【BMC Health Services Research2026】女性医師は時短しても楽にならない?M3アンケートから見える日本の勤務医家庭の男女差の実態

「Time use, unpaid care work, and income: a nationwide cross-sectional web survey of gender gaps among hospital physicians in Japan」は、日本の病院勤務医における“時間の使い方”と“所得格差”を分析した、かなり興味深い研究です。

結論を一言でいうと、
「女性医師は、男性医師より家事・育児負担が大きく、その分、研究・余暇・収入に影響が出ている」
という話です。
ただし、この論文の本質は、単なる「男女格差あります」という話ではありません。
むしろ重要なのは、
“勤務時間を減らせば解決する”ほど単純ではない
という点です。
研究の概要
対象は、日本全国の病院勤務医2,540人。
男性医師:2,224人
女性医師:316人
m3.com登録医師を対象に、2024年1月にWeb調査を行っています。
調査内容はかなり細かく、
労働時間
家事・育児
通勤
学会・研究
睡眠
余暇
などを「1日24時間の中でどう配分しているか」を解析しています。
つまりこれは、
「医師の人生の時間配分」
を見た研究です。
女性医師は家事育児が圧倒的に多い
最も重要な結果。
女性医師は、男性医師よりも無償ケア労働(家事・育児)が多かった。
平日:
女性 +1.51時間/日
休日:
女性 +2.35時間/日
これ、かなり大きい差です。
しかも面白いのは、
女性医師は男性医師より労働時間が“少し”短いだけ
なのに、家事育児は圧倒的に多い。
「時短したら余裕できる」は幻想
この論文で非常に重要なのはここです。
女性医師は、
労働時間はやや短い
しかし余暇は少ない
研究・自己研鑽時間も少ない
という結果でした。
つまり、
減った勤務時間が、「休息」や「自由時間」ではなく、
家事・育児へ再配分されている。
研究時間が減ると、キャリアに直撃する
論文では、
女性医師は
学会
研究
専門能力開発
の時間も少ないと報告されています。
これは極めて重要です。
医師のキャリアは、単純な勤務時間だけでは決まりません。
学会発表
論文
人脈
専門資格
手術経験
当直経験
など、
“勤務外に積み上がるキャリア資本”
が極めて大きい。
つまり、
「家事育児負担の偏り」が、長期的には昇進・収入・研究実績に直結する
という構造です。
年収1500万円以上の割合も低い
年収1500万円以上の割合。
男性:62.8%
女性:34.2%
調整後でも、女性医師は高所得層に入りにくかった。
もちろん、
勤務時間
専門科
年齢
婚姻
責任
なども影響します。
ただ、この論文の重要な視点は、
「時間配分そのもの」が収入に影響する
という点です。
「働き方改革だけでは解決しない」
この論文は、日本の医師働き方改革にもかなり批判的です。
単純に残業規制をしても、
男性医師が家事育児をしない
女性側に家庭負担が残る
のであれば、
「病院の労働時間が減っただけ」
になりかねない。
つまり、“病院外のジェンダー構造”
を変えなければ、本当の意味での是正にはならない、ということです。
個人的に興味深かった点
この論文は、単なるフェミニズム論文ではなく、
かなり「時間経済学」的な論文です。
特に、
人間の1日は24時間しかない
という当たり前の事実を、医師キャリアに当てはめている。
医師の世界では、「女性医師は勤務時間が少ない」という話だけが独り歩きしがちですが、
実際には、
“病院外の労働”が増えている
可能性が高い。
これは、単純な時短制度では解決しません。
一方で、注意すべき点もある
ただし、この研究にも限界があります。
論文でも認めていますが、
Web調査
自己申告
女性回答者が少ない
バイアスの可能性
などはあります。
また、
「なぜその家庭分担になっているのか」
までは分析できていません。
つまり、文化・価値観・所得差・夫婦のキャリア戦略など、
かなり複雑な問題です。
最後に
この論文を読むと、
医師の働き方問題は、単なる残業時間の話ではなく、
家庭
育児
キャリア形成
社会文化
所得構造
まで含めた、“人生全体の時間配分”
の問題なのだとわかります。
そして日本の医療は、
「病院内の労働」
だけでなく、
「病院外で誰が何を担っているのか」
にかなり依存している。
医師働き方改革の本当の評価は、単に残業時間が減ったかではなく、
誰の時間が増え
誰の負担が減り
誰のキャリアが守られたのか
まで見ないといけないのかもしれません。
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