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10年前は眺めるだけだった富士屋ホテルに泊まった話

今年で結婚14年目に突入した私たち夫婦。結婚当初は色々あって信じられないほどお金がなく、お互いの若い頃のツケが回ってきた借金もかなりの額があり、結婚式や新婚旅行、高い指輪を買うなんてとても考えられなかった。

家の前で友達に結婚写真を撮ってもらった

それでも二人で一緒にいられることで毎日をご機嫌に暮らし、必死に働いて、5年くらいで借金を完済し、仕事も軌道に乗って、今に至る。

富士屋ホテルを見学だけしたのは10年ほど前で、安旅ならなんとか行けるけどまだまだ不安定な暮らしをしている時期。小涌谷エリアのとある民宿(一泊5000円とかで源泉掛け流しのお風呂があり朝夕ごはんもたっぷり付く、ボランティアみたいなお宿だった)を目指す中で、「あのジョンとヨーコも泊まった富士屋ホテルがあるぞ、一度見てみよう」と向かったところ、見学は無料でできたので、ドキドキしながら中に入り、とことんクラシカルで美しい内装やホテルの歴史などをうっとり眺めた。「いつか、ここに泊まりたいねえ・・!」と言いつつ、今回泊まるお宿の十倍くらいのお値段なので、そんな日が本当に来るとはあまり想像せずに「いつかねえ・・」と思っていた。

その時泊まった民宿「みたけ」もマジで最高だった!

いつかは突然やってきた。たまたま二人揃って二日間休みがあり、前日に私が「明日どっか行こう」と提案し、どこがいいかねえと探しているときに、夫が「奥さん、いっそ富士屋ホテル泊まっちゃおうか」とおもむろに言いだした。彼はいつも唐突なのだ。いやいや我々もだいぶ稼げるようになったとはいえ、富士屋ホテルはまだ早いだろ、だって一泊10万コースだよ?と私は最初相手にしなかったのだけど、夫が色々調べてくれて、どうやらたまたま運良く楽天トラベルのクーポンがダブルで使える日だと発覚。いつもなら10万コースのプランに、7万くらいで泊まれそう。さらに楽天のポイントが1万円以上貯まっていた。これはもしやまたとないタイミングなのでは・・?

それでもなかなか決断できない私を夫が背中をバーンと押し、前回の青森旅でグリーン車の予約をした時以上の震える指で予約をした。つるうち家にとっては大事件。明日、富士屋ホテルに泊まる!!!

ディナー込みのプランにしたが、ドレスコードで大丈夫そうな服がほとんど無い。歩くクリスマスみたいなド派手なトレーナーやオカルト雑誌「ムー」のTシャツなど変な服ばかり買ってしまう我々は、二人でクローゼットをひっくり返しながらなんとか富士屋ホテルで恥ずかしくなさそうな服装を選んだ。興奮しすぎた私は見事に寝付けなくなり富士屋ホテルに行くのが楽しみすぎるという理由で抗不安薬を飲み、夫が大笑いしていた。

当日。スカッと晴れで、気持ちがいい。もう富士屋ホテルに泊まるならこの旅で色々ケチケチするのはやめようと決め、久々の箱根登山鉄道に乗ってチェックインの前に強羅で大変に美味しいうなぎをたべた。最近できたお店だけど美味すぎて評判になりつつあるらしい。本当に本当に美味しかった。

うなぎ「元長」(強羅駅徒歩3分)
「竹」のうなじゅう。みっちみち。
満面の笑みとはこのこと

もうこれだけでも人生が十分すぎるのだが・・という気持ちで強羅からいざタクシーで富士屋ホテルに滑り込むと、もう絶対に完璧に信頼できそうなドアマンの方がシュッと車の横につき、心が洗われるような笑顔と声で「お待ちしておりました。どうぞ。」と中に案内してくれた。もうそのおじさまの全てが完璧すぎた時点で「富士屋ホテルやばい、本当に五つ星ホテルだ」と芯から理解した。

富士屋ホテルはとにかくロゴがいい!

中に入ると真っ赤な絨毯。お城みたい。緊張する。でもロビーの壁に変な魚がいる。すごく可愛い。ウチの実家や夫が好むレトロ可愛いの路線だ。この魚の可愛さでなんだか気がほぐれた。富士屋ホテルって、めっちゃゴージャスだけど可愛さもユーモアもあるのか・・無敵じゃん!

壁ごともってかえりたいくらいかわいい

おまかせのお部屋は、西洋館。天井が高くて、トイレもバスタブも部屋着まで全部かわいくて、隅々まで意識の行き届いたお部屋。ふかふかのベッドに寝転んで天井の照明を見ると、マリーアントワネットみたいな気持ちになった。トイレに置いてあったお手拭きの位置が完璧すぎて崩したくなくて結局最後まで使わなかった。

かわいすぎるお部屋
外国人向けのお部屋なのでドアノブの位置が超高くてウケる
お部屋のお風呂にも源泉が引かれている、2回入った
カッコよすぎるトイレの洗面台

大浴場もさすがで、向かう途中の通路から素敵なアロマが炊かれていて気持ちがリラックスする。シャワー場にしっかり仕切りがあって隣が気にならない。シュッとした美しいデザインの半露天と内湯。目の前には美しい山々。掛け流しのお湯。

