ミサイル不足で銀の需要が増える? 軍需拡大から考える「シルバーの未来」
最近、銀について調べていて、少し気になることがありました。
それは、「これから世界的な軍需拡大が進めば、銀の需要も増えるのではないか?」ということです。
銀というと、金と同じ貴金属として考えられることが多いですが、金にはない大きな決定的な特徴があります。それは、工業用として大量に消費される金属だという点です。
太陽光発電、電子機器、電気・電子部品など、現代社会のさまざまな場所で銀が使われており、その用途には当然、軍事分野も含まれます。
米軍のミサイル不足と生産拡大
2026年、米軍のミサイル在庫が大きく減少しているという報道が相次いでいます。
ロイターによると、イランとの5カ月にわたる紛争によって、米軍は高精度の長距離ミサイルの在庫の大半を使い果たしたとされています。
また、パトリオット(Patriot)やTHAADといったミサイル防衛システムも大量に使用され、在庫の減少が深刻な問題となっています。
当然ながら、消費したミサイルは補充しなければなりません。
実際、米国ではミサイルの生産能力を大幅に引き上げる動きが始まっています。
2026年8月には、パトリオットの生産能力を年間約600発から2,000発へ、THAADを年間約96発から400発へ引き上げる計画が報じられました。
さらにトマホーク(Tomahawk)についても、生産能力を年間60発から1,000発へ引き上げる動きがあります。
つまり、これから数年間は、「ミサイルを使う時代」から「使ったミサイルを大量に作り直す時代」に入る可能性があります。
ミサイルにはどれくらい銀が使われているのか?
ここが今回、最も興味深いところでした。
ネット上では、「トマホーク1発に約500オンスの銀が使われている」という情報を見かけることがあります。500トロイオンスなら約15.5kgです。
もし本当にミサイル1発に15kgもの銀が使われるなら、軍需拡大は銀需要に凄まじい影響を与えそうです。
ところが、銀市場を分析するCPMグループによると、この数字は大きく誤解されている可能性があります。
CPMグループは、トマホーク1発に使われる銀の量を約10~15トロイオンスと推定しています。これは約311~467gです。
つまり、15kgではなく、数百グラム程度ということになります。銀は主に、はんだや点火用バッテリーなどに使われているとされています。
もちろん、軍事装備の具体的な材料使用量には機密情報も含まれるため、これはあくまで推定値です。
1発数百グラムなら、大した影響はないのか?
ここで、「ミサイル1発に400g程度なら、銀市場への影響など微小ではないか?」と思うかもしれません。
確かに、ミサイル単体だけを見ればその通りかもしれません。
仮に1発400gとして、1万発のミサイルを生産したとしても、
400g × 10,000発 = 4トン
となり、世界の銀市場全体から見ればそれほど大きな数字ではありません。
しかし、問題はミサイルだけではありません。
現代の兵器は、昔の兵器とは異なります。
ミサイル、レーダー、衛星、通信機器、センサー、ドローン、電子戦装備など、非常に多くの電子機器が組み込まれています。
そして銀は、金属の中で最も電気抵抗が低く、電気をよく通す特性を持っています。そのため、電子部品や接点、はんだなど、さまざまな用途で利用されています。
つまり、
「ミサイルの増産 = 銀の大量消費」
と単純に考えるより、
「軍事装備全体の電子化・高度化 = 銀を使用する電子機器の増加」
と捉えたほうが実態に近いはずです。
米国だけの問題ではない
もう一つ重要なのが、これが米国だけの問題にとどまらない点です。
ロシアとウクライナの戦争、中東情勢、中国をめぐる安全保障環境など、世界各地で軍事費の増加や兵器の増産が進んでいます。
米国も同盟国への供給を含めて、ミサイル生産能力の拡大を急いでいます。
例えばCSIS(戦略国際問題研究所)によると、米海軍は2027年度予算でトマホークを785発要求しており、現在の生産計画では新たなミサイルが米軍の在庫に入り始めるのは2030年3月になる見込みです。
つまり、在庫を元に戻すだけでも数年単位の時間が必要なのです。
これは銀需要を考える上でも、意外と見落とせないポイントです。
一時的な特需ではなく、数年にわたる兵器の生産・補充需要につながる可能性があるからです。
銀にとって軍需は「主役」ではない
ただし、ここで注意したいことがあります。
私は、軍需だけで銀価格が大幅に上昇すると考えているわけではありません。
銀の需要を考える上では、
太陽光発電
電子機器
電力インフラ
自動車
半導体関連
AI・データセンター
通信機器
など、巨大な民間需要のほうがはるかに重要でしょう。
軍需は、あくまで銀需要を押し上げる追加材料の一つだと考えています。
しかし、こうした需要がいくつも重なってくると話は変わります。
太陽光発電でも銀を使う。
電子機器でも銀を使う。
電力インフラでも銀を使う。
そして世界的な軍拡によって、ミサイルやレーダー、衛星、通信機器などの需要も増える。
こうして考えると、銀は単なる「金の安い代用品」ではなく、現代社会そのものを支える工業金属なのだと改めて感じます。
金と銀:同じ貴金属でも異なる性格
金は、基本的には「価値を保存するための金属」という性格が強いといえます。
一方、銀には、
「価値を保存する金属」+「実際に消費される工業材料」
という二つの顔があります。
さらに銀は工業製品に少量ずつ使用されるため、金ほど効率的に回収・リサイクルされにくいと言われてます。
この違いが、将来的な銀の需給を考える上で重要なのではないでしょうか。
もちろん、銀価格が必ず上昇するとは限りません。(個人的には値上がりすると思ってる)
景気が悪化すれば工業需要が落ち込む可能性もありますし、銀の使用量を減らす代替技術の開発が進む可能性もあります。
それでも、
「世界的な軍拡」
という、これまであまり銀投資と結びつけて考えてこなかった要素が、今後の銀需給を占う一つの視点になるのは確かです。
ミサイル1発に使われる銀の量は、思っていたほど多くありませんでした。
しかし、世界中で何万発、何十万発という兵器が作られ、その周辺に大量の電子機器やセンサー、通信設備が必要になるとしたら…
銀の需要を考えるとき、「ミサイル1発に何グラム」というミクロな視点だけでなく、軍需産業全体がどれほどの銀を必要とするのかというマクロな視点も必要なのかもしれません。
私は今後も、金だけでなく銀の需給動向に注目していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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