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『カチューシャとおむすびの共通点:USJ出身者が挑む、地方で勝つための「里山コト消費マーケティング」』⑤

第5話:チームビルディングと未来への決意【完結】

※この記事は、50歳でUSJの物販・飲食ビジネスの責任にある立場から「道の駅」の副業へ飛び込み、大ヒット「のせむすび」を生み出した挑戦記(第5話)です。

第4話:具体的な演出とヒットの瞬間↓

【働く人が最高のアトラクション】

USJには、私が大好きな素晴らしい言葉があります。

「Crew is No.1 Attraction(働くクルーこそが、パークにとって最高のアトラクションである)」

いかに最先端の乗り物があっても、そこで働く人が誇りを持たず、楽しく働いていなければ、ゲストを感動させることはできません。これは、地方の道の駅であっても全く同じです。

次に私が挑んだテーマは、現場で働くスタッフの方々が、いかに誇りを持って楽しく働けるか、ということでした。

【形から入り、心が変わる】

具体的な仕掛けとして、まずはスタッフの制服を新調し、あの「のせむすび」のロゴマークを胸に刻みました。形から入ることも、チームの連帯感を生むためには大切です。

しかし、本質はそこではありませんでした。何よりスタッフの意識を変えたのは、次の「体験」でした。

「自分たちがその場で一生懸命に結んだおむすびを、お客様が『美味しい!』と笑顔で頬張る姿を、目の前で目撃し続けたこと」

自分の手から生み出されたものが、ダイレクトに誰かの幸せを作っている。

その体験の積み重ねが、スタッフの心に自然とプロとしての「誇り」を養っていったのです。ロゴをつけた制服を着ることで、自らが発信者となる自覚が芽生えていきました。

「働く人が主役」というエンターテインメントの本質は、場所が地方の道の駅に変わっても、見事に証明されたのです。

【売上1.3倍へ導いた「点・線・面」の戦略】

プレハブ小屋から始まった「のせむすび」の大ヒットは、現場に強い信頼感を生み出しました。

「どこから来て、どういう立場で関わるのかわからない人物」から、「この人のアイデアを実行すれば、本当にお客様が喜び、数字が変わる」という存在へ。現場の視線が180度ひっくり返った瞬間でした。

粗利の戦略


実は、おむすびハウスにしたのには、もう一つ理由があります。
大部分の道の駅はそうだと思いますが、農産物は地域への貢献もあり、農家さんへの還元が目的で、道の駅の利益は手数料収入になり、大きな利益率(マージン)には、なりません。そこに自ら付加価値をつけることにより道の駅としての利益幅も大きくなるのです。この粗利戦略は表面上、目立ちませんが、実はまさに経験からくる戦略なのです。

ここから、戦略は「点」から「線」、そして「面」へと加速していきます。

【行政特有の時間軸を味方につける】

加速するといっても役場が相手ということもあり、予算割り当ての関係上、施策のペースは「半期に一つ」「1年に一つ」という極めて緩やかなものでした。

しかし、私にはUSJ時代の第三セクターとしての経験がありました。だからこそ、行政特有の時間軸に焦る(いらいらする)ことなく、大局を見てじっくりと戦略を仕込むことができたのです。

具体的には、以下の戦略を次々と実行していきました。

  • 館内レストランへの「カウンター席」導入

    • 目的:少人数(2人組、バイク、サイクリング)の顧客層に対応し、回転率と居心地を両立させる(従来の4人卓の満席対策)。

  • 「屋外テラス席」の増設

    • 成果:レストランの満席緩和。                  ※これらは、のちに訪れるコロナ禍において図らずも最強の感染対策となり、爆発的な売上を維持する原動力となった。

  • タペストリー型「松竹梅メニュー」の導入

    • 視覚戦略:その土地のおすすめをわかりやすく打ち出し、自然と客単価が上がる仕組みを構築。

  • ネーミングのローカライズ

    • アプローチ:必ず「能勢の」「能勢で採れた」「能勢産の〇〇を使用した」といった地域名を入れる。地元の人にとって「当たり前」すぎて打ち出していなかった価値(手作り味噌など)を、言葉にしてゲストに気づかせてあげる。


【数字が証明した結果】

これらは、私だけのアイデアではありません。おむすびハウスでの成功を経て、現場のスタッフたちからも「もっとこうしたらどうか」という前向きなアイデアが次々と湧き出るようになり、それを一緒に実現していった結果です。

