【世界のオンチェーンプロジェクト File.006】The Clearing House
米国銀行界は、なぜ共同のオンチェーンマネー網を作るのか
トークン化預金を「一行の商品」から「銀行業界の決済インフラ」へ
最終更新:2026年8月
前回取り上げたECBのPontes/Appiaは、DLT上の金融取引を中央銀行マネーで決済し、将来の欧州トークン化市場全体を設計する中央銀行主導のプロジェクトでした。
米国では、これとは異なる動きが始まっています。
2026年6月5日、The Clearing Houseは、複数の大手金融機関と共同で、銀行主導のオンチェーンマネー構想を発表しました。
構想の柱は二つです。
銀行間でトークン化商業銀行マネーをオンチェーンで清算・決済する
オンチェーンの活動をRTPやCHIPSなどの既存決済網へ接続する
The Clearing Houseは、この仕組みによって、トークン化預金のプログラマビリティと、既存銀行決済網が持つ信頼性、決済確実性、運用体制を組み合わせると説明しています。
重要なのは、米国の銀行が単に共同のブロックチェーンを作ろうとしているのではないことです。
狙いは、
銀行ごとに発行されるトークン化預金を、銀行をまたいで利用できる共通の清算・決済インフラへ発展させること
です。
Project Card
プロジェクト名
Bank-Led On-Chain Money Initiative
本稿では「TCHオンチェーンマネー構想」と表記
運営主体
The Clearing House:TCH
発表時期
2026年6月5日
対象となるマネー
銀行が発行するトークン化商業銀行マネー、主としてトークン化預金
主な機能
銀行間のオンチェーン清算・決済
24時間365日の決済
自動化された取引ワークフロー
取引データの高度化
オンチェーン基盤とRTP・CHIPSの接続
デジタル商業銀行マネーと従来の預金マネーの相互移動
想定ユースケース
プログラマブルな企業財務
リアルタイム流動性管理
クロスボーダー決済
AIエージェントによる取引
デジタル資産の決済
自動化された金融ワークフロー
現在の段階
構想公表・業界共同設計段階
公表されていない主な事項
稼働開始時期
採用するDLT
トークン規格
銀行間債務の法的構成
グロス決済かネッティングか
中央銀行マネーとの具体的接続
参加費用とガバナンス
本番の参加銀行
TCHは米国の大手金融機関25社が所有する決済インフラ事業者です。構想発表にはBank of America、BMO、BNY、Citi、Citizens、Fifth Third、HSBC、Huntington、J.P. Morgan、KeyBank、PNC、Regions、Santander、TD Bank、Truist、U.S. Bank、Wells Fargoの関係者がコメントを寄せています。ただし、コメントした銀行がすべて同一条件で本番参加を確定した、とまでは公表されていません。
The Clearing Houseとは何か
The Clearing Houseは、ブロックチェーン企業でも、暗号資産取引所でもありません。
1853年に設立された米国の銀行業界インフラであり、現在は主に、
ACH
小切手交換
RTP
CHIPS
などの決済網を運営しています。
RTPは、米国内の即時決済ネットワークです。2026年6月時点で1,280を超える金融機関が参加し、24時間365日、即時かつ取消不能の決済とISO 20022による豊富なデータ交換を提供しています。2026年第2四半期だけで1億4,200万件、5,760億ドルを処理しました。
CHIPSは、国内外の高額米ドル決済を扱う、世界最大の民間セクターの米ドル清算・決済システムです。現在、1営業日あたり約2.2兆ドルを清算・決済し、ネッティングと流動性節約によって、1ドルの資金で平均26ドル相当の決済を成立させています。
つまりTCHは、
即時決済、高額決済、銀行間清算、流動性管理、運用規則をすでに担っている主体
です。
今回の構想は、既存金融と無関係な新ネットワークを外から接続するものではありません。
既存の銀行間決済インフラ自身が、オンチェーンマネーの清算・決済領域へ拡張する動きです。
なぜ一行のトークン化預金だけでは足りないのか
銀行が自行の預金をトークン化すると、その銀行の顧客同士では24時間、条件付きで資金を動かせるようになります。
例えばA銀行がトークン化預金を発行した場合、
A銀行の顧客XからA銀行の顧客Yへの移転
A銀行内の海外拠点間資金移動
A銀行のスマートコントラクトを使った支払い
は比較的構成しやすいでしょう。
しかし、A銀行の顧客からB銀行の顧客へ支払う場合は問題が変わります。
A銀行のトークン化預金は、A銀行に対する預金債権です。
B銀行のトークン化預金は、B銀行に対する預金債権です。
同じ1米ドル建てであっても、発行銀行と法的債務者が異なります。
そのため、A銀行のトークンをB銀行の顧客へ送るだけでは、必ずしも通常の銀行振込と同じ結果にはなりません。
通常の銀行振込では、
A銀行の顧客預金を減額する
A銀行とB銀行の間に決済義務を形成する
銀行間で清算・最終決済する
