子どもを海外旅行に連れて行かないのは教育熱心ではないのか?貧しいことなのか?

最近、若者について語られるとき、
車を欲しがらない
海外旅行に行きたがらない
結婚したがらない
子どもを持ちたがらない
といった話をよく耳にします。
そして、その理由として
「価値観の多様化」 とか 「草食化」
が挙げられます。
しかし私は以前から、この説明に違和感を持っています。
本当に価値観の問題なのでしょうか。
むしろ、
「選択肢として検討できるステージにいない人が増えている」
だけではないでしょうか。
そこらへんは以前に以下でも書きました。
海外旅行は本当によい教育投資になるのか?
先日も、
「子どもの頃から海外を見せた方がよい」
という話を耳にしました。
確かに気持ちは分かります。
しかし、正直なところ私はかなり懐疑的です。
例えば子どもが複数いるとします。
家族4人以上となります。
それで海外旅行に行くとなれば、
航空券
パスポート
(VISA手配)
ホテル
現地移動
食事
体調不良への対応
など、想像以上に大変です。
金額も簡単に100万円を超えるでしょう。
そして、その100万円に見合う教育効果があるのかと言われると、疑問があります。
なぜなら、子どもは意外と覚えていません。
覚えていたとしても、
「ホテルの朝食がおいしかった」
「プールが楽しかった」
「景色がきれいだった」
「また飛行機乗りたい」
という程度でしょう(それはまぁ国内でも十分でしょう・・)。
もちろん楽しい思い出にはなるのでしょう(そうならないこともありそうですが)。
しかし、それは異文化理解とは別の話です。
海外経験の本質は「自分がマイノリティになること」
私自身、海外で仕事をした経験があります。
振り返ると、海外経験の価値は
「外国の景色を見ること」
や
「海外の料理を楽しむこと」
ではありませんでした(もちろんそれも楽しいことですが)。
むしろ、
「自分がマイノリティになること」
だったと思います。
言葉が通じない。
常識が通じない。
自分が当たり前だと思っていたことが当たり前ではない。
その経験によって初めて、日本を自分を相対化して見ることができるようになります。
これは10歳の子どもには難しいでしょう。
認知発達の問題もありますし、そもそも旅行中は親がすべてを手配することでしょう。トラブルがあっても親が対応し、子どもはトラブルを認識しないことでしょう。
つまり、
「外国にいる日本人の子ども」
であって、
「異文化の中で生きる一人の人間」
にはなっていないのです。
教育投資として考える
もし同じ100万円を使うなら、私はむしろ、
大学生になってからの留学
海外インターン
語学研修
卒業旅行
などに使った方が良いと思っています。
20歳前後であれば、
自分で航空券を手配し、
自分でトラブルに対応し、
自分で異文化の人間関係を築くことができるでしょう。
その経験は、人生観や職業観に大きな影響を与えるでしょう。
教育投資として考えた場合、小学生の家族旅行よりもはるかに費用対効果が高いように思います。
「価値観の多様化」で片付けてよいのか
実は、この話は海外旅行だけではありません。
車もそうです。
結婚もそうです。
子どももそうです。
本当に欲しくなくなったのでしょうか。
それとも、欲しいと思っても手が届かないから、
「別に欲しくない」
と思うことにしているのでしょうか。
私は後者の要素がかなり大きいのではないかと思っています。
最近、子育て世帯の相対的貧困率が改善したという報道があります。
しかしその一方で、中間所得層の子育て世帯は大きく減少しています。
もし、
高所得者だけが結婚し、
高所得者だけが子どもを持ち、
高所得者だけが海外旅行に行き、
高所得者だけが車を持つ社会になっているのであれば、
それを
「価値観の多様化」
と呼ぶのは少し違う気がします。
むしろ、選択肢の不平等化です。まるで欧州の階層社会です。
私たちは何を失っているのか
少子化問題を考えるとき、確たる根拠もなく、若者の価値観の変化ばかりを原因にすることがあります。
しかし本当に問うべきなのは、
「普通の所得の人が普通に人生設計を描ける社会なのか」
ではないでしょうか。
結婚するかどうか。
子どもを持つかどうか。
車を買うかどうか。
海外へ行くかどうか。
それらは自由に選択できるべきことではないでしょうか。
問題は、選ばないことではありません。
選べないことです。
そして、その状態を
「価値観が変わったから」
という言葉で説明してしまうことに、私は強い違和感を覚えています。
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