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新規事業を立ち上げて1年、成果は131倍になった—— が、"AIでラクに"はならなかった話

どうも、スマートバンクで新規事業の立ち上げを担当しているBizDevのushiroです。

AI時代のBizDevとして、0→1の事業立ち上げに取り組んでいます。

2025年3月から立ち上げているフリーランス・個人事業主向け金融サービスが、ちょうど1年で事業規模が131倍になりました。

※2025年3月と2026年3月の比較

世の中的に「AIエージェント」が注目され始めた頃からの立ち上げで、Claude Codeの爆発的普及などAI活用が飛躍的に浸透した期間と重なりましたが、"AIでラクになった"とは少し違う学びを書き残せればと思います。


前回のnoteから1年

8か月前に「AI時代のBizDev生存戦略」というnoteを書いた。BizDevが中心となってAI×SaaSの”屋台”を立てて、プロダクトを作り込まずに新規事業を立ち上げた話だ。

AI時代のBizDev生存戦略 〜新規事業で工数1/3・売上3倍を実現して見えた戦い方〜【Cursor×非エンジニア】|ushiro🐈BizDev/事業開発

あの時点では立ち上げ4か月目、事業規模は初月の16倍。そこからさらに8か月(2026年4月現在)でチームに仲間が増え、屋台は堅牢なビルになり、規模は131倍となった。直近8か月で約8倍に伸びた。

システム内製化&マーケ着任と各セクションが機能し始めてからの伸びがものすごかった。あらためて「チームってすごいな」と実感しました(小並

筆者の心

AI時代の新規事業BizDevの型:駆け抜ける → 渡す → 回す

新規事業を1年やってきて、AI時代の立ち上げに型があると気づいた。

  1. 駆け抜ける — 新しい領域に突っ込んで、限界まで自分で手を動かす

  2. 渡す — 解像度が極まったところで、チームとAIに渡す

  3. 回す — 仕組み化されて、自分がいなくても回る状態をつくる

そしてまた別の領域で1に戻る。これは前半/後半で分かれる話ではなく、領域を変えながら今も回し続けている。131倍は、このサイクルを何周も回した結果だった。

ポイントは、AIの役割は2つあること。人間へのリレーを加速する"渡す"道具としてのAIと、渡した領域を引き受けて仕組みを”回す"相棒としてのAI。これを分けずに使うと、AI活用は空回りする。順に書いていく。


駆け抜ける

審査、債権管理、KPI管理、与信設計、OPS改善、パートナー折衝、問い合わせ対応、GAS開発、開発イシュー作成、マーケ設計、採用、経営報告……

立ち上げ期はほぼ全部自分のボールだった。今はほとんどの領域でチームの各責任者が受け持って進めている。

フルコミットは自分ひとりだったが、要所で支えてくれた仲間がいたことは強調したい。
専門的知見、相談、部分的な伴走——そういう存在があったからこそ、限界まで駆け抜けられました。

筆者の心

新規事業の立ち上げにおいて「解像度」が9割だと思っている。

ユーザーが何に困っていて、どのオペレーションがボトルネックで、何をつくれば事業が回るのか。これは人から聞いた話では絶対に分からない。

自分の手で触って、自分の目で見て、物理的な限界までやり切って初めて見える。

解像度が極まるのは、限界まで自分でやったとき。閾値を超えると「何を実現すれば事業が回るか」が突然明確になる。

いかに速くそこに到達できるか。


渡す — AIで、人間に上手に渡す

解像度が極まると、「何をつくるべきか」と同時に「何を捨てるべきか」が分かる。

これが人にイシューを"渡す"フェーズで一番効いた。

渡す相手は、人間。ただしAI時代は、AIを使って人間に上手く渡せる。解像度の外在化、判断基準の言語化、動くモック——自分の頭の中身をAIで翻訳してから、チームに渡す。

エンジニアに渡す

今回の立ち上げでは、チームにエンジニアが合流しシステム内製を本格化していく過程で、仕様の手戻りやBiz⇔Dev間のすれ違いがほぼ発生しなかった。

手動オペレーションを自分で回しまくっていたから「何をつくり・何を捨てるべきか」が明確になっていたのが大きかった。

自分で回して結果を出しているから、「これが正解」と言い切れる。言い切れるから、渡された側も迷わない。

毎日触っていたオペレーションと、「ここが壊れると事業が止まる」「ここはまだ手動で十分」「ここは来月にはスケールに耐えられない」という肌感覚を伝えた結果、開発陣が最速でシステムをつくりあげてくれた。

大前提として、チームのエンジニア陣と会社のインフラチームが非常に優秀なことは強調したい。
スプシと外部SaaSを連結し無理やり回していた初期オペレーションの段階で伴走し「今後つくるべきもの」を構想し続けてくれたり、"屋台"の状況から最速でシステム構築してくれたのは並大抵ではない。
起業あがりの僕が「お金をもらいながら優秀な人と働けるし、"会社"っていいよね」と思う1年でした。

