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旗当番役員|居るのに出てこない家の前で、人見知りの私が叫んだ日

なるべくなら役員はやりたくない…

私はここ10年ほど、
PTA役員や町内役員から逃げてきました。


上の娘が幼稚園の頃、
一度だけ引き受けたPTA役員。

一番大変だったのは
ママ同士の人間関係でした。


会長をしていた〇〇くんママの意見が最優先で、
不満があっても、だれも意見を言わない。

その空気に疲れ果て、
私は心に決めました。

──もう二度と役員はやらない。


それから年月が過ぎ、
上の娘は中学生に。

下の娘は小学校6年生になろうとしていた
春休みのことでした。


「ピコン!」

LINEの通知音が鳴りました。


送り主は、
同じ町内の一度も話したことのないママ。

「来年度、旗当番の役員をお願いできませんか?」

うわー、ついに来た。

いつか来るかもしれないと思っていた役員の打診。


身体は画面を見て固まりました。

できれば、やりたくない。

なんて言って断ろう…


最初はそう思ったものの、
下の娘は小学校最後の年。

これまで一度も役員を引き受けてこなかったことに、
少しだけ後ろめたさもありました。


──最後くらい、やってみようかな。

そう思った私は、
人生で初めて旗当番の役員
挑戦してみることにしました


これは私が45歳から“100の人生初”に挑戦している
ミケチャレ未経験チャレンジ』シリーズの第41弾。

心配性考えすぎてしまう私が、
勇気を出して一歩踏み出すリアルな体験談です。




引き受けたものの、正直なところ、
何をするのかよく分かっていませんでした。

とりあえず、話を聞かなきゃ。

そう思い、
前任の役員さんの家をたずねました。


教えてもらった主な仕事は、
大きく2つ。

・新1年生を入れた通学班リスト作り
・旗当番の旗を回す順番決め


やることは、
前年度のリストを修正するだけ。

仕事は年度初めに集中し、
その後は転入や転出がなければ、
特にやることはない。

思ったより簡単。
これなら私にもできそう。

想像より簡単だった仕事に、
少しほっとする自分がいました。



最初からつまずく


引き継ぎでもらった書類を広げ、
まずは「通学班リスト作り」から始めました。

今年の新1年生は3人。
そのうち2人は双子でした。


パソコンでリストを作りたかったけど、
指定されたのは、
昔から受け継がれている手書きのリスト

名前、学年、兄弟関係──

ひと枠ずつ、
間違えないよう書き込んでいきます。


10人ほど書いたところで、
ふと手が止まりました。

双子の兄弟欄。

どちらが兄で、
どちらが弟なのか分からない。


結局私は、
その確認だけのために、
家をたずねることにしました。

ちょっと面倒くさいな…

少しだけ、
そんな気持ちが芽生えていました。


──でも、この時の私はまだ知りませんでした。
面倒はこれだけでは終わらないことを。




簡単なはずだった順番決め


通学班リストは、なんとか完成。

次は、「旗当番の順番決め」でした。

これは、すぐ終わるはず。

卒業する6年生を外し、
新1年生の家庭を加える。

あとは家が近い順に、
旗をリレーのように回す順番を決めるだけ。


地図にマーカーで色を付けながら、
順番を決めていきました。

よし、できた!

そう思った瞬間、ふと気づきました。

……あれ?
最後の人って、誰に旗を回すんだっけ?

