自称「永遠の二十歳」と言っている人はぼけにくい?「老い」に対する考え方が認知症リスクを半減させる可能性

「認知症は遺伝だから仕方ない」
そんなふうに思っている人は少なくありません。
確かに、認知症最大の遺伝的リスクとして知られるのが APOE ε4(アポE4) 遺伝子です。
この遺伝子を持つ人は認知症になりやすいことが知られています。
しかし、実際にはAPOE ε4を持っていても認知症にならない人は半数以上います。
では、その違いは何なのでしょうか。
2018年に医学誌『PLoS ONE』に掲載された興味深い研究は、その答えの一つとして「老いに対する考え方(Age Beliefs)」を示しました。
Levy BR, Slade MD, Pietrzak RH, Ferrucci L.
Positive age beliefs protect against dementia even among elders with high-risk gene.
PLoS One. 2018;13(2):e0191004.
約4,700人を4年間追跡
この研究では、アメリカの60歳以上4,765人を対象に4年間追跡調査を行いました。
研究開始時点では全員認知症ではありません。
研究者は
老いを前向きに捉えている人
老いを否定的に捉えている人
に分け、その後認知症になる割合を比較しました。
結果は驚きだった
老いを前向きに捉えている人は、
認知症になるリスクが約44%低くなっていました。
さらに驚くのは、認知症リスク遺伝子であるAPOE ε4保有者だけで解析しても、
認知症発症リスクは約50%低かったのです。
つまり、
遺伝子だけでは運命は決まらない
という結果でした。
「老いは終わり」と思うことが脳に影響する?
研究者は、この背景として
慢性的なストレス
年齢差別(エイジズム)
自己効力感の低下
などが関係している可能性を考察しています。
逆に、
「年を重ねても成長できる」
「高齢になっても役割がある」
という前向きな考え方はストレスを軽減し、それが脳を守る可能性があるというわけです。
日本社会にも重要な示唆
日本では、
「もう年だから」
「高齢者は何もできない」
という言葉を日常的に耳にします。
しかし、このような言葉そのものが、高齢者自身の認識となり、健康へ悪影響を及ぼしている可能性があります。
もちろん、この研究だけで因果関係が完全に証明されたわけではありません。
それでも、
「老いをどう捉えるか」
という心理・社会的要因が、認知症のような重大な疾患にも影響する可能性を示した意義は非常に大きいと言えるでしょう。
医療者として考えること
認知症予防というと、
運動
食事
血圧管理
禁煙
など身体面ばかりが注目されます。
もちろん、それらは非常に重要です。
しかし、この研究はもう一つ、
社会が高齢者をどう見るか、高齢者自身が老いをどう受け止めるか
も認知症予防の一部かもしれない、と示唆しています。
薬だけではなく、人との関わり方や社会の価値観もまた「認知症予防」なのかもしれません。
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