セカンドオピニオン|アラフィフ「歯を失う」のを受け入れられなかった話
このまま、
ここで治療を続けていいのかな…
私は悩んでいました。
1年前に突然割れた上の奥歯。
治療したものの予後が良くなく、
抜歯だと言われていました。
まだ歯は失いたくない。
そう思った私は、
人生で初めて歯医者のセカンドオピニオンを
聞きに行ってみることにしました。
これは私が45歳から“100の人生初”に挑戦している
『ミケチャレ』シリーズの第43弾。
心配性で考えすぎてしまう私が、
勇気を出して一歩踏み出すリアルな体験談です。
奥歯が割れた日
治療は1年前から続いていました。
ある日、お昼ご飯を食べていると、
突然「パシッ!」と耳に響く大きな音。
あれ、硬いご飯でも噛んだかな。
そう思って、もうひと噛みした途端、
「ズキーン!」ひどい痛みが走りました。
え?なに?
我慢できないような激しい痛み。
私は、何が起きたのか分からないまま、
助けを求めるように
行きつけの歯医者さんへ駆け込みました。
「あー、縦に割れちゃってますね。」
そこは、
私が結婚してこの地に引っ越してきてから、
15年以上、お世話になっている歯医者さん。
いつも予約がいっぱいで、
腕がいいと評判の先生でした。
「もし奥まで割れちゃってると、抜歯になりますね。」
その言葉を聞いて、
私は反射的に答えました。
「抜歯は避けたいです!」
歯を失うのは、
70代くらいになってからだと思っていました。
でも私はまだアラフィフ。
歯を失うには早すぎる。
「では出来る限りのことは、やってみましょう。」
結局、神経は抜いた後、
クラウンを被せて様子を見ることになりました。
その後、毎週のように数か月通い続け、
元通りに白く光る歯を見たとき、
先生に任せて良かった。
心からそう思いました。
それから半年後。
ふと鏡を見ると、治療した歯の上に、
ニキビのようなものができていました。
口内炎かなあ。
そう思って1か月ほど放置してみるものの、
全然治る気配がない。
……なんか変だ。
もしかして、変な病気?
不安になって、
私はChatGPTに聞いてみました。
「それは口内炎ではなく“フィステル”です。
歯の奥にある膿が、歯ぐきに出口を作っている状態です。」
そしてChatGPTは続けます。
「放置すると骨が溶けるので、
早めに病院へ行ってください。」
……骨が溶ける?!
私は怖くなって、
すぐに先生に診てもらうことにしました。
消えなかったモヤモヤ
私の口の中を診て、
先生は迷うことなくこう言いました。
「抜歯になりますね。」
やっぱり抜歯か…
覚悟はしていたものの、
まだ、すんなりとは受け入れられませんでした。
「他に治療法はありませんか?」
私は、食い下がって聞きました。
「治るかは分かりませんが、
レーザーで焼く手術もできます。」
──手術?
その言葉に怖くなった私は、
矢継ぎ早に質問しました。
どんな治療なのか。
入院は必要なのか。
もし治らなかったら──。
最初は、
先生は忙しそうに何かをしながら、
私の質問に答えてくれていました。
でも少しすると、質問の途中で、
別の患者さんの対応へ行ってしまいました。
迷惑な患者だと思われてるかな。
そんな不安が私を襲いました。
少しして戻ってきた先生は、
「じゃあ来週レーザーやってみましょう。」
それだけ言って、また別の患者さんへ。
本当は、まだたくさん聞きたいことがありました。
でも、
忙しそうな先生を引き止めるのが申し訳なくて、
私は質問をぐっと飲み込みました。
先生の言う通りなら、きっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、
次回のレーザーの予約をして帰りました。
けれど胸の奥には、
消えないモヤモヤが残っていました。
「手術」と聞いて身構えていたけれど、
レーザー治療は拍子抜けするほど簡単でした。
部分麻酔をして、
フィステルをレーザーで焼くだけ。
5分ほどで終わり、
痛みもほとんどありませんでした。
このまま治るかも。
少し期待して過ごした数日後──
治りかけた傷口に、
また白い点が…
フィステルの再発でした。
やっぱり駄目だったか…
気持ちが落ち込む中で、
こんな思いが少し芽生えていました。
もっと落ち着いて治療してもらえていたら、
もしかしたら再発しなかったかも。
先生を疑いたいわけではありません。
ただ、あの時感じたモヤモヤが、
どこか胸の奥にくすぶっていました。
私は、流れ作業の中のひとりだったのかな。
そんな身勝手な考えが、
少しずつ先生への信頼を揺らしていました。
取り残された感覚
フィステルが再発したことにショックを受けながら、
また先生のところへ行きました。
「これだともう治療法がありません。抜歯ですね。」
そう言われて、
私は静かにうなずきました。
そうか、仕方ない。
予想通りの言葉に落ち込んだけれど、
覚悟はもうできていました。
前を向かなきゃ。
そう思って、
抜いたあとの治療について尋ねました。
選択肢は、
部分入れ歯かブリッジ。
インプラントなら。
他の病院を紹介するとのこと。
「あとは歯科衛生士が説明しますので、
決まったらまた来てください。」
そう言うと先生は、
すぐに別の患者さんのところへ行ってしまいました。
なんだか私は、
ポツンと取り残されたような気持ちになりました。
ああ、やっぱり私は、
先生の流れ作業のひとつなんだ。
そう思った瞬間、
ずっと信頼していた人との間に、
急に距離ができてしまったような、
何とも言えない寂しさを感じました。
小さな希望
私はその少ない説明だけでは、
一生つきあっていく自分の歯をどうするか、
決断することができませんでした。
両親やママ友など、周りにも聞いてみましたが、
みんなそれぞれ意見が違う。
何が一番いいんだろう。
ますます迷った私は、
またChatGPTに聞いてみました。
「歯を抜きたくないのであれば、根管治療を専門にしている歯医者さんで診てもらうといいです。」
根管治療?