前任の役員さんにLINEで聞くと、
最後は隣の町内へ回すとのこと。


でも、
隣の町内までは、少し距離がある。

「最後の方には、
事前にお願いしておいた方がいいですよ。」

え? 突然そんなこと言われても…

近所づきあいをほとんどしてこなかった私には、
気軽に頼める相手はいませんでした。

どうしよう…

悩みに悩んだ末、
自分をリストの最後にすることにしました。


でも、私の家はリレーの中間地点。

最後にすると、
旗は少し不自然なルートで回ることになります。

誰かに文句を言われたらどうしよう…

頭の中は、
不安でいっぱいになりました。


でも、他に方法がない。


私は、何度も地図を見直しながら、
順番を決め直しました。



ただ配るだけなのに…


旗当番表が完成し、
次は「各家庭への配布」です。

ポストに入れた後は、
町内のグループLINEに「配布しました」と連絡する。

それだけの作業です。


でも私は、妙に緊張していました。

名前の載ったリストを、
間違った家に入れたら大変なことになる…

ただ配るだけなのに、
責任の重さを感じていました。


地図だけでは不安だった私は、
6年生の娘に声をかけました。

「ちょっと一緒に来てくれる?」

ひとりで回るより、
安心できると思ったからです。


そういえば、

「新1年生の家庭には直接手渡しし、
LINEも交換してきてほしい。」

そう言われていたことを思い出しました。


久しぶりのLINE交換。

直前で戸惑わないように、
友だち追加画面を確認してから家を出ました。



地図と表札を何度も確認しながら、
当番表をそっとポストへ入れて回りました。

問題は、新1年生の家でした。

2軒あるけど、どちらも留守。

時間を変えて、
何度も訪ねるしかありませんでした。


インターホンを押す度に、
画面に残るであろう自分と娘の姿。

変な勧誘だと思われないかな。

そう不安になりながら、
できるだけニコッとした表情を装いました。


翌日、
双子の親御さんには無事に会うことができ、
LINE交換も終わりました。

小さなことなのに、
ひとつ大きな仕事を終えたような気持ちでした。



居るのに会えない家


でも、
もうひとりの新1年生の家には、
何度行っても会えませんでした。

朝も、昼も、夜も。
平日も、土日も。

インターホンを押しても、
反応はなし。


その家は、
私と同じマンションの真上の部屋でした。

私は家族に、
「上で物音がしたら教えて」と頼み、
在宅の瞬間を狙うことにしました。


ある土曜日の昼。

上の部屋から、
ガタガタと家具を動かす音が聞こえました。

今だ。

面倒がる娘を、
半ば無理やり連れて階段を上りました。


玄関の前に立つと、
ドアが少しだけ開いていました。

半ドアでした。

絶対、中に誰かいる!

やっと渡せる!と喜んだ瞬間、
不安も同時に襲ってきました。

どんな人が住んでるんだろう。

変な人だったらどうしよう…

でも、
娘の前で不安な顔はしたくない。

平静を装いながら、
インターホンを押しました。


「ピンポーン」

……あれ?

「ピンポーン」

……反応なし。

「ピンポーン」

3回目。誰も出てこない。


そっと耳を澄ましてみると、
さっきまでガタガタとしていた物音は止んでいます。

でも、中に誰かいることは確実。

この機会を逃したら、
またいつ次会えるか分からない。

切羽詰まった私は、
玄関の前で声を張り上げました。


「〇〇君の通学班の件で参りました!」
「少しご説明したいことがあります!」


しばらくして、
インターホン越しに男性の声。

「……はい」

「あの、通学班の件で。少しだけお話できますか?」

「……今は無理です」

それだけ言って、沈黙が続きます。

「1分で終わりますので!」

必死に食い下がりましたが、
ドアが開くことはありませんでした。

私は「また夕方に伺います」と伝え、
部屋へ戻りました。


家に居るのに出れないって、どういうこと?

確実に、
何か大きなものを動かしていた音がしました。

家具を組み立てて、手が離せないのかな。

お風呂に入ったばかりだった?

理由はいくらでも考えられるのに、
なぜか胸がザワザワとして妙な違和感が残りました。



2度目の訪問


そして夕方。

嫌がる娘に「最後だからお願い…」と頭を下げ、
もう一度ついてきてもらいました。

ひとりで行くのが心細かったのです。


今度はドアはきちんと閉まっていました。

深呼吸をして、
インターホンを押します。


「ピンポーン」


少し間があって、
「ガチャ」とドアが開きました。


顔をのぞかせたのは、
40代前半くらいの男性。

歯が白くて、
体格のいいマッチョな人でした。

──あれ?

