【第一話】 んちゅう人、食べ比べてみました。
1〜2ヶ月かけて「んちゅう人」というキャラクターが練り上がっていった。
私が適当に描いたイラストにフォロワーが名前をつけてくれたり設定を追加してくれたり、姿も変遷をたどりムダのないシンプルなデザインに落ち着いた。
だけど、彼ら「んちゅう人たち」は、おそらくまだ進化の途上にある。


そんなことを考えている時に、フォロワーのくいたろうさんから勧められた企画に運命を感じた。
『宇宙人100人、食べ比べてみました』
(※初代王天君さんの企画)
んちゅう人と宇宙人は似て非なるものかどうかもわからない。少なくとも私たちが生きているこの地球にはいない。もうこれは宇宙人でいいんじゃないかと思う。違うと言うのなら、この企画に運命を感じた私の感性が間違っているということになる。ごめんなさい。
ただ、とにかく書いてみようと思う。正解がわからないけど、自由に書いてみたい。
んちゅう人、食べ比べてみました。
私は今、んちゅうにいる。
「それはどこか」と聞かれると回答に困るのだが、地球から非常に遠いということだけは確かである。なぜならスマホが圏外だからだ。かつて富士山に登った時はけっこう繋がったので、んちゅうはそれ以上に遠いことがわかる。
ここには多種多様な生命体と思しき存在が無数にいる。そして、その多くが我らが地球でも見かけたような生き物に似ている気がする。
まずはあそこにいる生命体を見てほしい。

まるでタコだ。足の数は4本で吸盤もなく2足で直立歩行しているがタコに見える。彼らは“タコんちゅ”と呼ばれている。
そして、その横にいる生命体はイカに見える。笠のような物を被っているし、何より白い。ただ、足の数は4本とタコのような生き物と同じであることはイカとは違う点だ。こちらは“イカんちゅ”という。
タコんちゅもイカんちゅも、周囲をざっと見渡すだけでも数多く存在している。希少種属というわけではない。今日はこの2体のんちゅう人を食べ比べてみることにする。なお、本記事は食べ比べをテーマにしているため捕獲の経緯については省略する。
捕獲したタコんちゅとイカんちゅを捌いて、まずは刺身で食べてみることにした。
タコんちゅの腕を薄切りにして醤油で食す。
包丁を入れる時にスムーズにやらなければネチネチと小言を漏らすので注意。「あの時もそうだったけど…」と過去のミスも持ち出してくる陰湿さがある。しかしそのしつこさからは想像できないほど味はすっきりして美味。歯応えもいい。どうしても小言が気になる人はワサビを乗せてやるとツーンときて黙るのでその隙に食べるとよい。なお、締めてから少しでも時間が経ったなら「ずっと言おうと思ってたんだけどさァ…言いたいことわかるゥ?」といつまでも問いかけてくるほどネチっこさが増すので、生では食べられたものではない。その場合、軽く湯がいてやるとスッキリするうえに甘みが増す。

※一部生成AI作画
続いてイカんちゅを。
イカんちゅを捌くときはコツがいる。今から捌かれると理解したイカんちゅは高圧的な態度を取ることが多い。その場合は頭の笠を外してやるとおとなしくなるのでおすすめ。
イカんちゅは笠と胴を開いて細切りにして醤油で食すことが好まれる。タコんちゅほどの弾力はないが、シコシコとした歯応えで噛めば噛むほど美味い。研究によるとこのうま味は「他人の不幸」と同程度らしい。つまり、どれくらい美味いかは食べた者の性格に左右されるということ。
醤油にワサビを溶かすのもいいが、イカんちゅにとっては刺激が強すぎるようだ。静かにしているからワサビはあまり入れないでほしいと懇願してくる。その申し出を無視してワサビを入れて食べるイカんちゅ刺しは悲しみのぶん味が複雑になり深みが増す。ごめんね。でもおいしいよ。