聞き慣れない言葉でした。
調べてみると、
歯が根元まで割れていなければ、
その治療で残せる可能性があるらしい。
──まだ、抜かなくてもいいかもしれない。
その可能性に、
少しだけ気持ちが軽くなりました。
その時、ふと気づきました。
ということは、
別の歯医者に行くってことか…
正直、
15年以上通っている場所を離れるのは、
勇気がいりました。
もちろん新しい場所への不安もある。
でも、それ以上に──
セカンドオピニオンを受けることが、
「先生を裏切る行為」のように感じてしまったのです。
もし知られたら、
気まずくて今までみたいに通えない。
そんな気持ちまで、
勝手に膨らんでいきました。
根幹治療に力を入れている歯医者は、
意外とスムーズに見つかりました。
話だけでも聞きに行ってみようかな。
そう思ってはみたものの、
すぐに別の不安が浮かびます。
今までの治療のカルテはいる?
割れた時のレントゲン写真は?
紹介状はいるの?
「新しいところでちゃんと診てもらいたい」気持ちと、
「今の先生には内緒にしたい」という気持ちが、
心の中で戦っていました。
先生に言った方がいいのかな…
考えれば考えるほど、
どうしようと悩む日々が続きました。
抜歯をキャンセルした日
抜歯の予約日が近づいてきました。
本当に、
このまま抜いてしまっていいのかな。
後から後悔しないかな。
そんな不安が、
日に日に大きくなっていました。
でも、
「セカンドオピニオンをもらいたいので、
別の歯医者に行ってきます」
──そう伝える勇気は、
どうしても出ませんでした。
悩みに悩んだ末、私はまず、
抜歯の予約をキャンセルすることにしました。
迷ったまま進めば、きっと
「あのとき、もう少し考えていれば…」
と後悔する気がしたからです。
悩みながら、
さらに数日が過ぎました。
そして、ようやく私は決めました。
先生には言わず、
カルテのコピーも持たず、
とにかく新しい歯医者へ行ってみよう…と。
新しい歯医者へ
私が行ったのは、
2年ほど前にできた
近所でも評判の良い歯医者さんでした。
セカンドオピニオンをお願いしたいと伝え、
事前に予約を取りました。
当日診てくれたのは、
60代くらいの穏やかな男性の先生。
レントゲンとCTを確認した先生は、
静かに言いました。
「根元まで割れている可能性が高いですね。
根管治療をしても難しく、抜歯になると思います。」
以前の歯医者と、同じ診断でした。
やっぱり抜歯か…
顔が曇る私を見て、
先生はにこやかに続けました。
「その後どうするかは、
急いで決めなくても大丈夫ですよ。」
部分入れ歯、ブリッジ、インプラント。
それぞれのメリットとデメリットを、
サンプルを見せながら丁寧に説明してくれました。
忙しそうな先生に申し訳なさを感じながらも、
私は気になっていたことを全て質問しました。
先生は、そのたびに立ち止まって答えてくれました。
その丁寧な対応に、
いつしか先生への信頼感が生まれていました。
ここで治療をお願いしよう。
そう決めて、
受付で抜歯の予約を取りました。
診察代を支払おうとすると、
受付のお姉さんが言いました。
「本日は無料です。」
え?無料?
レントゲンもCTも撮ってもらったので、
何かの間違いかと思い確認しました。
「今日はアドバイスのみで、治療はしていませんので。」
そう説明され、
思わず「ラッキー」と心の中でつぶやきました。
歯医者を出た私は、
不思議なくらいスッキリした気持ちになっていました。
もっと早くこれば良かった。
さわやかな風を感じながら、
足取り軽く家へ帰りました。
さて、次はブリッジかインプラントか。
まだまだ悩む時間は続きそうです。
✨️納得して決めるということ
長年お世話になっていた歯医者さんを、
変えるのには勇気が要りました。
でも、もし迷ったまま抜歯していたら、
「別の選択もあったんじゃないか…」と、
きっと何度も思い返していたと思います。
忙しそうだから聞きづらい。
迷惑に思われたらどうしよう。
思い返せば、私は今までずっと
「相手にどう思われるか」を気にして、
相手の気持ちばかりを優先していたような気がします。
今回、
勇気を出して聞きに行ったセカンドオピニオン。
その結果は、
最初の歯医者さんと同じ「抜歯」でした。
でも、
疑問を解消し、心から納得できたことで、
気持ちは思った以上にスッキリしていました。
ちゃんと自分で決めることができた。
そんな小さな自信や、
満足感も感じることができました。
結果を変えることはできなくても、
納得して進むことはできる。
相手がどう思うかより、
まず「私はどうしたいのか」。
そんなことを、
もっと大切にしていきたいと思いました。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました!
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