地味な反復練習が、ゴルフをやさしくしてくれる
『実力は、静かな反復に宿る』
派手な一打の陰には、誰にも見られない小さな練習があります。
その静かな時間が、本番の自分をそっと支えてくれるのだと思います。
夕方の練習場、二つの音
夕方の練習場には、二種類の音が混ざっています。
ドライバーでボールをとらえた「バッキュン」という乾いた快音。
そして、短いアプローチがフェースに乗る「シュコン」という控えめな音。
多くの人が求めているのは、遠くまで響く前者の音です。
一方で、静かな音を何度も繰り返しているのは、長くゴルフを続けてきた人が多いように感じます。
ドライバーを振り、ボールが遠くへ飛んでいくのは、やはり気持ちがいいものです。
私も今でも、芯に当たって真っすぐ飛んだ日は、もう一球だけ、あと一球だけと打ちたくなります。
けれど、ふとラウンドのスコアカードを思い出すと、自分を苦しめていたのはドライバーではなく、グリーン周りの小さなミスだったりします。
分かっているのに、つい派手なクラブへ手が伸びてしまう。
そんな夜は、きっと私だけではないと思います。
「目立たない練習」が続かない気持ち
練習場でもドライバーばかり振ってしまうのは、とても自然なことです。
飛距離が伸びる喜びは分かりやすく、ナイスショットの音も気持ちいい。
SNSに映えるのも、やはり豪快なドライバーショットでしょう。
とくにゴルフを始めたばかりの頃は、アプローチやパットの練習を退屈に感じやすいものです。
同じ距離を何度も打つ。
短いパットを繰り返す。
大きな変化が見えにくいため、「これで本当にうまくなるのだろうか」と不安になることもあります。
私も、地味な練習が苦手でした
正直に言うと、私自身も若い頃は圧倒的にドライバー練習が好きでした。
飛ばせることが自慢になる年代でしたし、短いパットを何度も打つ時間は、少し退屈にさえ感じていました。
けれど、実際のラウンドで私を助けてくれたのは、地道に積み重ねてきたアプローチとパットでした。
私が初めて100を切れたのも、パター練習をするようになってからです。
飛距離が急に伸びたわけではありません。
短いパットへの怖さが少し減ったとき、スコアは静かに変わり始めました。
Dさんが変わったのは、スコアだけではなかった
生徒さんのDさんは、入会した頃、ドライバーの飛距離を伸ばすことにとても熱心でした。
ところがラウンドに出ると、グリーン周りで二打、三打と重ねてしまいます。
「ドライバーは前より飛ぶのに、どうしてスコアが変わらないんでしょう」
Dさんは、スコアカードを見ながら何度も首をかしげていました。
そこで、練習時間の一部をアプローチとパットに使うメニューを提案しました。
最初は、「地味で物足りないですよ。10分もすれば飽きます」
と苦笑いされました。
それでも数週間続けるうちに、グリーン周りの大きなミスが少しずつ減っていきました。
そしてある日、Dさんが笑いながら言ったのです。
「一番変わったのは、ドライバーでOBを打っても、前ほどイライラしなくなったことです」
アプローチとパットに少し安心感が生まれたことで、「どこかで取り返せる」と思えるようになったのでしょう。
技術だけではなく、心の余裕も育っていたのです。
静かな反復が、自分を支えてくれる
『実力は、静かな反復に宿る』
目立たない練習は、成果がすぐには見えません。
けれど、何度も繰り返した感覚は、大切な場面で自分を助けてくれます。
派手さがないからこそ、その力は簡単には崩れません。
地味さは弱さではなく、誰にも見えないところで育っていく静かな強さなのだと思います。
今日からできる、小さな十球
次の練習では、最後の十球だけを短いアプローチに使ってみてください。
ドライバーを我慢する必要はありません。
気持ちよく振ったあと、締めくくりの十球だけを静かな練習に譲ってあげるのです。
パッティンググリーンが使える日は、最後の5分だけ、1メートルの距離を繰り返してみるのもおすすめです。
毎回すべて入らなくても大丈夫です。
構える。
一度息を吐く。
同じ強さで転がす。
その小さな反復が、次のラウンドの一打を静かに支えてくれます。
小さな安心が、コースの景色を変えていく
1メートルのパットに少し自信がつくと、ロングパットへの不安がやわらぎます。
ロングパットが怖くなくなると、アプローチにも少し余裕が生まれます。
アプローチへの不安が減れば、セカンドショットのミスも、以前ほど自分を責めずに受け入れられるようになります。
そしてセカンドショットが楽になれば、不思議なことにドライバーまでやさしく感じられてきます。
競技ゴルフでは、より高い精度や適度な緊張感が必要になるでしょう。
けれど、仲間と楽しむゴルフなら、小さな安心がひとつ増えるだけで、風の音や芝の匂いまで感じられる余裕が生まれます。
次の練習では、遠くへ飛ぶ一球だけでなく、足元を静かに転がる一球にも目を向けてみてください。
その小さな一打が、次のラウンドの景色を少しやさしくしてくれるかもしれません。
あなたが「大切なのは分かっているけれど、つい後回しにしてしまう練習」は何ですか。

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