AI時代のBizDev生存戦略 〜新規事業で工数1/3・売上3倍を実現して見えた戦い方〜【Cursor×非エンジニア】
このnoteのサマリ
- 成果:工数1/3、売上3倍、事業規模16倍を達成
- 手法:AI×既存SaaS連携による「屋台モデル」実践
- 学び:BizDevの価値は「判断力」にシフトする
- Tips:今すぐ試せるAI-OPS改善の小技どうも、スマートバンクで事業開発を担当しているushiroです。好きな動物は猫です。
5か月前に「Cursorと事業立ち上げするの楽しいよ!」と上記のnoteを書いたのですが、想定外に多くの方々に読んでいただきました。
「その後、新規事業はどうなったの?」と聞かれることも多いので「AIと一緒に事業を立ち上げて5か月経って見えてきたこと」を綴っていきます。
最近はCursorとGensparkを多用しています(実はこだわりはない)。
特に非エンジニアは自分が使いやすいものを使えばいいと思います。
新規事業の近況
立ち上げた事業についてはこちらをご覧ください。
3月の段階では「6月までに結果が出なければ撤退」というPJでしたが、無事にラインを上回り、7月からはスケールを検証するフェーズに入っています。

7月は事業計画を上回る形で拡大し、特に6月から7月は同じコストで事業規模が約4倍になりました。
リリース当初からは16倍の規模に拡大しています。利益に関してもポジティブな状況です。
また今回の新規事業立ち上げは、既存事業と少し遠い領域で、既存事業のやり方や仕様に引っ張られない形で様々なチャレンジができる機会でもあったため「AI前提で新規事業立ち上げの再設計をする」をテーマにしています。
【参考】事業立ち上げ前の仮説:
トライするのは古くからあるビジネスモデルで、それ自体が成立することは世の中で検証済み
業界大手企業が人力で運用しているOPSを最初からAIドリブンな構成で立ち上げれば、最後発・少人数・低コストでも成立させられる
ニーズ検証を終えたら、とにかくOPS改善が鍵
事業を立ち上げる中で見えてきた、AI時代のBizDev生存戦略を考えていきます。
AIで何でもできるようになっていく時代に、BizDevは何が求められるのでしょうか。
僕は新規事業立ち上げ寄りのBizDevなので、GTM戦略やアライアンス系のBizDevとはまた違ってくるかもしれませんがあしからず。
BizDevの定義は広い…
エンジニアより先につくる
さっさと始めないと、業務の構造はわからない
ITスタートアップにおいて、エンジニアは最強戦力です。
いかにそのリソースを無駄にしないかがそのまま事業・企業の生死に繋がります。
とはいえ新規事業BizDevは「何が商売に繋がるか」の検証をし続ける生き物であり、結果としてエンジニアを巻き込み"無駄なものをつくる"ことが避けられない存在です。
しかし最近は誰でもAIで動くモノがつくれるようになり、仮説検証の要件を満たすならBizDevがつくったものでも充分!というケースも増えています。
よって、超高速で検証・実証を繰り返して早期にエコノミクスを成立させ"エンジニアが無駄なものをつくらなくて済む"状態にするスキルはBizDevの大きな価値となると感じています。
イメージ:
空き地に店舗ビルを建てる前に、同じ場所に屋台を立てて商売を始め、時間曜日ごとの人通りや売れ筋を把握しておく
屋台で商売が成立できれば、店舗を立てた場合の建築費・土地代を加味したコストと売上も想定できる。「何をつくるべきか」の解像度が高い状態でビル建設に入れる

屋台フェーズで実際に事業を回してみることで、「何をつくるべきか」を数字から予測できるようになります。
よって、
「やらなきゃわからないし、これは決めの問題ですね」
「この機能はリリース前に不要になっちゃいました」
といった不幸も避けられるようになります。
"ビルを設計する前に、BizDev単体で屋台を立て検証する"
もちろんこれは従来からできたことですが、AIの進化普及によって屋台作成速度向上と、屋台にあるまじき耐久性と拡張性を持たせられるようになりました。
最強戦力であるエンジニアに、より重要度の高いイシューに向き合う環境をいかに早く提供できるか。これがAI時代の新規事業立ち上げの分水嶺となるでしょう。
なおスマートバンクのエンジニアは隙あらば屋台のお手伝いと効率化サポートをしてくれます。
「身が保つギリギリまで攻めて検証結果さえ残しまくれば、後から本開発で何とかしてくれる」という信頼感で背中を預けられる、BizDevとしてとても良い環境です。