勝手に、
暗くて怖そうな人を想像していた私は、
少し拍子抜けしました。


私は、緊張で早口になりながらも、
通学班や旗当番の説明をしました。

男性は意外にも笑顔で聞いてくれました。


説明が終わると、

「あー、わかりました。妻に伝えておきます」

そう言って、ドアを閉めようとします。

え、ちょっと待って。

私にはまだ、
「LINE交換」というミッションが残っていました。


町内のLINEグループの話をすると、

「妻が入ることになります。
でも夜にならないと帰ってこないので」

え、どうしよう。
また夜に来るのは絶対嫌だ。

どうしたらいいか戸惑っていると、

「じゃあ、まず僕とLINE交換しましょうか」

と提案されました。


でも、なぜか気が進みませんでした。


知らない男性と繋がること。
自分のアイコンを見られること。

急に距離が近づく感じがして、
少し怖かったのです。


私はとっさに、
自分のQRコードを表示しました。

「これを写真で撮ってもらい、
後で奥様に登録してもらってもいいですか?」

男性は、私のコードを撮影すると、
そのままバタンとドアを閉めました。


結局、
奥さんにも息子さんにも会えないまま。

ちゃんと終わったはずなのに、
どこか落ち着かない気持ちだけが残りました。



私だけじゃなかった


夜に帰ってくるって言ってたな…

そう思い出しては、
何度も何度もLINEを開きました。

でも、その日は結局、
連絡は来ませんでした。


次の日も、
1日中気にしながら過ごしましたが、
スマホが鳴ることはありませんでした。

大丈夫かな…

不安をひとりで抱えきれなくなった私は、
前任の役員の方に相談しました。


すると、こんな言葉が返ってきました。

「町内会の人もね、
いつ行っても会えない変な家だって言ってたよ。
みんな困ってるみたい。」

それを聞いて、
少しだけ肩の力が抜けました。


私が、うまくできなかったわけでも、
対応を間違えたわけでもない。

ただ、“難しい家”だっただけ。


そう思えたことで、
少しだけ安心できました。


よくよく考えてみると──

あの家のインターホンを何度も押し、
家の前で大きな声を張り上げ、
旦那さんを引っ張り出した。


なんだかそれがすごい快挙のように思えててきて、
あの日の自分を、
少しだけ褒めてあげたくなりました。



やっと終わった…はずだった


それから1週間。
まだ連絡はありませんでした。

奥さんに、ちゃんと伝わっているのかな。

また訪ねるべきか…
でもできれば行きたくない。

そんなモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、
新学期が始まりました。


数日後の早朝。

「ピコン!」

私のスマホが鳴りました。


「連絡が遅くなり申し訳ありません…」

奥さんからの連絡でした。


私はすぐ返信し、旗当番の確認。
町内LINEにも無事追加。

やっと終わった……!

長く続いたモヤモヤが消え、
ようやく心から安心できました。



──それから1か月後。



「ピコン!」

またスマホが鳴りました。


今度は、
4年生の女の子のママからの通知でした。


「引っ越すことになりました。」


………え?!


やっと終わったと思ったのに。

また、旗当番表の作り直しです。



✨️不安があっても大丈夫


最初は、
すぐ終わると思った旗当番の調整役員。


でも実際に大変だったのは、
仕事そのものではなく、

よく知らない人と関わること

でした。


文句を言われないかな。
嫌な顔をされないかな。

相手の反応を想像して、
気を遣うことばかり。


社交的ではない私にとっては、
それが一番エネルギーを使う部分でした。



私はこれまで、
「不安や心配の種」を増やさないように、
できるだけ波風を立てずに過ごしてきました。

役員を避けていたのも、
その延長だったのだと思います。


でも、逃げられない状況になったとき、
思いがけない自分に出会いました。

玄関前で必死に声を張り上げた。

普段の私なら、
きっとできなかった行動です。


あのとき私を動かしたのは、
勇気でも根性でもなく、

この不安を終わらせたい

という強い気持ちでした。



これまで、不安や心配は、

「私を邪魔するもの」

だと思い込んでいました。


でも今回、それは時に、

私を前に動かす力

にもなると知りました。



不安は悪いものじゃない。
時には原動力にもなってくれる。



今まで私を動かしてきたのも、
もしかしたら“不安”だったのかもしれません。



不安を抱えていても大丈夫。
そのまま進めばいい。



少しだけ、
そう思うことができました。





最後まで読んでいただき
ありがとうございました!

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