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「『これ、好き。』を保留にしない。自分を信じる練習は、お箸から始まった。

「自分を信じよう。」
そんな言葉を目にすることがあります。

そうすることで、自信につながったり、自分にもやさしくなれたりすると言われます。

頭では、なんとなく分かる気がしていました。

でも私は長い間、それを感覚として落とし込めずにいました。


信じるって何だろう。
どうすれば自分を信じられるんだろう。

そんなことを、ぼんやり考えていた気がします。


でも、最近になって思うのです。

もしかしたら私は、「自分を信じる」というよりも、「自分の感覚を信じる練習」から始めているのかもしれないなぁと。


きっかけは、お箸でした。

数年前、こだわりのお蕎麦屋さんで食事をしたときのことです。

そこで使われていたのは、先がとても細いお箸でした。

「こんなに先の細いお箸ってあるんだ。」

そう思いながら料理を口に運んだ瞬間、思わず驚いたんです。


美味しい。

いや、それだけじゃない。
食べていて、すごく気持ちがいい。


まるで食べ物だけが口に入ってくるような感覚。

お箸が邪魔をしない。

その感覚が、とても心地よかったのです。


私はそれまで食べてて気持ちいいとは思ったことがなかったので、この初めての感覚に驚きつつも、心が少し躍りました。

だから食後、レジの横に同じお箸が販売されているのを発見したときは、思わず買おうかなと思いました。でも、とてもシンプルなデザインだったので、結局その日は買わずに帰ることにしました。


それからしばらくして、
宮島へ遊びに行ったときのことです。

何気なく入ったお箸の専門店で、先の細めのお箸を発見。

あのお蕎麦屋さんで感じた感覚が、一気によみがえってきました。しかも今度は、色も柄も「これが好きだな」と思える一本。あそこまで極細ではないとは思ったけど、今度は、迷わず連れて帰りました。

使ってみると、やっぱり今までとは違う。

料理を口に運んだとき、お箸が主張しない。
食べ物だけを味わえる感じがして、とても気持ちがいい。

いつもの食事なのに、少しだけ豊かな時間になったような気がしました。おうちご飯が楽しくなったようにも感じました。


それから数か月後、
今度は、その感覚を確かめるような機会ができたのです。

仕事のあと、美味しい海鮮のお膳をいただく機会がありました。新鮮なお刺身を見て、「おいしそう!」とワクワクしながら割り箸を割って一口。

その瞬間、思ったんです。

「あれ?」

美味しい。
でも、何か違う。

そのとき、ふと頭をよぎったのが、「家のお箸を持ってくればよかったかも」ということでした。

少し変わっているのかな、と自分でも思いました。でも、その感覚が気になって仕方がなかったのです。

数か月後、また同じお店へ行く機会ができました。

よし!!

今度は本当に、そのお箸をバッグに入れて。

すると……
やっぱり違ったんです。

私には、このお箸で食べるほうが、料理がもっと美味しく感じられました。

そのとき、ようやく分かりました。


私は、この口当たりが好きなんだ。


昔の私は、自分が何を好きなのか、よく分かりませんでした。

「これくらいの価格でいいかな。」
「レビュー見た感じ良さそう」

そんな選び方をすることも多かったように思います。


でも最近は、少しだけ変わってきました。

身体が「これ、好き。」と言ったら、その声を保留にしないようにしています。

もちろん、その感覚がいつも正しいとは限りません。

だから、一度暮らしの中で使ってみる。
本当に心地いいのか、自分で確かめてみる。

そして、「やっぱり好きだった。」という経験を、一つずつ増やしていく。


そうしているうちに、「私は、この感覚を大切にしていいんだ。」と思える瞬間が、少しずつ増えてきました。


「自分を信じる」という言葉は、まだ今でも少し大きく感じます。


でも私にとっては、いきなり大きな決断を信じることではなく、

「この箸、好き。」
「このグラス、落ち着く。」
「この場所、なんだか心地いい。」

そんな身体の小さな声を、そのまま採用してみること。それから始めるでいいかなと感じています。その積み重ねが、いつの間にか自分への信頼につながっていくのかもしれません。



もうひとつの景色 🌿
「これ、好き。」と思えるものを選ぶこと。そして、選んだ大切なものとどう暮らすか。ひとつの青いグラスから、また似た問いに出会いました。


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