やって実感した、AIと”良い屋台”をつくるコツ
巨人の肩に乗る
Human-in-the-Loop設計
AIで選択肢を増やし、人間が最終判断
巨人の肩に乗る

汎用ツール→連携→開発の順序を守る
「屋台はゼロから作らない」これが鉄則です。
先人たちがつくったツールやSaaSはセキュリティ、安定性、稟議の通しやすさなどあらゆる工夫がされています。
今回の事業立ち上げでは、株式会社ベーシックさまの「formrun」というサービスを活用しました。
formrunはGoogleフォーム×Zendesk的サービスで、見せ方の工夫余地も大きいのでプロトタイピングに向きます。
上位プランでも月額数万円で利用できるので、自前でインフラ構築するための仕様検討をするより、まずformrunを屋台骨に動くものをつくるのが早い場合があります。
個人的には、contentful、formrunあたりを使い倒すとプロダクト検証の引き出しが広がるのでおすすめです。
今回の事業立ち上げで活用した構成:
フロントエンド、CS
formrun
ユーザーDB、分析基盤
スプレッドシート
ドキュメント
Notion
ワークフローUI
Slack
LLM
Gemini API
サービス間連携
GAS
formrunを起点に、スプレッドシート・Notion・Slack・GeminiをGASで繋ぎ一つのプロダクトのようになめらかに機能するよう工夫しています。
ここで重要なのは、バイブコーディングをGASのみにすることです。
いくらAIが様々なコードを生成してくれても、非エンジニアBizDevがサステナブルなシステムをつくるのは不可能ですし、それを目指す時間があるなら別のことをやるべきです。
バイブコーディングの用途を「サービス間を連携させるGASをつくる」ことに絞っておくと無茶をしにくくなるのでおすすめです。
数えてみると、直近2か月で2万行のコードを生成していました。中身をもっと綺麗に整理する余地はあると思いますが、数分で生成し意図通りに動いている点と、上述のように用途を限定しており諸々のリスクは低くなっています。
そもそもAIがなければ僕が書けるコードは0行であり別途開発工数がかかっていたので、結果として今の事業も立ち上げきれなかったでしょう。
SlackをワークフローUIとしてHuman-in-the-Loop設計をつくる

SaaS×GASでなめらかな自動化ができたら、人間の判断が必要なものはSlackに通知し、ボタンやスタンプで承認できる仕組みにすると便利です。

なおスマートバンクではn8n活用も盛んです!
(僕はまだ触ったことがないのでいつか必要になったら使おうと思います)
AIで選択肢を増やし、人間が最終判断する
AIドリブンな業務設計の4原則
1.データ構造をAIが理解しやすい設計に
JSON形式、標準化されたフィールド名、曖昧な自由記述を構造化する仕組み
2.人間とAIの役割分担を明確化
「AIができること/できないこと」マップ作成 → 「この事業において人間にしかできないこと」を定義
3.自動化前提のワークフロー構築
手動フローでも後の自動化を考慮した設計
4.データドリブンな改善サイクル組み込み
KPIもAIが読み込んで分析をしやすい形で持っておく
AIで選択肢を増やし、人間の意思決定回数を上げる
❌️ バイブコーディングで従来エンジニアしかできなかったことの一部ができるようになった
⭕️ 事業の実践までの時間とコストを大幅に圧縮できた結果、BizDevとしてやるべき意思決定・試行錯誤の量がn倍になった
AIドリブンなOPS改善の結果
月間のOPS所要時間: 178.5時間 → 63時間
同じ人件費で3倍の対応が可能に
= 同じ人件費で稼ぎ出す利益が3倍に
屋台はすぐ捨てる前提でつくるのがいいと考えています。
非エンジニアが生成したコードや構築した構成は、本職の方々には到底及ばないし近づく努力をする必要もないです。
使い捨て前提だからこそ気軽に素早くつくれるので、最短で使い倒しビルの設計に役立て、気持ちよく捨てましょう。
AI時代のBizDev生存戦略を考える
事業立ち上げの中で強く感じた、BizDevの働き方の本質を整理します。
AI時代のBizDev = 「判断×生身の手を動かす」
AIが手段を無限に増やしてくれる世界になりましたが、いち企業が本気で取り組める事業のキャパは変わりません。よって、情報と手段を絞り込み「適切な判断をできる人」の希少性が相対的に高まっていくはずです。
生身の価値の再定義
事業立ち上げで実感した、人間にしかできないことを実例で紹介します。
1. 文脈的判断力
実例:同じ数値でも、背景で判断が180度変わる
→ 人間は数値に意味を見出したがる。どのストーリーを付与するかでその後の進み方が変わる
2. ステークホルダー共感力
実例:トラブル対応や社内折衝はまだAIに向かない
→ AIは土下座できない
3. 直感的リスク感知
実例:ロジックは揃っているが「何か違和感」を感じた案件
→ データに表れない「雰囲気」を読む力が人間にはある。AIが学習データを増やしていけば将来的に「違和感」を言語化できる可能性はあるが、まだ先になりそう
Tips: 今すぐ試せるAI-OPS改善の小技
新規事業立ち上げの中で、簡単なのに効率化効果が高かった2つのAI活用パターンを紹介します。
1.ダッシュボード作成の効率化

