美術展に招待された日 | エッセイ
タダノ様
いつもお世話になっております。
春めいて参りましたね。もしご都合
よろしければ、お花見も兼ねてアートの
チケットをご利用頂けたら幸いです。
書中にてご案内申し上げます。
先週末の仕事帰り、いつものように自宅マンションのポストを開けてみると、あるOPP袋に封入されたリーフレットが入っていた。
一緒に付いていた手紙の差出人は、先月ご挨拶に伺った保険会社の担当であるOさんからだった。ちなみに挨拶に向かったその日の外は、朝から猛烈な吹雪に見舞われていて、東京らしからぬ銀世界を前に「世も末だな」と一人思い耽っていた。
あれからすでに一ヶ月経っっていたのかと思うと、季節の移り変わりはなんて極端すぎるのだろうと考えざるを得ない。そう思いながら自宅に戻り袋を開けてみると、先ほどのリーフレットや手紙の他に、とある招待券が入っていたのである。
それは、およそ30年前から開催されているとある美術の展覧会だった。なぜに美術展なのかと思っていたところ、特別協賛の箇所に私が加入している保険会社の名前が入っていた。
なるほどと納得しつつも、ついでに開催期間を見ると、日付が先々週から月末手前のスケジュールとなっていた。行くとなるとしたら最早、土日のどちらかしか選ぶことができない。そんなことより、
(ギリギリじゃん……)
送ってくれるのはありがたいが、送るならせめてもう少し早く送ってほしい。一人でそうツッコミを入れようとした矢先、招待券は1枚だけではなく、2枚も封入されていた。
世間体には年度末で慌ただしい中だとはいえ、独り身でなおかつ恥ずかしながらすぐに誘うことができそうな親しい友人がいない。ましてや現在も独身貴族を絶賛謳歌中の私には、大事な人ですらいるわけもなく…。
自分にとって、日程も枚数もツッコミどころ満載の招待券を前に、思わずため息がこぼれ落ちてしまう。一体Oさんは何故、どういう意図で持って送ってきたのだろうと疑問にならざるを得なかった。
ただ、「美術展」という非日常の空間に招待券一枚で入場できるのは、心の余裕を取り戻す意味や新しい刺激を取り入れる意味でも、かなり貴重と云っても過言ではない。
誘う意図がどうであれ、足を運んでみる価値はあるのかもしれない。進むべき道が現在、あやふやなままとなってしまっている私自身にとっては、これまで目にしたことのないアートに触れて、今一度気持ちを切り替えるべきタイミングなのだろう。
まずは招待券をいただいたことに感謝だ。それでもって、もし同じような機会が訪れるとして、その日が来るまでに同じ時間を共有し合える大事な人を見つけた方がいいと誰かに告げられているのかもしれない。
そう思いながら、上野でおこなわれる美術展の最終日に、私は一人足を運ぶことを決意したのだった。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしています!