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UNIXの壮大な歴史と設計哲学 - - パソコン黎明期の記憶

 「UNIX」という言葉を聞いたことがありますか?

 もしかしたら、普段私たちが使っているスマートフォンやパソコンのOS(オペレーティングシステム)に隠された、現代ITの礎ともいえる存在だとしたら、興味が湧きませんか?

 この記事では、UNIXがどのようしてに生まれ、発展し、そして私たちのデジタルな世界にどれほどの影響を与えたのかを、その歴史的意義やエピソードを交えながら紹介します。


1.UNIXの概要

1.1 現代を支える見えない巨人「UNIX」

 私たちが日常で利用するインターネット、スマートフォン(AndroidやiPhone)、高性能なサーバー、さらには金融システムや科学技術計算の裏側には、ある共通の「血筋」が存在します。

 それが、半世紀以上の歴史を持つオペレーティングシステム(OS)、「UNIX」なのです。

 UNIXは、単なる古いOSではありません。
 現代の主要なOSの多く、特にLinuxやmacOS、そしてGoogleのAndroidやAppleのiOSの基盤となる考え方や技術を確立しました。

 もしUNIXが存在しなければ、現在のITインフラの姿は全く違っていたことでしょう。

 まさに、「デジタル時代の影の立役者」とも呼べる存在なのです。


1.2 歴史、変遷と派生の概要

 UNIXは、1960年代後半、アメリカのAT&Tベル研究所で生まれました。

 当初は、他の巨大で複雑なOSに対する「よりシンプルで扱いやすい」システムを目指した、一握りのエンジニアによる趣味的なプロジェクトとしてスタートしました。

 この「シンプルさ」と「汎用性」とが爆発的な広がりを見せて、大学や研究機関を中心に世界中に普及していきます。

 この過程で、UNIXはさまざまな派生形(ディストリビューション)を生み出しながら進化を続けました。

 例えるなら、木の幹から太い枝や細い小枝が多数伸びていったようなイメージです。


1.3 歴史的意義

 UNIXの最大の歴史的意義は、その「設計思想」が、現代のOSのスタンダードとなったことです。

(1)マルチユーザー・マルチタスク
 複数の人が同時にシステムを利用できて、一つのシステムで複数の作業を同時に実行できる能力。

(2)階層型ファイルシステム
 データ(ファイル)をフォルダー(ディレクトリ)の中に整理して保存する、今では当たり前の仕組み。

(3)移植性の高さ
 特定のコンピューター機種に依存せず、比較的簡単に他の機種にも動かせる柔軟性。

 意外なトリビアとして、MacのOS:macOSや、iPhoneのOS:iOSは、UNIXの派生形であるBSD系の技術を色濃く受け継いでいます。

 つまり、皆さんのポケットの中のスマートフォンも、実はUNIXの子孫のような存在なのです。


1.4 特徴

 UNIXの哲学は非常にシンプルです。

 それは

  ・「すべてをファイルとして扱う」

ということと

  ・「一つのことをうまくやる、小さなプログラムをたくさん作り、それらを組み合わせて大きな仕事をする」

というものです。

 この哲学を体現したのが、「パイプ」という機能です。

 これは、あるプログラムの出力結果を、次のプログラムの入力として直接渡す仕組みです。
 まるで、工場でベルトコンベアを使って部品を次の工程に運ぶように、データ処理を効率的に行うことができるのです。
 この「小さなプログラムの連携」という考え方は、現代のソフトウェア開発でも非常に重要視されています。


1.5 技術的な背景

(1)ハードウェア
 当初、UNIXはDEC社のPDP-7というミニコンピューターで開発されました。
 高価で巨大だったメインフレームに対して、安価で設置が容易なミニコンピューターの登場が、UNIXが研究機関に広まる大きなきっかけとなりました。

(2)ソフトウェア
 開発言語に、当時新しく開発された「C言語」が用いられたことも、UNIXの成功の鍵です。
 C言語は、特定のハードウェアに依存しない高い移植性を持っていたため、UNIXが様々なコンピューターで動作できるようになりました。


2.歴史と変遷の詳細

 UNIXは、その誕生から今日まで、多様な進化と分岐を遂げてきました。

2.1 時系列の年表

・1969年  誕生(非公式)
  AT&Tベル研究所で、Ken ThompsonらがPDP-7上でUNIXの前身を開発。当初は「UNICS」と呼ばれた。

・1973年  第四版
  ほぼ全体がC言語で書き直される。これにより移植性が飛躍的に向上。

・1975年  第六版(V6)
  初めて外部に公開され、大学や研究機関で利用が始まる。UNIXの普及の出発点。

・1977年  BSD誕生
  カリフォルニア大学バークレー校で改良版(BSD: Berkeley Software Distribution)が開発開始。TCP/IPを実装し、インターネットの基盤作りに貢献。

・1983年  System V(AT&T)
  AT&Tが商用バージョンとしてリリース。商用UNIXの主流となる。

・1984年  GNUプロジェクト開始
  Richard Stallmanにより、UNIX互換のフリーなOSを目指すプロジェクトが開始される。Linuxへと繋がる思想的基盤。