筆者の心

マーケターに渡す

新規獲得だけでなく、その後どう利益につながるかを見える化する体制を初期からつくっていた。コンバージョンAPIにデータを送る仕組みをGASで自作し細かいvalueを広告PFに送ったり、KPI計測まわりのツールをvibe codingで整えたり。

お手製スプレッドシートではあるが、計測基盤を先に敷いておいたことで、マーケターが合流したときにはデータが揃っていた。

マーケターは”新入社員として新規事業に途中参画”という難易度が高い状態ではあったが、最低限やりやすい状態で渡すことができたはず。

今現在は、マーケターが新規集客を起点に、CRM・リピート促進・LTVまで責任を持って進める体制となっている。

自チームでは、「広告予算を増やしたければLTVを上げにいこう!そのために必要なプロダクトやOPS改善も!」的にマーケターの侵食範囲を広げています。
マーケターが一番最初にユーザーに接触するんだし、事業ファネルの後半へ関与できる構造と力があれば事業はもっと伸びる。と思っている派です。

筆者の心

AIが、渡す衝撃を受け止める

ここまで読んで「結局、人間がめちゃくちゃ頑張る話じゃないか」と思った人がいるかもしれない。半分正解で、半分違う。

頭の中にある「こうすれば回る」を、他人に正確に渡すのは本当に難しい。

ドキュメントにしても抜け漏れが出るし、口頭で説明しても文脈が落ちる。従来は、自分と相手の解像度のギャップを埋めるのに膨大な時間がかかった。

今はAIがここを受け止めてくれる。

オペレーションの手順を構造化する、判断基準を言語化する、仕様だけでなく動かして理解できるモックを瞬時につくる。自分の頭の中にあるものをAIとの対話で外在化し、チームに渡せる形に変換する。

このプロセスが圧倒的に速く・ラクになった。

AIが渡す側の衝撃を受け止めてくれるから、「解像度はあるのに渡せない」というBizDevの長年のハードルが、静かに下がった。

渡す前に、自分が突き抜けている

「渡す」際に一番重要なのは、「渡す前に自分が突き抜けている」こと。優秀なメンバーに対しても自信とファクトを持って言い切れる解像度を持つ。それがないまま渡すと、手戻りと認識のすれ違いが無限に発生する。

AIが”渡す”を助けてくれるといっても、BizDevの解像度が曖昧な状態で渡せば、AIは空のバケツを翻訳するだけになる。

突き抜けた解像度があって初めて、AIは伝達を加速してくれる。

特に立ち上げBizDevは顧客解像度くらいしか取り柄がないので、他職種に解像度上げを迫る"解像度マウント"をしてしまいがち(個人の感想です)。

しかし、AIの進化によって相手になめらかに伝えやすくなってきたと感じています。

筆者の心

回す — AIが、定常運用を引き受ける

「渡す」が完了すると、自分がいなくても領域が回り続ける状態が訪れる。これが「回す」のフェーズ。ここで主役になるのは、AIだ。

AI以前の世界では、新規事業立ち上げを担うBizDevが猛烈に駆け抜けた結果を受け取ったチームが、同じだけ猛烈に働かなければ追いつけなかった。解像度の高い要求は、そのまま実行負荷の高い要求でもあるからだ。

しかし今は違う。AIがオペレーションの一部を担い、開発の生産性を押し上げ、定型業務を自動化する。AIが衝撃を吸収してくれるから、人間は持続可能な働き方のままで高い要求に応えられる。

「回す」は自分が関与しないことではない。数字を見てズレを検知し、必要なら小さく軌道修正する。ただし、日々の実行は自分がやらない。この線引きがブレると「渡したつもりで実は渡せていない」状態になる。

実際にAIが回しているもの

具体的には、こんな領域をAIが引き受けている。

  • オペレーションの判断基準化:毎日触っていた審査・顧客対応の思考プロセスをAIと壁打ちしながら言語化し、チームが同じ基準で迷わず動けるドキュメントに落とす

    • 現在では、開発陣の尽力により判定基準に沿ってAIが判断しタスクを自動実行する仕組みに

  • 計測・レポーティングの自動化:日々のKPI・Web広告レポートなど"毎日静かに動き続ける"領域をAIに渡す

  • プロダクトの仕様検討・開発:Devinがチームの中心に立ち、メンバーからのプロダクト課題の壁打ち、仕様作成、開発実装までを受け持つ

    • 非エンジニアとエンジニアの連携がなめらかになり、全員が事業課題に向き合える体制をAIが回している

BizとDevがDevinとともになめらかに協調し事業課題に向き合う仕組み・環境はエンジニア陣が整えてくれました。これは非常に上手くいった取り組みだったのでBiz側の視点で1本noteを書きたい。