B銀行の顧客預金を増額する
という処理が必要です。
これは預金がトークン化されても変わりません。
トークン化預金を銀行間で広く利用するには、
発行銀行の識別
資金の確保
銀行間決済義務の形成
清算
流動性管理
最終決済
受取銀行での預金発生
障害時の補償
を共同ルールの下で処理するネットワークが必要になります。
TCHが作ろうとしているのは、まさにこの銀行間レイヤーです。
構想を構成する二つの機能
公表資料から確認できるTCH構想の機能は、大きく二つに分かれます。
1.トークン化預金の銀行間清算・決済
第一の機能は、銀行間でトークン化預金を清算・決済することです。
TCHは、
24時間365日の決済
プログラマブルな処理
豊富な取引データ
自動化されたワークフロー
銀行規制の枠組み内での運用
を提供するとしています。
ここで重要なのは、「トークンを転送する」と「銀行間決済を完了する」は別だということです。
A銀行とB銀行がそれぞれ預金トークンを発行する場合、TCH側では少なくとも、
A銀行側の減額またはロック確認
B銀行側の発行または増額条件の確認
A銀行からB銀行への銀行間支払義務
銀行間資金の確保
取引状態の同期
最終決済結果の通知
を扱う必要があります。
ただし、TCHは現時点で詳細な取引フローや台帳構成を公表していません。
したがって、これらは銀行間TD決済に一般的に必要となる機能から整理したものであり、TCHの最終仕様を示すものではありません。
2.オンチェーンと既存決済網をつなぐ接続層
第二の機能は、オンチェーンの活動をRTPやCHIPSへ接続することです。
これにより、
トークン化預金から通常の銀行預金へ戻す
通常の銀行口座からオンチェーン資金を発行する
RTPを使って国内銀行口座へ即時送金する
CHIPSを使って高額・国際的な米ドル決済を行う
オンチェーン取引の資金レッグを既存網で決済する
といった構成が可能になります。
TCHは、この機能を「デジタル商業銀行マネーと伝統的商業銀行マネーの間の移動を可能にするconnectivity layer」と説明しています。
この点が、TCH構想の最も現実的な特徴です。
すべての銀行、企業、決済を新しいブロックチェーンへ移すのではありません。
オンチェーンで動く資金と、既存口座・既存決済網を相互に出入りできるようにする
ことを目指しています。
概念的な取引フロー
詳細仕様は未公表ですが、公表された二つの機能から、銀行間のトークン化預金支払いを概念的に整理すると、次のようになります。
Step 1|A銀行が顧客の支払いを受け付ける
A銀行の顧客Xが、B銀行の顧客Yへ支払いを指示します。
A銀行は、
顧客認証
残高
送金目的
受取人情報
AML/CFT
制裁
取引限度額
を確認します。
Step 2|A銀行が預金をロックまたは減額する
A銀行は、顧客Xの預金またはトークン化預金について、必要な金額を二重使用できない状態にします。
Step 3|TCHネットワークが銀行間取引を受け付ける
TCH側で、
発行銀行
受取銀行
金額
通貨
取引ID
決済条件
必要なコンプライアンス情報
を検証します。
Step 4|銀行間決済義務を形成する
A銀行からB銀行へ支払う銀行間義務を記録します。
グロスで即時に決済するのか、一定時間まとめてネッティングするのかは、公表されていません。
Step 5|銀行間資金を決済する
想定される選択肢には、
オンチェーン上の銀行間決済資産
RTPへの接続
CHIPSへの接続
中央銀行口座への接続
参加銀行間の別の資金決済方式
があります。
ただし、TCHがどの方式を採用するかは未公表です。
Step 6|B銀行が顧客預金を増額する
銀行間決済の条件が満たされると、B銀行は顧客Yの預金またはトークン化預金を増額します。
Step 7|両行と顧客へ結果を通知する
取引結果、決済状態、参照情報を各銀行と顧客へ返します。
ここで最も重要なのは、
顧客Yが資金を使える時点と、銀行間最終決済が完了する時点を一致させるのか
という問題です。
一致しない場合、B銀行は一時的にA銀行への信用リスクを負います。
この時間差をどう管理するかが、TCH構想の中核的な設計論点になります。
なぜRTPとCHIPSの両方が必要なのか
RTPとCHIPSは、同じTCHが運営していますが、役割は異なります。
RTP
RTPは、
国内即時決済
24時間365日
即時かつ取消不能
豊富なISO 20022データ
1件最大1,000万ドル
1,280超の参加金融機関
という特徴を持ちます。
したがって、
法人の即時支払い
口座への入出金
オンチェーン資金の現金化
国内銀行へのラストワンマイル
リアルタイムの資金集中
との接続に向いています。
CHIPS
CHIPSは、
高額米ドル決済
国内・クロスボーダー
銀行間ネッティング
流動性節約
最終的な決済確実性
を提供します。
したがって、
大口法人決済
国際米ドル決済
銀行間ポジション
大規模な流動性管理
トークン化証券の資金決済
との接続に適しています。
TCHは、トークン化預金専用の閉じたネットワークを作るのではなく、取引の金額、用途、参加者に応じて、既存の決済網へ接続できる構造を目指していると考えられます。
