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本を読む人は意外と減っていないのに、本屋が潰れるのはなぜか

情報のアンテナを変えると、これまで見えていなかったものが見えるようになってくる。それはこれまで存在しなかったものが出てくるわけじゃなく、単に自分に見えていなかっただけ。

こんにちは。本屋を始めたい夫婦の夫です。


引き寄せの法則とか、思考は現実化するとか、別にスピリチュアルなものを信じているわけじゃないんだけど、アンテナが変わると見えるものも変わるというのを日々実感。

ぼんやり思っていた「本屋をやりたい」を口に出してみてまだ3、4週間しか経っていない。

でも、口に出したその日に本屋開業の勉強会が開催されることを知り、参加してみたらイメージが固まってきた(昨日、2回目の勉強会に参加してきた)。

最初はノリ気じゃなかった妻がなんと、書店員として働くことになった。

「本屋をやりたい」と口に出していなかったら起きてなかった変化が次々と起きている。

今日も自分のアンテナが変わったことで起こった変化というか、見つけた情報がありました。

それがこちら。

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/reduced_returns/20260421_report.html

経済産業省の文化創造産業課が2026年4月に公表した「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」というレポート。

一目見てつまらないタイトル。「本屋をやりたい」と発言して、自分のアンテナがそっちに向いていなければ、絶対見逃しちゃうよね。このレポートを見るまで、経済産業省が「書店振興プロジェクトチーム」なんてものを立ち上げていることも知らなかった。

このレポートには今の出版業界の課題と、官民連携で解決したいことが書かれていて、いくつかは僕が本屋をやる時にも影響してくることなので、気づきを残しておきます。

本を読む人、意外と減ってないのでは?

「出版不況」という言葉はもちろん聞いたことがあるし認識もしている。僕も本屋をやるならこの状況に一石投じてやりたい、くらいのことは思っている。

じゃあ実際、出版業界はどの程度縮んでいるのか?経産省のデータがこちら。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.2)

ああ、縮んでいるな。これはきついな。というのは一目でわかる。

が、僕は逆にちょっと希望を持った。

というのも、明らかに大きく減っているのは「雑誌販売額」
「書籍販売額」は減ってはいるけど、急減、激減、というほどではない。電子、雑誌、書籍を合わせたら2018年頃に底を打って上昇に転じている。

広告代理店でも働いた経験がある身として、業界として「絶望的」というほどの状況じゃないと感じる。

ここで疑問は「マンガはどこに含まれている?」という部分。なぜなら、電子の売上の大半はマンガだと思うし、雑誌の急減はマンガをアプリで読むようになったことが大きいと思うから(実際、僕も高校生の頃はコンビニでマガジンを買っていたけど、今ではマガポケになっている)。

そして僕が重視したいのは、マンガや雑誌を除いた、実用書、歴史・科学書、小説やエッセイなどの書籍(本屋におくのもそれらがメイン)。そこがどうなっているのか知りたい。

このデータが「出版指標のデータをもとに経済産業省にて作成」となっていたので、そちらを検索。するとこんなデータを見つけた。

出版科学研究所「日本の出版販売額(※取次ルート/出典『出版指標 年報 2025年版』)」

金額じゃなくてパーセンテージだけど、この2つのデータから紙の書籍(雑誌でもコミックでもないので、実用書や小説など)の状況がわかる。

1つ目のデータから、2014年の出版物全体の売り上げは1兆7208億円、2024年は1兆5716億円だということがわかる。
2つ目のデータから紙の書籍はそれぞれ43.8%、37.8%だから。2014年の紙の書籍の売上は7537億円、2024年は5940億円と、1つ目のデータとほぼほぼ一致するので、1つ目のデータの「書籍販売額」にはコミックが含まれていないことがわかる。

ということは1つ目のデータは紙のコミックと紙の雑誌をまとめて雑誌販売額としている。なんでだ。単行本コミックは書籍に含まれていると思って計算し直した自分がバカみたいじゃないか。