課題:
データ基盤の整備が大変
LookerStudioでぽちぽちが面倒。すぐエラーになる
AI活用後:
AIに自然言語で依頼 → ダッシュボードGASが3分で完成
ポイント:
複数のスプレッドシートのデータは関数で集計せず、集約するGASを生成
GASを一定時間ごとに実行するトリガーを設定しておけばデータは常に最新
必要なデータを必要な構成で出せるので面倒なリソース統合作業が不要
関数と違い、読み込みが重くならないので扱いがラク
ダッシュボードもAIに自然言語で依頼してGASで生成
「売上とCV数を比較する折れ線グラフを週次で作って」 「前月比を色分けした棒グラフで表示して」
実例として、「スプレッドシートの売上データから、週次トレンドを可視化するダッシュボードをGASで自動生成して。異常値は赤で強調表示。」と依頼すると、200行程度のGASコードが生成され、更新間隔も柔軟に設定可能になります。
事業立ち上げフェーズはDB項目も未確定で、分析基盤構築にリソースを割くべきでありません。
よってスプレッドシート×LookerStudioの運用になりがちですが、個人的にLookerStudioのUIが使いづらく好みでないためGASで生成しています。
2. ブックマークレットでルーティン作業を爆速化

ブラウザでの繰り返し作業をワンクリック化できます。他社製SaaSの機能を補完したい場合に便利で、OPS改善に地味に効きます。
ポイント:
メール変数で設定できないデータの一括置換
ファイル一括DL
ブックマークレット自体は古から続く方法ですが、急場しのぎに最適です。
AIで一瞬で生成し実践で使用・改善を重ね、削減効果が大きくなったタイミングでエンジニアに連携し正式機能として組み込んでいく等がおすすめです。
「ブックマークレットで解決じゃん」という提案をAIがしてくれたことはないのですが、依頼すれば意図が伝わり様々な効率化提案をしてくれます。
まとめ
他職種に依存せずに実践的な検証ができる時代。最短の失敗→最速の改善へPJを動かす推進力がAI時代のBizDevの価値では
AIが示す膨大な手段から意思決定し、生身の身体というUIを最大限活用して物事を進める力も重要
例: AIが考えた最高の土下座をいかに綺麗に決められるか
面白そうな事業構想が生まれたときに立ち上げを任せてもらえる人間でありたいので、今後もBizDevとしての生存戦略考え精進してきます。
AI活用談義や「事業実際どうなの?」といった話まで、気になる方はぜひお気軽にX等でお声かけください!
https://x.com/u_ushiro
次回予告
言ったからにはやるぞ🔥
海外TechメディアとGoogleAlertの指定KWの記事を自動収集して、自社事業に関連度が高いものだけSlackに流してくれる「通称: 俺たちのGunosy」をつくって2か月経ったので外部公開したい!と思って3000000年経ってしまった… 3行サマリ投稿に… pic.twitter.com/PgcetKmDTb
— ushiro🐈 (@u_ushiro) August 15, 2025
