柳行李を編む、その手仕事を見つめて
ワークショップから見えてきた、
ものづくりの本当の価値
展示会で完成した作品を見るだけでは、分からないことがあります。
作品がどのように生まれるのか。職人はどんなことを考えながら手を動かしているのか。その過程を知ることで、作品の見え方は大きく変わります。
先日、山梨県の「かごとかごまわり tapiiri」で開催された「カトウカナル展2026」の期間中、KORI ANRI JAPANの加藤かなるさんによる柳行李づくりのワークショップを見学する機会がありました。
今回のワークショップは、一日をかけて柳行李づくりを学ぶ内容です。参加者は実際に柳に触れながら編み方を学び、加藤さんは一つひとつの工程を丁寧に説明しながら指導されていました。
私は作品を制作する立場ではありませんでしたが、その様子を間近で見学し、加藤さんや参加者の皆さんのお話を伺うことで、作品だけでは見えてこなかった多くの発見がありました。

「かご編み」と「柳行李」は同じではない
これまで私は、「柳行李」も「かご編み」の一種だと思っていました。
もちろん共通する技法もありますが、実際の制作工程を見ていると、その違いが少しずつ見えてきます。
柳行李は、長く使い続ける生活道具として作られるため、美しい見た目だけではなく、高い耐久性も求められます。
一本一本の柳をどの角度で曲げるのか。
どの順番で編むのか。
どのくらいの力で締めるのか。
そのわずかな違いが、完成した形や強度に大きく影響します。
完成品を見るだけでは気付かなかった繊細な技術が、一つひとつの工程に積み重ねられていました。

長い年月の中で受け継がれてきた技術
ワークショップでは、加藤さんが迷うことなく自然な手つきで柳を編み進めていきます。
一方で、参加者の皆さんは一本の柳を曲げるだけでも慎重に手を動かし、力加減や角度を確かめながら少しずつ形を作っていました。
その様子を見ていると、職人の技術とは単に「早く作れること」ではなく、素材の性質を理解し、長年の経験を積み重ねてきたからこそ身につくものなのだと感じます。
柳は一本一本、太さや硬さ、しなやかさが異なります。
自然素材だからこそ、同じように編めるわけではありません。
素材をよく観察し、その特徴に合わせて手を動かしていく。
そこには、人と自然が向き合いながら受け継いできた知恵がありました。
手仕事の価値は、完成品だけではない
現代では、もっと丈夫で安価な素材が数多くあります。
それでも柳行李が今なお作り続けられている理由は、機能だけでは説明できません。
一本一本の柳を選び、編み、形を整えながら少しずつ完成へ近づいていく。
その過程には、素材と向き合う時間や、職人の経験、そして地域に受け継がれてきた文化が込められています。
作品には、美しさと機能性の両方が備わっています。
しかし、その価値は完成品を見るだけでは伝わりません。
制作の過程を知ることで、一つひとつの編み目や形にも意味があることに気付かされました。

「知る」ことで、作品の見え方は変わる
今回のワークショップを見学して感じたのは、ものづくりの魅力は完成した作品だけではないということです。
制作の様子を知り、職人の考え方に触れ、参加者が少しずつ作品を形にしていく姿を見ることで、柳行李という工芸をこれまで以上に身近に感じることができました。
展示会では作品の美しさに目を奪われます。
そしてワークショップでは、その美しさがどのように生まれるのかを知ることができます。
この二つをあわせて体験することで、柳行李という工芸の魅力を、より深く感じられるのではないでしょうか。

豊岡BASEより
豊岡BASEでは、地域で受け継がれてきたクラフトを紹介するだけではなく、その背景にある人や技術、地域の文化もあわせて発信しています。
作品を見ること、作り手を知ること、そして制作の過程に触れること。
その積み重ねが、地域のものづくりをより身近に感じるきっかけになると私たちは考えています。
今回のワークショップを通して、私自身も改めて「手仕事の価値とは何か」を考える機会となりました。
これからも豊岡BASEでは、作品だけでは伝えきれない、ものづくりの物語を届けていきたいと思います。
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