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#061.読みやすい手書き楽譜の書き方 1

最近は誰でも手軽に出版されているものと同じような楽譜を作れるようになりました。

けれど、「なんか読みにくい…」と感じる残念な楽譜に出会ったこと、ありませんか?大手の出版製本されている楽譜と同じようだけど、何かが違う。

こんな楽譜を渡されたらどう思いますか?

大手の出版譜のようなフォントを使って作られた印刷譜なのになぜか読みにくいのは、楽譜を書く上でのいくつかの空間バランスや位置のルールが守られていないからなのです。例えば、吹奏楽やオーケストラで一般的に使われている楽器の場合、強弱記号は五線の下に置きます。一方でテンポに関する指示のほとんどは五線の上、練習番号も上にあります。もしもこれらの位置が逆になったら、多分多くの人がいろいろな情報を見落としてしまう非常に読みにくい楽譜になることでしょう。以下の楽譜、読めますか?

これは酷いですね。何という読みにくさ。

我々は楽譜の書き方に対して具体的なルールを知らなかったとしても、たくさんの楽譜を見ているうちに「そこにはそれが書かれている」と無意識に予測して読んでいるために、予想外の位置に予想外の記号が書かれていると、見落とし、見間違えなどのトラブルを起こしてしまうのです。読みにくい楽譜は読むための(本来不要な)エネルギーを使うために、演奏クオリティを左右してしまう可能性があるのです。

聴音のレッスン

僕が楽譜を書くようになったのは音大受験を目指すようになってからです。「書くようになった」なんてエラそうな言い方をしましたが、実情は音大入試の課題に「聴音」があったからです(聴音の試験がない音大や専攻もあります)。

聴音とは、聴こえてきたメロディや和音を楽譜に書き起こす試験で、これがとても苦手でした。僕は中学1年生で吹奏楽部を始めたのをきっかけに音楽に関わるようになったため、最初の1年ほどは楽譜が読めないままトランペットを演奏していました。そのまま中学生の間は、かなり適当な理解で楽譜を読んでいて、新曲の楽譜をもらうたびに音源を聴いて覚え、暗記した状態で楽器を演奏するという荒技で乗り切りました。

楽譜の書き方

そんなレベルの人間が高校1年生になって音大目指すと言い出し、レッスンで聴音を始めたところでできるはずもなく。本当に苦戦していたので、少しでも完成度を上げるためには「誤解されないキレイな楽譜を素早く書けるスキル」を手に入れようと考えました。少し方向性が間違っているようにも感じますが、そこで出会ったのが仙田尚久著「楽譜の書き方」(音楽の友社)でした。

この本はもう絶版になっていると思いますが、当時まだ楽譜浄書ソフトがなかった(もしくは一般的でなかった)時代に多く使われていた「写譜ペン(カリグラフィーペン)」で楽譜を書くための解説本で、巻末に鉛筆書きについても触れていたために購入しました。

写譜ペン

写譜ペンで書かれた楽譜、と言われてもちょっとピンとこないかもしれませんが、大人の方でしたら吹奏楽ですとミュージックエイトの古い時代の楽譜、と言えばわかるかもしれません。finaleという楽譜浄書ソフト(後でまた出てきます)にも、ジャズフォントというのがあって、写譜ペンで書いたような楽譜を作成することもできます。ビッグバンドの楽譜などは写譜ペンで書かれたものが今でも結構あります。

そしてこの本を見ているうちに鉛筆書きだけでなく写譜ペンを使った楽譜を書いてみたくなり、高校生の時、ヤマハに写譜ペンが売ってるのを見つけたので購入してみました。

写譜ペンはラインマーカーのペン先が真っ直ぐになったような形をしていて、引く角度で細くなったり太くなったりします。これを使って、玉や連桁を太く、棒を細く引くことができるわけです。

しかしこのペン、慣れるまでが大変。全然上手に書けませんでした。たくさん書いて慣れていくしかなかったわけですが、これがすごい楽しくて、頼まれてもいないのに出身中学校の校歌のパート譜を全部書き直したり、パート譜しかなかった楽譜のスコアを作ったりもしました。

書いているのは楽しいのですが、一気にテンションが下がることも多々ありました。ミス、書き損じです。

鉛筆だったら消しゴムでチャチャっと消せるけれど、写譜ペンはインクなのでそうもいきません。そこで、同じサイズの五線紙を切り貼りして書き直す方法を取るのですが、これがとても面倒臭い。ミスするほうが悪いのですが、でもこのせいでだんだんと使わなくなってしまいました。

Finaleとの出会い

その頃はもう音大生で、1996年頃だったと思いますがfinaleというPCソフトで出版譜のような楽譜を作れると友人から聞き、いてもたってもいられれなくなって、大変お恥ずかしい話ですが両親におねだりをしてPCごと買ってもらいました。ちなみにこの当時、finaleはMac専用ソフトだったために、当時PowerMacというシリーズを手に入れたのを覚えています。これがきっかけで、現在までずっとAppleユーザーです。逆に言えばWindowsは使ったことがなく、文字の入力の時点で行き詰まるほど操作知識がありません。ひらがなをカタカナにする方法すらわかりません。

さて、このfinale、案の定ドハマリして、頼まれてもいないのに、そこらじゅうにある出版譜を入力しては印刷するという意味不明な行為で楽しんでいました。しかし、そのうちに書き写すだけでは納得できなくなり、自分で編曲してみたくなりました。finaleは入力すると再生できるので完成形のイメージがつきやすかった、というのが編曲をするようになった最大の要因です。

編曲のノウハウもないまま金管五重奏の楽譜を作っては大学の友人を巻き込んで演奏させ、あまりりも酷い編曲に自ら呆れ返る、そんなことを何度も繰り返していたので友人は迷惑だったでしょうね。

印刷譜なのに読みにくい

さて、編曲の話は置いておくとして、finaleを使っていてひとつ気になったことがあるのです。それが、冒頭に書いた「なんか読みにくい…」楽譜になってしまう点。理由はすでに書いたとおり、空間バランスや記号の位置がルールに背いているからです。読みやすい楽譜にするためには視線の流れにストレスなく情報が流れ入ってくる状態を目指すことが大切。

別に浄書屋さんを目指そうとしていたわけでもありませんが、メモ的なものも含め、音楽に携わっていると結構な頻度で楽譜を書くことがあります。そこで、鉛筆で読みやすい楽譜を書くためのポイントと、楽譜を書く上でのルールについてお話ししたいと思います。


…と思ったのですが前置きが長くなってしまったので、次回お話しすることにします。
楽譜は音楽に携わる方みなさんに関係することですから、ぜひトランペット以外の方にもご覧いただければ幸いです。

それではまた次回!


荻原明(おぎわらあきら)

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荻原明(おぎわらあきら):トランペット 荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。