と、結果的に意味のない計算を行った結果、僕がやりたい本屋で主に取り扱う紙の書籍については、10年で売上規模が20%くらい減少していることがわかる。

うん。厳しい状況なのは間違いない。
でも絶望的か?と言われると、そうでもない。

このデータは「取次ルート」となっているが、最近は少しずつ直取引や従来と違った形の取次も登場してきている。おそらくそうした経路はマンガや雑誌ではなく書籍だろうから、書籍の実態はもうちょっと底上げされると思う。

あと、中古市場もある。Amazonで古本を買う人は10年前に比べて増えているだろうし、バリューブックスの売上は2014年から10年で4倍になっている。

  • 取次ルートの書籍は10年で20%減

  • でも取次以外の仕入れルートも出てきている

  • 独立系書店などは大手取次以外を使うケースもある
    (昨日勉強会に参加したBOOK'N BOOTHさんは3割が取次以外の仕入れと言っていた)

  • 市場規模は小さいだろうけど、ZINEやシェア本棚のような市場もある

  • Amazon、バリューブックス、メルカリ等で中古市場は増えてそう
    (良い市場データが見つからなかった)

こうした状況を考えると、人が本を読まなくなっているわけではない、読まなくなっているとしても想像よりかなり緩やかな減少といえそう。

人が本を読まなくなっているなら、どうしようもない。

でも人が本を読んでいるなら、希望はある。

Amazonではなく、うちの本屋で買う理由
中古ではなく、うちの本屋で新品を買う理由

そうしたものを見つけていけば、まだまだやっていける業界なんじゃないか(場所、空間の提供やイベントなど、本屋で買う理由は色々用意できる)。
ざっくりしたデータを一目見ただけの浅い分析だけど、そんな気がする。

とにかく返品が課題

とはいえ業界全体で見れば沈んでいるのは確か。特に雑誌はかなり厳しい。

僕は電子書籍はあんまり流行らないと思っている派だけど、それは実用書や小説に限った話。マンガや雑誌は僕自身、電子でばっかり読んでる。

そして雑誌が縮小するのは、本屋にとってかなり痛手だと思う。

雑誌を本屋で買っていた時代、とりあえず毎週、毎月、目当ての雑誌を買うために本屋を訪れていた。そのついでに1、2冊他の本も買っていく、というのが本屋にとって大事なお客さんだと思う(自社で集客することなく勝手に来てくれる究極のリピーター)。

でも雑誌が電子化してしまうと、本屋にくる理由がなくなってしまう。

街の本屋が潰れているのは、本を読む人が減ったからではなく、究極のリピーター製造マシーンである雑誌が縮小して、本屋に人が来なくなった、本屋にくる別の理由を提示できなかった要因ではないか。

そんなふうに思う。

マーケティング的には雑誌はめちゃくちゃありがたい。コンテンツ作成もプロモーションも出版社がしてくれて、毎週や毎月といった高頻度でお客さんを店に呼び込んでくれるのだから。

それがなくなると、本屋は自分でお客さんに「本屋にくる理由」を提示しないといけなくなる。それがないなら、Amazonでいい。
ここが難しい。僕が本屋をやる時はこの部分をしっかり考えておきたい。

話がずれてきたので、「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」に戻る。

ここでは出版業界の課題として「返品」が何度も挙げられる。

本は「委託販売」なので、売れ残ったものは返品することができる。これは在庫リスクを軽減するには良い仕組みだけど、この仕組みが今、出版業界全体を圧迫している。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.4)

2024年の返品率は書籍で33.2%、雑誌で43.8%

これはひどい。というか、この状態でよく業界が保ってこれたな…と不思議に思うレベル。僕は限界費用がかからないオンラインサービスのプロモーションに関わった経験が多いけど、それでもプロモーションの結果、返金率4割だったら、だいぶ計画が狂うし、広告費の投資判断もめちゃくちゃ難しくなる(返金前ROIと返金後ROIの差が大きすぎると、キャッシュフローの判断が難しくなる)。
それが「本」という様々なコストが発生するもので40%なんて、想像もしたくない。

グラフを見ると書籍は右肩下がり(それでも高いが…)だが、雑誌がひどいことになっている。

ま、これは仕方ない部分もあると思う。雑誌を紙で買う人からすれば、店に置かれたその日に必ず欲しいから本屋としては在庫切れになるリスクは避けたい(毎週ジャンプを買いに行っている本屋で、ある日ジャンプが売り切れていたら顧客体験として悪すぎる。最強リピーターを失うことにつながる)。

