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世界の裂け目が開く時 ー第12話 世界の狭間が開く時【創作大賞2026】|ファンタジー部門 

前回の話はこちらから



あの時から落ち着き、そして神崎の話になった。

彼の話によると、彼の異変はデイヴィットというアメリカの大統領と会話したことで起きた事だったらしい。

あの時ビデオ会議で朔が「認識」の力でペンタゴンの記憶を場に広げた瞬間。デイヴィットが涙を浮かべていたのは——単なる衝撃ではなく、何かが憑いたのだ。

……そして彼は今、ここでもアメリカの大統領をやっているそうなんだけど……

「彼は、日本侵略を考えているのだと。防衛省の機密捜査で分かった。其の後、風魔小太郎ふうまこたろうをはじめとする忍者集団に調べに入ってもらったところ真実だったようだ」

風魔小太郎、しれっと出てきているけど彼も復活していて仲間なんだって……。

忍者かあ。シュタタタタという音もするし、色々な所から出てくる意味不明なものだから、すごいなと思うけどね。

……私には分からないけど…。

でも凄いんだろうなとは思っている。

「……色々聞いている限り日本にも数多の将軍が再臨し、日本を楽しんでいるようじゃが……。秀吉の奴が大阪にいてだな……。今は亡き師匠の事を考えておった」

悠真が、静かに聞いた。

「それって、第六天魔王だいろくてんまおうとも言われている織田信長の事でしょうか?」

家康は、それに頷く。

左様さよう、奴は大魔王じゃからな。優しきものには優しいが、怖いものに関してはとことん恐ろしいものじゃ……。これも一種の戦略だったうえでに、面白いので許しておるが」

