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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」10   張赫宙と金史良(その3)

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張赫宙と金史良──在日朝鮮人文学の嚆矢(その3)


3.金史良の生い立ち


 金史良キムサリャンは1914年3月3日、朝鮮平壌の裕福なキリスト教徒の家庭に生まれた。本名を金時昌キムシチャンと言った。一族は平壌では屈指の大地主で資産家だった。母もアメリカ系のミッションスクールを卒業していた兄金時明キムシミョンは京都帝国大学の学生だった。
金時昌は北京の大学を出てからアメリカへ留学したいと考えていた。
植民地期支配下の朝鮮とはいえ、9歳年上の張赫宙に較べて、知性と愛情に恵まれた裕福な家庭環境だったと言える。

 1930年、金史良は平壌高等普通学校の学生だった16歳のとき、反日抗議デモに参加して警察に追われ、更に翌31年、同盟休校事件の首謀者として諭旨退学処分を受ける。
そのため渡米を断念し兄の力を借りて、1933年18歳のときに日本に渡り旧制佐賀高等学校に入学した。

 出生から渡日までの過程を見ても張赫宙と金史良とでは印象が違う。張赫宙は経済的には恵まれた方だったが、良家に生まれ育った金史良に較べると不遇だった。

 金史良は佐賀高在学中、サッカー部と文芸部を兼部しており、校友会誌や東亜日報に日本語、朝鮮語で詩や童謡的なものを発表していて、かなり豊かな高校生活をおくっていたと言える。

 この頃、張赫宙は作家デビューしていた。

→ 「張赫宙と金史良」(その4)へつづく

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◆参考資料

*本文の著作権は、著者(林浩治さん)に、版権はけいこう舎にあります。

◆著者プロフィール

林浩治(はやし・こうじ)
文芸評論家。1956年埼玉県生まれ。元新日本文学会会員。
著書に『在日朝鮮人日本語文学論』(1991年、新幹社)、『戦後非日文学論』(1997年、同)、『まにまに』(2001年、新日本文学会出版部)。『在日朝鮮人文学 反定立の文学を越えて』(新幹社、2019年11月刊)は、図書新聞などメディアでとりあげられ好評を博す。
そのほか、論文多数。
2011年より続けている「愚銀のブログ」http://kghayashi.cocolog-nifty.com/blog/は宝の蔵!


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