※一部生成AI作画
タコんちゅとイカんちゅの刺身を食べ比べてみて、個人的にはイカんちゅの方が好みだった。ねっとりとしながら程よい弾力は食感として単純に心地良いし何より美味い。「ということは他人の不幸がうまいと感じるタイプの人間なんだね」と指摘してきたタコんちゅとイカんちゅを次の食材にするために捕獲した。他意はない。ムカついてなどいるものか。
次はタコんちゅとイカんちゅを揚げて食べ比べてみよう。
タコんちゅは腕を唐揚げに。
一口大に切った腕に下味をつけて片栗粉をまぶしカリッとあげる。お好みでホポチョを絞ってもいい。揚げ油はデュポ油を用いるとしつこくないので、たくさん食べても胃もたれしない。デュポ油はんちゅう人を驚かせてしゃっくりを止めた時にだけ抽出される希少な油なので大切に使うこと。
タコんちゅの唐揚げ 実食
食欲をそそるにおいがたまらない。口臭を嗅がせてくるような吐息とともに湯気が出ている。
まずはそのままひとつを食す。熱くてホフホフしてしまうのは、んちゅうにおいても変わらない。相変わらずの弾力だが、唐揚げにすることで味わいが増す。いつまでも噛んでいたい。
ホポチョを絞ってみる。弾ける皮と果実から爽やかな香りとともに果汁が迸り食欲を増幅させる。口に入れた瞬間に感じる酸味が揚げ物の重さをまるでなくしてくれる。意外に思うかもしれないが、地球で食べたタコの唐揚げに似ているかもしれない。

吐息風の湯気が食欲をそそる。
※一部生成AI作画
イカんちゅはイカリングにしよう。
イカんちゅの胴を輪切りにして、小麦粉・卵・ザブ粉の順にくぐらせる。こちらも揚げ油にデュポ油を使用。揚げ始めて23秒ちょうどでデュポ油から取り出してやると最高の状態で食べられるので、しっかり数えること。数えている途中でイカんちゅが「8…4…16…12…」などと呟き、こちらのカウントを邪魔してくるので要注意。タコんちゅの唐揚げ同様にホポチョを絞るのもいいが、ゲルバヘをかけて食べるのもいい。
イカんちゅリング 実食
いかんちゅリングの輪っかの向こうには未来が見える。それも幸せな未来が。
そんな未来を感じながらホポチョを搾ったイカんちゅリングを噛み締めると、サクッとした感触とともに冬の朝の水たまりに張っている氷を踏みしだく子供時代のワクワクがほのかに蘇る。だが、飲み込む際に「でも、その時間はもう二度と戻ってこないよ」と言い残すので後味はいまいち。

小皿に入っているのがゲルバヘ。
※一部生成AI作画
タコんちゅとイカんちゅを揚げて食べ比べてみた結果、私としては圧倒的にタコんちゅの唐揚げの方が美味かった。タコんちゅの身が淡白な味わいである分、調理した者が意図した通りの味付けを演出することができる。
反対にイカんちゅは見た目とは裏腹にわりとクセがあり、刺身でもフライでも味に不確定な要素があったことが難点だった。ただし、ジャイアントスイングしながら天日干しをして炙って食べるとクセが抜けてシンプルに美味くなり、七味マヨがほしくなる味に変わる。
「ご馳走様でした」
私は手を合わせてつぶやいた。
タコんちゅもイカんちゅも私1人で食べ切れるような量ではなかったけど、んちゅうにはナメ郎というナメクジのような下種な生命体がいて腐肉を綺麗に食べてくれるので、残ったタコんちゅとイカんちゅはナメ郎に処理してもらうことにした。エコだろう。

テラスにてナメ郎どもの下品な咀嚼音を聴きながら、私がドゥルゲリョプス産のカプォ・チョ・ネヘヘを飲んでいると、「どうだった?」と元通りの姿に戻ったタコんちゅとイカんちゅが聞いてきた。かつての私なら驚いていただろう。しかし、これが“んちゅう”なのだ。
「美味かったよ。また食べたい」
私がそう告げると、タコんちゅとイカんちゅはお互いを見て満足そうに笑った。
テラスのテーブルには、3つのカップから湯気が揺蕩っている。私と彼らのカプォ・チョ・ネヘヘの湯気が。

続く
▼素敵な企画、ありがとうございます!
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