スタッフが一丸となり、顧客体験を磨き続けた結果、道の駅の売上は毎年右肩上がりに成長。

わずか5年で、売上「1.3倍」という圧倒的な実績を達成しました。

おむすびハウスのOPEN直後、大行列ができてお米が炊き上がる時間待ちになり、「ごはんが炊けるのが間に合わない!」と現場から問い詰められたこともありました。

しかし今では、受け渡し方法やバックアップ方法を、スタッフ自らが工夫して改善しています。あの時の「間に合わない!」は文句ではなく、「もっと提供したい、もっと喜んでいただきたい」というプラスの熱量だったのだと、今ならはっきりと分かります。

【9月末、私はサラリーマンを卒業します】

そして、私は決意しました。
今年の9月末でサラリーマンを卒業し、10月から「地域活性化プロデューサー」として完全に独立します。

私のこの5年間の挑戦は、決して能勢町という場所だけで起きた「一度きりの奇跡」ではありません。

日本のどの地方にも、その土地にしかない素晴らしい「物」や、受け継がれてきた「事柄」が必ず眠っています。

ただ、あまりにも身近にありすぎるために、そこに住む人たちにとっては「当たり前の日常」になってしまっているだけなのです。

地元の人が見過ごしている名産品や、隠れた魅力という宝物を見つけ出し、よそ者であるプロの視点でそっと光を当てる。そして、現場で奮闘する人たちの背中を、後ろからそっと押してあげる。

「あなたたちの持っているものは、こんなにも素晴らしいんだ」と、エールを送り続けること。

それこそが、サラリーマンを卒業し、地域活性化プロデューサーとして生きていく私の、これからの生涯をかけたテーマです。

50歳を過ぎたあの日、「一歩会社の外に出たとき、自分のスキルは社会の中で通用するのだろうか?」と静かな不安を抱えていた私は、もうここにはいません。道の駅での5年間が、私に明確な答えを教えてくれたからです。

私が社会へ提供できる本当のスキル。それは、きれいな企画書を誰よりも早く作り出すことではありません。

「生産者も、販売者も、そしてやってくるお客様も、関わる全員が笑顔になる『三方良し』のビジネスを組み立て、その挑戦の伴走をすること」

【あなたと、地域の未来をむすびたい】

460倍の針の穴を通したあの日から始まった私の挑戦は、10月から、全国の悩める地域やマーケターのパートナーとして、新しい章へと進みます。

独立する私の次なる主戦場は、ここ大阪・能勢町に軸足を置きながら、関西一円に広がる約150箇所の道の駅、そしてそれを管轄する市町村のすべてです。

誰でも使える!地方で勝つための「里山コト消費」3大原則

本作で実践したUSJ流マーケティングは、道の駅だけでなく、地方のあらゆる「特産品販売」「観光地」「飲食店」に横展開が可能です。そのステップは以下の3つに集約されます。

  1. 「モノ」ではなく「感情の爆発(コト)」に価格をつける

    • 特産品をそのまま売るのではなく、顧客が「わざわざそこへ行った高揚感」を味わえる演出(湯気、音、職人の手元などの五感刺激)を掛け合わせる。

  2. 「100点の理想」よりも「70点の現場の納得感」を優先する

    • 洗練されたマーケティング理論を押し付けると現場は反発する。「ラフランスののぼり」のように、現場のやりたいこと(慣習)をあえて一部受け入れることで、チームの自発的な爆発力を引き出す。

  3. 「点(単発ヒット)」を必ず「線と面(仕組み)」に育てる

    • 1つの商品が売れたら(点)、それを起点に客席の配置、メニューの松竹梅化、周辺イベントとの連動へと施策を広げ(線・面)、持続可能な「エコシステム」に変える。


「道の駅は、地域のテーマパークだ。」

これが、私がこれからの人生をかけて掲げる、地域創生の旗印です。
能勢町で証明した「里山コト消費マーケティング」の方程式を携えて、私は関西中の道の駅と自治体の門を叩きに回ります。

綺麗ごとの政策論ではなく、現場のスタッフと泥をすすり、行列を作り、関わる全員が笑顔になる「三方良し」のテーマパークを、今度はあなたの町と一緒につくりたい。

カチューシャとおむすびを繋いだ私の挑戦は、関西150カ所の地域をむすぶ、壮大な第2章へと突入します。
※また、最初の異物を見るようなひややかな、あの人誰?という視線からのスタートです。

(第1章・完 / 第2章:関西150箇所・地域創生行脚編へ続く)

マガジンにまとめましたので、よろしくお願いします。


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