……それもまたいい事だと思う。

聞いたところ、今日全国の将軍がここに集結するんだって。

何故かは分からない、けど家康の勘は当たるとみんな龍にまたがってやってくるそう……。

……大量に軍隊を引き連れて。まるで戦の準備を始めているみたいに……。

でも、軍隊は全員新幹線に乗ってくるんだって。

現代の参勤交代?は安くて早くていいの~って誰かが言ってたそうだけど。

よくわからない……。

「ねえ……それで、あのクソに電話しなくていいの?」

凪が、会話に挟まってくる。完全にデイヴィットの事をクソ呼ばわりだ。

「仮にだが、あいつもアメリカ大統領だぞ…。それをそういう呼び方はだな」

悠真が諌めかけた。だが凪の目は、父親を見つめていた。その瞳には——怒りと、切実な何かが混在していた。

「……でもお父さんを変えたあいつは消えなきゃいけない

声は低かった。だが確実に——父を奪った相手への、少女の怒りが籠もっていた。

「こら、凪……落ち着きなさい。今からするから」

悠真が、娘に手を置いた。その手は、震えていた。

「ふーん……」

凪は、それ以上は言わなかった。

だが——彼女の握られた拳は、ずっと白かった。



ルーカスは家康と話していて。

「あの神殿も妙に動いているが……そろそろ決戦というような気はするが…。敵が出てきたらどうするつもりだ?」

「敵が出てきたらか……。その時は儂に策がある」

家康の声は、静かだった。だが確実に——何かを抱えている響きがある。

「歪みが最大限となっている今、お主には力が覚醒しつつある…。それを十分活かすんじゃよ」

「エロ狸帰ってきたんじゃの」

「家康にまで言われると儂はショックじゃ」

幻獣狸の声が、どこからか響いた。

麒麟はいう。

「これに懲りたら、もうそういう事は辞めなさいよ」

「…麒麟お主は、誰なんじゃよ」

「誰なんでしょうね?」

幻獣狸は首を傾げた。麒麟は相変わらず、静かに目を逸らしていた。

「……まあ良いわしらも準備しとくか」

「そうですね。それでは少しお暇します。すぐ戻ってきますけど」

そう言って幻獣達は——静かに、消えていった。

江戸城の空が、また一つ静寂を取り戻した。

そして——

悠真は決心がついたように、スマホを取り出し電話番号を打ち込む。

繋がった先はホワイトハウス……。

しかし……、

聞こえてきたのは爆発音ばくはつおんだった。

凪はいう。

「死んだな」

ルーカスが、呆れたように言った。

「……あっけないな」

ルーミャが、静かにつぶやいた。

「……即落ち2コマとはこのことなんだよね?ルーカス」

「メタい話をするな……。皆もアイツの事誰だっけ?となってるからいい」

ルーカスの返答は、完全に投げている。

「そっか」

……私は、それで納得した。

世界が——ゆがみ、混沌へと傾いていく中で——

こうしたつかめない会話が、ここにはあった。



……そして

「……消し損ねた子……。そこにいたのね」

と声がする。

その瞬間——

ギシギシギシ。

私の中で、何かが壊れた。

憎むべき相手の声だ。

あの時、私を消そうとした存在。

あの時、私の世界を奪った存在。

その声が——ここに、在った。

「……ふふふ、面白いわね。こんな世界にこれから滅ぶ世界に流れ着くだなんて」

「愚かだな……。死にぞこないの娘」

ギシギシギシギシ——

壊れていく音。

彼女の理性が壊れていく音。

身体の何かが壊れていく音。

祈りの力が——奔流ほんりゅうとなり、制御できない。

ルーミャ!!

