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『カチューシャとおむすびの共通点:USJ出身者が挑む、地方で勝つための「里山コト消費マーケティング」』③

第3話:マーケティング理論の核心

※この記事は、50歳でUSJの物販・飲食ビジネスの責任にある立場から「道の駅」の副業へ飛び込み、大ヒット「のせむすび」を生み出した挑戦記(第3話)です。

第2話:客単価の勝ち筋はこちら↓

日常では買わない「カチューシャ」が爆発的に売れる理由

昨今、マスコミやビジネス誌では「モノ消費からコト消費へニーズが移っている」と頻繁に報じられています。

では、本当の「コト消費」とは一体何でしょうか?

多くの人は、それを単純に
「体験型のアクティビティ」や
「ワークショップ」
のように訳してしまいます。しかし、その解釈だけでは、物販や飲食のビジネスにおいて売上を伸ばす具体的なヒントは見えてきません。

ヒントは、私が22年間身を置いたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のパークの中にありました。

USJでは、日常生活では絶対に売れないようなものが、毎日爆発的に売れていきます。その代表例が、キャラクターをあしらった派手な「カチューシャ」や「被り物」です。よく、パークの外の人からは「家に帰ってから使うことなんてないだろうに」と、やや批判めいた言葉を耳にすることもあります。

しかし、これこそがまさに「コト消費」の本質を捉えたアイテムなのです。

ゲストは、カチューシャという「モノ」が欲しいだけでお金を払っているのではありません。
「その場を楽しむため」
「この非日常の時間を目一杯楽しいものにするため」
にお金を使っているのです。

家に帰ってからの実用性よりむしろ、その瞬間の感情を最高潮に引き上げるための投資。それこそが、コト消費の本質なのです。

ゲストの心理を解剖する:彼らは「精一杯、能勢を感じたい」


このUSJ流の「コト消費」の視点を持って、改めて能勢町の道の駅に押し寄せるゲストの心理を解剖してみました。

彼らは、平日の忙しい日常を離れ、車を1時間走らせて、わざわざ緑豊かな能勢町までやってきています。駐車場が満車でも、レストランが1時間待ちでも、帰らずにそこに留まっている。

彼らが本当に求めている「コト」は何なのか。

それは、「いま、この場所で、精一杯能勢を感じたい。精一杯、能勢の里山を楽しみたい」という強い欲求でした。

だとするならば、私たちが提供すべきは、綺麗にパック詰めされて棚に並んだ、どこでも買える「冷たい既製品のお弁当(モノ)」ではありません。車の中で寂しく食べるお弁当ではなく、ゲストが五感を使って能勢の自然と一体になれるような、圧倒的な「非日常の食体験」であるべきです。

ここで私が仕掛けたのは、
「お腹を満たすための『機能価値(モノ)』」から、「能勢の自然と同化するための『情緒価値(コト)』」への、戦略的なシフトでした。

「能勢の豊かな大自然の中で、地元で採れた極上のお米を、最高の状態で
味わってもらうにはどうすればいいか?」

導き出した答えは、極めてシンプルで、かつ強力なものでした。

「注文を受けてから、目の前で結ぶ、アツアツのおむすび」

炊き立てのお米の香り、海苔のパリッとした音、職人の手つき。
そのすべてが、ゲストが求めていた「里山体験」というコト消費を満たす
ピースになります。

カチューシャを頭につけてパークを歩くことと、炊きたてのおむすびを里山の空気の中で頬張ること。
やっていることは違えど、本質は全く同じです。どちらも「その場所にいる自分を、五感でフルに楽しむための体験のスイッチ」なのです。

モノを売るのではない。ゲストが「今、ここでしか味わえない感情」に投資したくなる舞台を整えること。これこそが、テーマパークのDNAから導き出した「里山コト消費マーケティング」の正体でした。

のちに道の駅の大ヒット名物となり、客単価を劇的に押し上げることになる「のせむすび」が誕生した瞬間でした。

しかし、この「目の前で結ぶアツアツのおむすび」という理想は、スピードと効率を重視してきた道の駅の現場に、これまでにない「大混乱」を巻き起こすことになります——。

マガジンにまとめていますので、よろしくお願いします。

(第4話へ続く)


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