筆者の心

こうした定常運用をAIが引き受けてくれるから、チームの各責任者は自分の領域の"次の一手"に、BizDevは事業全体の"次に崩れる場所"に、それぞれ集中できる。

「回っている」と言える状態

「回っている」と自信を持って言えるのは、こんな状態になったとき。

  • 自分が1週間離れても、数字が崩れない

  • 責任者が自分の領域の"次の一手"を自分で考えて動いている

  • AIが定型判断を淡々と実行し、例外だけが人間に上がってくる

  • 自分の役割が「承認・確認」ではなく「観測」に変わる

ここに到達したら、その領域からフェードアウトして次の最前線に向かう。

「回す」が終わると、また「駆け抜ける」に戻る

型の本質は、3で終わらず3が終わったらまた1に戻ること。

  • 回った領域からBizDevがフェードアウトする

  • 空いた手で、次に崩れそうな領域に突っ込む

  • そこでまた限界まで駆け抜ける

  • 解像度が極まったらチームとAIに渡す

  • 回る状態になったら、さらに次へ

1周ごとに事業の盤石さが増し、BizDevが触れる領域が広がっていく

チーム全員が「駆け抜ける → 渡す → 回す」を回している

そしてこのサイクルを回しているのはBizDevだけではない。各領域の責任者も、自分の持ち場でより専門的な「駆け抜ける → 渡す → 回す」を回している。自分は全体を見ながら、誰も触っていない最前線を担当しているだけ。

事業は、個人の駆け抜けではなく、組織全体が同時多発的に回すサイクルで前に進む。

自チームでは、「AIで回す」をどんどん増やし続けている。よって、AIに渡しても渡しても次の人間の仕事があり続ける。AIがなければたどり着けなかったが、あってもかなりの重労働。

AIフル活用とチームメンバーのハードワークの結果が「1年で事業規模131倍」でした。

筆者の心

事業立ち上げ × AI活用で一番大事にしてきたのは"順番"

新しい領域には、まず人間が突っ込む。AIに質問して分かった気になるのと、自分の手で触って得た経験とでは、解像度に決定的な差が出る。

走った距離の差は、そのまま判断の質の差になる。 だから自分で触って解像度を極めてから、再現性のあるルールに落としてAIに渡す。AIが返してくる結果は、いつでも人間が逆算して説明できる状態を保つ。

この順番を守らないと、「数字は動いているけど、なぜその数字なのか誰にも分からない」状態が生まれる。お金とリスクを扱うFintech事業で、それは許容できない。

たとえば金融サービス利用のユーザー審査判断をAIに任せても、なぜその結論に至ったかを人間が再現できなければ、エコノミクスやコンプラ上の説明責任を果たせなくなり、結果的に事業進捗が遅くなる。

だからこそ、この事業では「人間が先に全部のリスクを引き受けて駆け抜ける」を崩さなかった。

AIに任せて良いのは、自分が何度も同じ判断をして「これは毎回こう判断する」と自信を持って言い切れるようになった後だけ。

この順番を取ったからこそ、"AIでラクに"ではなく、"AIで、もっと深く踏み込めた"という1年になった。

探索系ではなく、定常系に落とす

世の中のAI活用事例は「こんなこともできるようになった!」という探索系の話題が多い。それ自体は面白い。

ただ、事業として回すには「同じ品質の出力が毎日何百件も黙々と回り続ける」定常系に落とし込めるかが重要

一回だけスペシャルな出力があるより、毎日静かに動き続ける仕組みをスケールさせるほうが、事業グロースには圧倒的に効く。

探索系で見つけたやり方を、いかに速く定常系に落とすか。この"運用に落とすサイクルの速さ"こそが、新規事業の立ち上がり速度を決める。

定常運用の仕組みづくりはAIと各領域の責任者に渡し、自分は次に崩れそうな場所や、次の北極星を探しに行く。


AIがあるから、もっと遠くまで跳べる

1年やってきて、確信していることがある。

新規事業の立ち上げは、結局のところBizDev(事業責任者)の「自分が勝たせる」というコミット次第。これはAI時代になっても変わらないし、むしろ強化された。

一見、AIでスマートにやれるようになり、人間の役目が減ったように見える。

だが実態は逆。AIで"ラクになった"で止まるか、AIで"自分の限界をさらに前に動かす"かで、差が開いていく。

AIが下で受け止めてくれるからこそ、人間はもっと遠くまで跳べる。今まで見えなかった先の先まで跳べる。


新規事業立ち上げのBizDevをやりたい人へ

「新規事業立ち上げのBizDevをやりたい」

「AI時代のBizDevとして駆け抜けたい」

「0→1で事業責任を持ちたい」

「0→1だけじゃなく、1→10、10→100も経験したい」

「駆け抜け、渡し、回す」を自分の事業でやってみたい方にとって、今のスマートバンクには機会があります。

「ワンバンク」というメインプロダクトがありつつ、新規事業も複数動いている。各事業のフェーズも様々で、問われるスキル・経験も多様です。

toCプロダクトがメインなので、マーケターから事業立ち上げに向かうルートも存在します。

XのDM等でもお気軽にお声掛けください!

https://x.com/u_ushiro

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