ルーカスが叫んだ。

だが——遅かった。

ドォォォォォォォン——

江戸城えどじょうが、爆発した。

「ざこだったわ……」

……誰も傷ついていなかった。

正確には、爆発していた感じ……。

怒りのエネルギーを空に逃がしてみたら煙幕みたいな爆発が起きただけなんだけど……

「……やっぱり貴方達か」

敵の声が、静かに響いた。

「ふふふ、僕たちの事を覚えてくれてただなんて最高じゃないか」

「……世界を何度も私のルーカスが破壊してたのはあれだったけど。だいぶ苦戦したんじゃない?」

敵は、それに答えなかった。

「「……」」

無言の双子は、ただ立っていた。

私はルーカスを自然と近付く。

ルーカスは自然と私の事を抱擁してくれる。

温かい……

だが——ルーカスの顔はほてっていた。

それを見た家康と悠真は——呆然ぼうぜんとしており、凪は笑顔だった。

「……はあ、あの御方を降臨させこの世界を我が物に…」

「出来ると思うたか?」

それに応えたのは家康だった。

いつの間にか——家康は鎧をまとっていた。

戦闘態勢だ。

「この国は、数千年形を変え繁栄をつづけた悠久の国…。世界を滅ぼす、滅ぼすというのは……、億劫おっくうじゃぞ

家康の声は、静かだった。

だが確実に——数百年の歴史を背負った、重みがあった。

「「……貴様が何を言っている?」」

無言の双子が、同時に言った。

「…何をって、こんな低能な者がいう台詞ではない…」

悠真が、静かに立ち上がった。

「……おっしゃる通りですな……。世界が滅びても、なお我等は生きている

私は何故か、嬉しかった。

だがあの双子は——いぶかしむ。

「そうかそうか…なら、こいつを召喚する。いでよ!!!世界が恐れしローマ皇帝よ!!!」

「そして第六天魔王だいろくてんまおうよ!!」

無言の双子が、同時に叫んだ。

空が——裂けた。

……ピロン。

ローマ皇帝は、召喚に応じませんでした。

と告げる……。

「はっ???」

無言の双子が、困惑する。

「彼は今地球に出禁を喰らっていますので」

あの時の謎のAIボイス——麒麟の声が、静寂せいじゃくを裂いた。

「はあああ?」

敵の困惑した声が、響く。

それは——確実に、敵を揺さぶっていた。

召喚魔法が発動する……。

「ハハハ、我こそが第六天魔王だいろくてんまおう……織田信長だ……。じゃが、召喚に応じお主等に制裁を下そう

「はああ?制裁を食らわせるのは向こうだろ?」

無言の双子が、混乱する。

向こうでいざこざがあったようだ……。

私は何も知らない。

「……かりにでも儂がいた国じゃ……そこを滅ぼそうという小童こわっぱはわしが制裁を下してやろうぞ」

信長の声が、空を切り裂いた。

「流石は、魔王といわれる訳だな」

家康が、静かに言った。

「…その声は家康か……。お主と飲んでいる間にお主がいなくて退屈じゃった」

「……すまんのお…。こっちで楽しませてもらっていた」

「そうか…その話はまた後でする」

そして通信が切れた……。

「……」

空間には無言が続く。

最終決戦?

はこうして幕を閉じたのであった??

そんなわけはなかった。

信長がこっちに転移してきた。

「向こうの技術を借りた……。……お主がルーミャか…」

と彼は私を見た……。

じーっと見つめられる……。

信長の体つきは若者状態だ。

「流石は、……」

ルーカスが何かを言いかけた。

「もしかしてこの信長さん?変態?

凪が、ズバリと言った。

「み惚れただけじゃ何か文句はあるか??」

信長の返答は、完全に開き直っていた。

「「ありません」」

ルーカスと凪が、同時に降参した。


……えっと…。

「……もしかしてですけど」

「なんじゃ?」

私は、静かに問いかけた。

「もしかして、私が元いた世界の世界の意思様ですか?」

……信長は笑顔だった。

だが——その笑顔は、何か違う。

「あの小さき世界か……確かに儂が試練の一環でやった。じゃが護れなかった」

……世界の意思がここにいた。

普通にナンデヤネンと思った。

でも、心がそうだと訴えている。

あの世界の意思は、いつもそうだった。

試練を与えながらも——確実に、護ろうとしていた。

「…ありがとうございます。信長さん…」

「カカカ、そう娘に言われると嬉しいのお」

信長の笑顔は、満足げだった。

「…………でだ」

家康が止めに入る。

「ルーカスよ、信長に挨拶はせぬのか?」

ルーカスは頷き信長をじっと見つめる。

貴方の子を私に下さい

……信長はじっとルーカスを見つめる。

認められなかったら終わっちゃうのかな?

でもその考えは一蹴された。

「……汝もそうか……。あの御方のか…。良い

信長の返答は——確実に、祝福だった。



通信がふいに繋がる。

「……はあはあはあ」

敵の声だった。意気消沈だった。

「……僕たちの計画は元から無理だったのか…」

「母親の力を借りるしかありませんね……」

不意に空気が振動する。

私達が動こうとしても全く動きもしない。

「「暗黒あんこくよりくだりし母よ……混沌こんとんの子よ……此度このたび召喚しょうかんす……いにしえ絶望ぜつぼうよ……此の世界によみがえれ……」」

両者が、同時に禁忌の言葉を紡ぐ。

それは——この世界の理を歪める、呪詛じゅそだった。

空間は裂けなかった。

其の後聞こえた音はグシャりという音だった。

「生贄って事かな?」

凪が呟いた。

「愚かじゃな……」

信長が、静かに言った。

だけどルーカスはいぶかしむ。

「……普通そういうのって、いえあいえあとかいうもんじゃ」

「それは、クトゥルフの見過ぎだぞ」

悠真が、呆れたように言った。

「そういうものか?」

「……お父さんこんな時にそんな話」

凪が、父に言った。

ミシミシミシという音共に……

…そして空に確かに裂け目が開き神殿が紫色に輝く。

轟音ごうおんと共に、何かが召喚されようとしていた…。

世界の狭間が開く時、世界は終わりのカウントダウン。

世界の狭間が開く時、世界は続くのか。

それは——誰にも分からない。

だが確実に、ここに集った者達は——

その答えを、求めていた。



第12話了

第13話 それだけは、消えなかった

本作はマガジンでまとめて読めます。
👉 全話はこちら。


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