・1991年  Linux誕生
  フィンランドの学生、Linus TorvaldsがUNIX互換のOSカーネルを開発。後のオープンソース運動の象徴に。

・2001年  macOS Xリリース
  AppleがBSD系UNIXの技術をベースに開発。UNIXが一般消費者向けのデスクトップOSとして広く普及する大きな一歩となる。


2.2 系統図・分岐の様子

 UNIXの系統には、大きく分けて二つの潮流があります。

(1)AT&T系(System V系)

 ・中心系
  開発元であるAT&Tが商用として提供した系統。安定性や互換性を重視。

 ・派生系
     ・Solaris (Sun Microsystems)
     ・HP-UX (Hewlett-Packard)
     ・AIX (IBM)

 ・これらの商用UNIXは、高性能なワークステーションや大規模サーバーの分野で長年利用され、今も重要なシステムを支えています。


(2)BSD系(Berkeley Software Distribution)

 ・中心系
  カリフォルニア大学バークレー校で開発された系統。インターネット接続に必要なTCP/IPプロトコルスタックをいち早く実装したことで有名。

 ・派生系
     ・FreeBSD, OpenBSD, NetBSD
     ・そして、このBSDの技術を土台に作られたのが、Appleの
      ・ macOS
      ・ iOS(iPhone/iPad OS)です。


(3)Linux(リナックス)

 ・位置づけ
   UNIXの完全な互換性を目指してゼロから開発されたカーネル(OSの核)。
   技術的にはAT&TやBSDの直接の子孫ではありませんが、その設計思想と利用環境は完全にUNIXの世界です。

 ・意義
   オープンソース(誰もが自由にソースコードを見て、改良できる)という形態が世界中の開発者の協力を得て爆発的に普及。
   Google、Amazon、Facebookなどの巨大IT企業のサーバーや、IoTデバイス、Androidスマートフォンの基盤として、現代のデジタル社会を実質的に支配しています。


4.時代を超えて生き続けるUNIXの精神

 UNIXの物語は、単なるOSの歴史ではありません。
 それは、「シンプルであることの強さ」「小さなものを組み合わせて大きな力を生み出す協調性」といった、IT技術の本質的な哲学の謂わばサクセスストーリーなのです。

 開発者が自由に改良して、より良いものを生み出す「オープンソース」という文化がここまで広まったのも、UNIXが研究機関の枠を超えてソースコードを公開し、改良が繰り返される土壌があったからにほかなりません。

 UNIXは今も、LinuxやmacOSとして進化し続け、クラウド、AI、ビッグデータといった最先端の分野の「足元」を支えています。

 私たちの未来のイノベーションを可能にする、静かなるインフラであり続けているのです。


書籍の紹介

UNIXという考え方: その設計思想と哲学 単行本 – 2001/2/23
 Mike Gancarz (著), 芳尾 桂 (翻訳)
 オーム社 (2001/2/23)
 UNIX系のOSは世界で広く使われている。UNIX、Linux、FreeBSD、Solarisなど、商用、非商用を問わず最も普及したOSのひとつであろう。そしてこのOSは30年にわたって使用され続けているものでもある。なぜこれほど長い間使われてきたのか? その秘密はUNIXに込められた数々の哲学や思想が握っている。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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詳解UNIXプログラミング 新装版 単行本 – 2000/12/1
 W.リチャード スティーヴンス (著), W.Richard Stevens (原名), 大木 敦雄 (翻訳)
  桐原書店 (2000/12/1)
 UNIXシステムのプログラミングインタフェースの解説書。標準Cライブラリで提供されるシステムコールインタフェースや関数について、多くの例題をあげて解説する。ソフトバンク94年刊の新装版。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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UNIXプログラミング環境 (アスキードワンゴ) Kindle版
 Brian W. Kernighan (著), Rob Pike (著), 野中 浩一 (著), 石田 晴久 (その他)
 ドワンゴ (2017/6/8)
 本書の内容は類書にはみられない、極めてユニークなものになっている。例えば、UNIXでは、シェルと呼ばれるコマンド・アナライザのレベルで、いろいろなコマンドを組み合わせることによって、複雑なコマンドを実現することが可能であるが、そのためのノウハウを本書は教えてくれるのである。私自身も、今までUNIXをかなり使い込んでいる一人だと思っていたが、本書にはいろいろと教えられた。UNIXには、自分がまだ全く使ったことのない機能、使い方さえ想像できなかった機能が数多くあることに改めて驚嘆している。("監訳者まえがき"より)
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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僕らのパソコン 30年史 ニッポン パソコンクロニクル Kindle版
 SE編集部 編集
 翔泳社(2012/12/20)
 写真で振り返る、ニッポンのパソコン歴史教科書。30年以上を通して変化したパソコンを2部構成で、写真を多用し世相にも触れながら、時間の流れの中で大きな変化をわかりやすく解説。第1部を年代ごとのトピックの解説にあて、当時の開発者や関係者への「証言(ターニングポイント)」を盛り込み、開発秘話などを明らかにしている。第2部では、PCアーキテクチャなどをテーマごとにまとめている。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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