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私小説「ビー・クリエイション! 」第一部 -4 「腱鞘炎」

第四話 「腱鞘炎」



「おねぇしゃ…おねえさん、絵を描いて。」

緊張のあまり舌を噛みそうになりながら、小学1年生の女の子が声をかけてきた。

ひと月前は、まだ園児だった。その面影が、残っているような気がした。
だから、そのあまりの可愛らしさに、私は思わず
微笑んでしまった。

「いいよ。」




休み時間になると、見学者と依頼者が入れ替わり
立ち替わり訪れる。絵を描きながら、人に対応するのは目の回る忙しさだった。

「はいはーい、順番に並んで! このノートに名前を書いて!」

とうとう最初に絵を描いてあげたクラスメートの男子が、人員整理を手伝ってくれるようになった。

「ありがとう」

私は人員整理をクラスメートに任せ、イラストを描くことに集中した。





✳︎





「イタタ!」
「あなた……何をしているの。」

普段は無関心な母も、ここ最近の私が、何やら
忙しそうにしている様子を見て、さすがに声を
かけてきた。

実は連日、絵を描き続けたせいで、とうとう人生で
初の腱鞘炎になってしまったのだ。




そこで、仕方なく母と会話を始めた。

「プレゼントする絵を描いてるの……それで、鉛筆を持ったら」
「ふーん」
「……ちょっと、手が……痛くなっちゃって」
「なに?転んだの?」

母は、一から十まで言葉にしなければ分からない
ひとだ。ただ鈍い、という簡単な言葉では言い表せないほど、感覚的に物事を理解することが苦手なひとなのだ。

父からは、母の指示には従わないよう言い含め
られていたが、正直なところ、そう言われるまでもなく、会話そのものがしんどい相手で、あまり関わらない様にしていたのだが、今回、背に腹はかえられなかった。

苦労しながらも何とか説明を終えると、無事に湿布をもらうことができた。





私はその湿布をいそいそと貼りながら、考えていた。

需要があるなら、仕事になるはずだ。
絵を販売。
……できるだろうか?

突拍子もない思いつきだ。
それでも。

一度、思いついてしまったら、やってみずには
いられなかった。



普段の私は、極度の人見知りで内気な少女だった。
人の輪の中では、常に息を潜めていた。
自分から人に声をかけることなど、まずできない。

けれど、実は、その身に余るほどの、強すぎる好奇心を持っていた。

ひとたび、その好奇心が湧き上がると、怖さも不安もすべて押しのけ、私を前へと突き動かしてしまう。

──それが、抗おうとしても抗えない、実に厄介な衝動となって、人をあっと驚かせるほどの行動をとらせてしまうことがあった。


つまり、ときおり大暴走するのである。




──それが、つばさという人間だった







✳︎

次回↓


前回のお話はこちら⇩第3話「ムーブ」

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