この課題について、報告書では以下のように書かれている。

高い返品率の要因として、 ①出版社・取次の配本が書店のニーズに合わない場合がある、②書店側は在庫リスクを負わないため、実際の販売可能数等を十分踏まえた発注を行うケイパビリティが不足している、など、需給のミスマッチが挙げられる。 
返品により、各ステークホルダーにおいて、過剰分の生産や在庫保管、廃棄、輸送等のコストが生じている。特に近年は輸送コスト、人件費等が上昇しており、返品率の低減が求められている。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.4)

本屋をやりたい側として「実際の販売可能数等を十分踏まえた発注を行うケイパビリティが不足している」という言葉は胸に刻んでおきたい。

要するに本屋側にちゃんと需要を把握して発注する能力、仕入れた分をしっかり捌く能力が不足しているということ。「売れなければ返品すれば良い」という構造が本屋側にこうした能力が不足する理由になっている。

普通の商売(買い切りで仕入れる)だと、売れないものは値下げしてでも売るし、ポップを工夫したり色々試行錯誤するが、本屋は勝手に値下げできないなどの縛りがあるのも悩ましい。値下げできなくても特典コンテンツを作ったり色々できる可能性はあるが、一冊一冊の粗利が小さく、返品すれば仕入れ代金は返ってくるのでそこまでする理由がないんだと思う。

書店では、委託制度や長年の配本慣行による商流が中心であった結果、自店の販売状況に基づく発注判断や在庫コントロールを行うための経験値・環境が十分に蓄積されにくい構造となっている。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.5)

取次が自動で選別した本を送る「配本」が業界慣習としてある。これにはいくつかメリットがあるけど、デメリットも多い。

メリットは本屋に並ぶ本に多様性が生まれること。ベストセラーばかりじゃない、大手出版社ばかりじゃない、いろんな本が並ぶのは、勝手に送りつけられるからというのも大きいと思う。普通の感覚で本屋が本を選ぶと、売れやすい本ばかりになるけど、配本によって「売れないけど一応、本屋に置かれる本」が生まれて、出版業界の多様性につながる。
毎日200冊出ると言われる新刊を本屋が全部把握して、タイトルなどの表面的な情報からベストな選書をする、というのはかなり難易度が高いから、その点でもメリットだと思う。

一方、指摘されているように店側に仕入れ判断を行う能力が身に付かず、高い返品率に繋がっていることや、どの本屋に行っても似たような選書になってしまうなどのデメリットもある。

僕が本屋をやるなら、返品問題に取り組みたい。

特典の企画やイベントの開催、オンライン販売。
本屋という形式、出版業界の慣習の中でもできることはあると思う(とはいえ本屋、出版業界の慣習や業界構造をわかっていないのでなんともいえないが、他業種の人間が入るなら、その強みは活かしたい)。

業界各社にとって過剰な返品に関するコスト負担は大きく、「必要なものが、必要な量で、必要な場所に、必要なタイミングで届く」という、出版流通のあるべきサプライチェーンを目指すべき。
それにより、業界全体の付加価値や粗利率の向上、収益の再分配といった構造の転換を実現していく必要がある。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.4)

報告書ではこのように書かれているが、トヨタ自動車の創業者、豊田喜一郎氏が90年近く前に提唱し、アップルが取り入れ世界最大の企業へと成長したことでビジネス上の正しさが証明されたジャストインタイムができていないということ。
ステークホルダーが多すぎて難しいのかもしれないけど、確かに改革が必要なことは確か。

DX化はこれから進む(多分)

現在、RFIDを使ったデータの取得、活用が進められているらしい。RFIDというのは極小の半導体チップで、ユニクロの商品タグとかに使われているやつ。ユニクロのレジは完全無人化されて、置いた瞬間にお会計が完了するけど、これは靴下の1つ1つにまでRFIDが埋め込まれているから。

