有益なことを書いたからではなく、変な笑いのツボが同じだとか、ラブホテルの前で急に真面目になったとか、そういう理由で来た気がする。

情報ではなく、人柄のほうに引っかかっていた。すごく雑に言えば、文章を読まれたというより気配を見つけてもらっていた。

たぶん私はずっとその感覚で書いてきた。
役に立つ人になりたい日もある。ちゃんと売れたい日だってある。売り上げは急にポエムを読んで許してくれたりしないから、そのへんは現実だ。けどそれでも奥のほうでは、文章で人と出会いたいと思っている。売上より先に、「この人ちょっと変でいいな」と思われたい。記事が商品になる前に私という人間が誰かの記憶にうっすら引っかかっていてほしい。

収益化はそのあとでも遅くない。先に人とつながっていれば、売るときにも顔がある。買うほうも、ただノウハウを買うんじゃない。この人が考えたことなら読んでみたい、この人が作る場なら入ってみたい、そういう動きになる。そこには数字では説明しきれない、ちょっとした信用の温度がある。人はノウハウに払うこともあるけれど、最終的には人に払っている。

書くことは名刺より遅くて営業より遠回りだ。そのぶん嘘が混ざりにくい。何本も書いていれば、どこかでその人の癖が出る。焦りも、照れも、変な正義感も、ぜんぶにじむ。そこを読まれて、好きになられる。あるいは合わないと思われる。それでいいのだと思う。狙いうちで全員に当てにいくより、ちゃんと自分の弾道で飛んでいった言葉がどこかの誰かに見つかるほうが、たぶん長い。

noteを書くなら、まずは人とつながる文章を書いたほうがいい。

売り方を学ぶなと言いたいんじゃない。その前に、自分がどんな声で笑う人間なのか、どこで傷つくのか、何に腹が立って、何を見ると少し救われるのか、そのへんを文章の中に住まわせておいたほうがいい。テトリスみたいに整いすぎた画面はきれいだけれど、人は住めない。少しくらい出っ張っているほうが、覚えられる。

新学期の前に吹く春一番は、軽いものから飛ばしていく。たぶん文章もそうで、中身のない勢いだけのものは、先に遠くへ行くようでいて案外すぐ見えなくなる。残るのは少し重みのあるものだ。考えた跡とか、迷った跡とか、誰かに会いたいと思って書いた跡とか。そういうものに派手ではないけれど、ちゃんと残る。

書くことで稼げたらうれしい。ほんとうにうれしい。まぁ、それでもいちばん先に欲しいのは、数字ではなく返事なのかもしれない。

あなたの文章、なんか好きです。

その一言で、人はもう少し書ける。
たぶん商売はそのあとに来る。
人はいつもお金の手前にいる。
 

《前回の三題噺》
1.テトリス
2.狙いうち
3.春一番

説明しよう!三題噺とは、まったく関係のない3つの言葉を強引にひとつの話にまとめる文章遊びであーる。頭をフル回転させながら、「どうつなげる?」「オチどうする?」という落語的プレッシャーが味わえます。エピソード構成力、語彙力、そして無茶ぶり耐性まで育つ、文章版・筋トレRPG。それが三題噺。やってみなきゃ、もったいない!

《今週の三題噺》

1.最後の鍋
2.ヘルメット
3.夜更かし


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締め切りは一応来週4月8日(水)まで。
過ぎても大丈夫です。


#放課後ライティング倶楽部
[画像協力:さちわ]

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