ひとっ風呂浴びたのち、部屋着のシャツをオシャレに着こなす夫

服装に散々悩んだディナーの前に、憧れのバーラウンジへ。なんと富士屋ホテルなのにハッピーアワーがあったのだ。絵に描いたようにハードボイルドで紳士なバーテンダーさんにお酒を作ってもらい、ふと見上げた天井の模様の可愛さについて伺うと、昭和初期に作られたもので、このバーには昔ビリヤード台があったため、ビリヤード台をイメージされたデザインだとのこと。ひとつひとつの模様が全然違うのが大変面白くてかっこよくて、ずっと天井を眺めていた。バーテンダーさんはすごく嬉しそうにこのバーの歴史についてお話ししてくださった。ここで働くことを誇りに思っているんだなと感じた。

かっこいい!
ハードボイルドな顔をしようと頑張っている私
かっこいい天井の模様

緊張していたディナーのレストランは、こちらも大昔からのステンドグラスを残したままの可愛い内装。フレンチではなく洋食なのでそこまで緊張感はなく、思ってたよりみなさんラフな格好だった。我々の考えすぎだった。でも、素敵なレストランに可愛いワンピースで行くのは嬉しい。

こうしたレストランで写真をいちいち撮るのはあまりしたくないので、美しくおいしいお食事をゆっくりじっくり味わった。ワインが一杯3000円とかで気を失いかけたけどもうここでケチらないと決めたのでぐいっと飲んでやった。

お食事前に一枚だけぱしゃり

ここにも天井の梁のあたりに小さな鳩のオブジェがランダムに配置されていて、案内の方が鳩についてのお話を嬉しそうにしてくれた。富士屋ホテルは、こちらが何かに興味を示すと、あらゆるスタッフの方がその背景や歴史について教えてくれるのが本当に印象的だった。そして、接客がどこまでもナチュラルなのだ。全く圧を感じさせず、ラフでもなく、だけど親しみやすいという本当に絶妙なバランス感覚を持ってるスタッフさんがたくさんいて、何をどうしたらこんなサービス教育ができるのか不思議なほどだった。色々な要因があるとは思うけど、きっとみな、ここで働きたくて働いているのだと思う。そういう接客だった。

お部屋の絵もすごく好みだった

眠るのが惜しい、寝てしまったらこのホテルで過ごす時間が縮まってしまう!と二人で言い合いながらお部屋でもゆっくりお酒を飲んで就寝。

朝ごはんは別の建物を見たかったので和食を選び、菊華荘というこれまた美しい木造建築で、体に優しく美味しいごはんを頂いた。お味噌汁が美味しすぎておかわりした。

明治28年、皇室の宮ノ下御用邸として造営された建物
美しすぎて「ふぉぉ・・」と謎の声が出まくる
美しい朝ごはん、美しい夫

ちなみに富士屋ホテルはパン屋「ピコット」も併設していて、パンがとっても美味しい。ディナーの際に一番感動したのが実はくるみのパンだった。お土産にあれこれ買ったのだけど、ここのパン屋のお姉さんも富士屋ホテルのパンのことをものすごい笑顔で色々お話ししてくれた。富士屋ホテルのパンの歴史、思い入れなどをとても無邪気に話してくれる。マジでなんなんだここ、桃源郷?今度来たときは洋食にして、富士屋ホテルのパンと、いわゆるふわふわのオムレツなどを食べよう。シャンパンのモーニングカクテルみたいなのもあるらしいのでそれも是非いただきたい!

すごく美味しいくるみのパン
お姫様の気持ちになるビーフパイ
気絶しそうなほど美味いキッシュ

チェックアウトは11時なので、中庭(というかもはや小高い丘)やホテル内を散歩したり、私がマリーアントワネットの気持ちでお部屋でビーフパイとワインをやってる間に夫は貸し切り状態の温泉プールでひと泳ぎして王の気持ちになったりして、それぞれの時間を楽しんだ。

鯉とか池とかあちこちにある
水車だってある
いちいちどこを見てもデザインが良すぎてキリがない
和洋折衷すぎるのも最高

帰り際、感動を抑えきれずに受付の方に富士屋ホテルのここに感動しましたみたいなことを早口で涙目で伝えたところ、受付の方も富士屋ホテルをとても愛しているとのことでなんだか一緒に涙目になってしまい、スタッフと客が同じテンションで富士屋ホテルを愛している感じが奇跡だなと思った。本当に、私が出会ったすべてのスタッフさんがその様子だったのだ。なんならトイレ掃除のおばちゃますらそうだった。私がトイレの壁の可愛さに夢中になってたら「この壁は昭和、この壁は大正から、すごいでしょう。ゆっくりじっくり見て!」とおっしゃってた。どういうことなんだ。働く人全員、富士屋ホテル好きすぎか。いやわかる。何かここは現世から切り離された特殊な空間で、この空間に身を置くことでしか得られないものがある。

この世の桃源郷、それが富士屋ホテルなのだ

勇気を出して、10年越しに泊まった富士屋ホテルは、最高だった。もしお金がふんだんにあっても、ただ高級で、ただ至れり尽くせりで、ただピカピカの、そうしたホテルに泊まりたいとは全く思わない。富士屋ホテルは五つ星ホテルでありながら、圧倒的に個性的で、ホテルそのものが芸術のようだった。文化と歴史の力に包み込まれた。絶対にまた訪れたい。

そして、夫と二人三脚でここまでやってこれたことに改めて本当に感謝した。誰かと十年以上かけて一緒に夢を叶えるなんてこと、初めてだった。俺たち頑張ってきたね。今度はフレンチディナーに挑戦してみるか。そしたらもうちょっといい服も買っておかないとだ。何より健康でいなくちゃね。

宝物みたいな思い出ができた

ちなみにこの写真が良すぎたので壁紙にしたら最高すぎてiPhone開くたびに幸せになる↓

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