RFIDを使えばレジ業務が簡単になるだけでなく、何がいつ売れたのかといったデータがリアルタイムに取得できる。
このRFIDを本にも埋め込む動きがあるらしい。

経済産業省においても、PubteX 社が実施する、書店における RFID の導入効果実証『デジタル技術を活用した書店の流通改革プロジェクト』を令和 6 年度補正 JLOX+補助金にて支援。全国 19 書店にて実証を実施した。在庫管理については、棚卸工数は平均 92.8%の削減、売場改善については、全書店が「売場づくりや商品配置の改善に役立つ」と事後アンケートにて回答、防犯対策については盗難被害数平均 78%削減などの効果が報告された。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.6)

国も助成金を出して進めているんだ、と思ったが驚いたのが「棚卸工数は平均 92.8%の削減」という部分。詳細な計算式がわからないけど、1時間かかっていた作業が4分で終わるようになったということ?めちゃくちゃイノベーションじゃん。

とはいえ、「導入拡大においては、書店における機器導入のコストや、特に中小出版社における RFID 貼付単価についての課題も指摘されており、官民連携で取り組む必要がある」と指摘されている。

数千ある出版社それぞれ、減ってきたとはいえ1万ある本屋のそれぞれに統一規格を持ち込むのは相当大変。それでもやらないといけないことではあると思うし、長期的なメリットは十分にあると思う。

実証で確認された効果を踏まえ、書店での RFID 活用を後押しするため、RFID 関連機器については、「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」の対象として位置づけ、導入に伴う費用負担の軽減を図っている。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.8)

国も補助金・助成金等で導入支援を進めている。

最近、自分が本屋を始める時、どんな補助金・助成金があるのか調べてみるけど、結構いろんなものがある。使えるものは使う。

個人でやる本屋にできることは小さいかもしれないけど、データ連携する機器を取り入れて業界全体の活性化につながるなら導入していきたい。
今の段階で業界構造をよくしたいとかまでは考えていないけど、WinWinになるなら、乗らない手はない。

本屋が元気だと国力が増す!?

という感じで、今回、偶然見つけた経済産業省のレポートを見てみましたが、一言でまとめると、出版業界は苦しいけど希望もある、に尽きると思う。
確かに業界全体は縮小しているように見えるけど、中古市場や直取引、ZINEなど新しい形の出版、こうしたものを含めると、まだまだ本を読んでいる人はいる。コンテンツが必要とされなくなったわけではない。(しっかり考えをまとめて書きたいけど、僕はAI時代に本の価値が再考されると思っている)

そしてこの業界は非効率な慣習がたくさん残っている。仕入れの返品率が4割とか、よくそれで成り立ってきたなと、これまで業界を支えてきた人に頭が上がらない。
返品される側の取次は配送コストも1.4倍になるわけだから、そりゃ苦しい。出版社も売れたと思ったら4割返ってくるんだから、そりゃ苦しい。本屋も勝手に配本されたものだから売り方もわからず、そりゃ苦しい。

でもそうしたものを効率化していけば、利益の伸び代はすごく大きいんじゃないかと思う。その中で自分ができることをしっかり考えていきたい。

前項であげた課題の解決が、業界全体に関わる横断的な課題である返品削減にもつながり、返品削減による余分なコスト削減、売れる商品の機会損失削減による業界全体での利益向上、書店の活性化、ひいては国力の増進につながっていく。

経済産業省 文化創造産業課「出版産業における返品削減研究会とりまとめ」(2026年4月,p.8)

経済産業省いわく、書店の活性化が国力の増進に繋がっていくらしい。それは言い過ぎだろうと思うけど、確かに文化・知識のインフラだから、出版業界が弱くなると国も弱くなるだろう。イーロン・マスクは子どもの頃に図書館の本を読破したというエピソードがあるけど、出版業界が弱く、大した本が置かれていなかったら、イーロン・マスクもあれほどの大物にはならなかったかもしれない。

出版社が良い本を作り、取次が全国に広げ、本屋が読者に届ける。
それを受け取った人の中から、大物が誕生して国が豊かになっていく。

そんな業界の一端を自分が担えると嬉しい。

P.S
今日から妻の実家の山陰地方に帰省。
大阪では出会わないタイプの本屋さんも見てこようと思います。

あと、本屋に併設するカフェでは地元の地ビールとかも扱いたいと思っているので、ちょっと探してみようと思います。

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