なぜ銀行は共同インフラを作るのか
銀行各社は、トークン化預金の領域では競争相手です。
それでも共同インフラを作る理由は、決済ネットワークにはネットワーク効果があるからです。
一行だけが優れたトークン化預金を発行しても、利用できる相手がその銀行の顧客だけなら、用途は限定されます。
銀行間で利用するには、少なくとも次の項目を共有しなければなりません。
取引メッセージ
トークンや預金の識別方法
発行銀行の表示
参加資格
顧客・ウォレットの確認方法
取引状態
タイムアウト
取消し・組戻し
障害時の処理
銀行間清算
流動性管理
損失分担
ガバナンス
これらを各銀行の二者間契約で整備すると、参加行が増えるほど組合せが急増します。
共同インフラには、
競争する商品領域と、共同化すべき基盤領域を分ける
意味があります。
銀行は顧客サービス、価格、資金管理、API、スマートコントラクト機能で競争し、銀行間清算、共通規則、運用、接続は共同化する。
これは、従来の決済インフラと同じ考え方です。
トークン化預金とステーブルコインの違い
TCHが強調しているのは、単なるオンチェーン決済ではなく、commercial bank money、すなわち商業銀行マネーです。
トークン化預金は、記録方式がブロックチェーンへ変わっても、基本的には発行銀行に対する預金債権です。
銀行預金には、
銀行規制
銀行の自己資本・流動性規制
預金保険の枠組み
AML/CFT
顧客管理
信用創造
中央銀行マネーへの転換
という既存制度があります。
TCHは、トークン化預金が、銀行による信用供給と経済成長を支える役割を維持しながら、プログラマビリティと相互運用性を提供すると説明しています。
一方、ステーブルコインは、発行者、準備資産、償還方法、流通市場が預金とは異なります。
これはステーブルコインが劣っているという意味ではありません。
公開チェーン上の接続性
グローバルな流通
ウォレット間移転
デジタル資産市場との統合
では、ステーブルコインに強みがあります。
TCH構想の意味は、
ステーブルコインが先行したオンチェーン市場に対し、銀行預金も同じようにプログラマブルで相互運用可能な形へ進化させる
ことにあります。
なお、TCHなどの銀行業界団体は、預金が従来システムで記録されるかDLTで記録されるかによって預金保険上の扱いを変えるべきではないという、技術中立的な規制方針を支持しています。ただし、これは2026年6月時点の規則案に対する意見であり、最終的な制度内容とは区別する必要があります。
想定されるユースケース
1.プログラマブルな企業財務
企業は、
指定残高を下回ったら自動補充する
支払期限に合わせて資金を移す
子会社間で余剰資金を集中する
条件に応じて預金を移転する
夜間・休日に流動性を調整する
といった処理を自動化できます。
2.リアルタイム流動性管理
銀行や企業は、オンチェーン資金と通常口座の間で、必要な場所へ必要な時間に資金を移動できます。
ただし、24時間取引には24時間の流動性供給とモニタリングが必要です。
3.クロスボーダー決済
CHIPSや参加銀行の国際ネットワークと接続することで、オンチェーンの支払いを米ドルの国際決済へつなげられる可能性があります。
ただし、外国銀行、他通貨、海外規制との具体的な接続方式は未公表です。
4.デジタル資産決済
トークン化証券、ファンド、担保などの取引について、銀行預金を資金レッグとして利用できます。
証券と預金を条件付きで同期できれば、DvPによる同時決済が可能になります。
5.AIエージェントによる支払い
企業が事前に定めた、
金額上限
相手先
取引目的
有効期限
承認条件
の範囲で、AIエージェントが自動的に支払いを実行する用途です。
AIが直接銀行預金を自由に使うのではなく、銀行の権限管理とコンプライアンスの中で動く設計が必要です。
これらの用途はTCH自身が対象として挙げていますが、具体的な商用サービスや開始時期はまだ公表されていません。
解かなければならない8つの問題
1.銀行間決済資産
各銀行の預金を減額・増額するだけでは、銀行間の最終決済は終わりません。
中央銀行マネー、共同決済口座、RTP、CHIPS、オンチェーン決済資産のどれを使うのかが必要です。
2.グロスかネッティングか
すべて即時グロスで決済すればファイナリティは明確ですが、多くの流動性が必要です。
ネッティングすれば流動性は節約できますが、決済までの時間差と参加者リスクが生じます。
3.24時間の流動性
台帳だけを24時間動かしても、銀行の資金繰り、担保、中央銀行接続、障害対応が夜間・休日に動かなければ完全な24時間決済にはなりません。
4.預金の同一性
A銀行の1ドルとB銀行の1ドルは、額面は同じでも異なる銀行に対する債権です。
受取人がどの銀行の預金を取得するのかを明確にする必要があります。
5.法的ファイナリティ
顧客預金が成立する時点
銀行間義務が取消不能になる時点
最終決済が完了する時点
参加銀行が破綻した場合の扱い
をルールで揃える必要があります。
6.プライバシーとデータ
オンチェーンの豊富なデータを利用しながら、
顧客情報
残高
取引相手
商流
銀行の流動性
を他の参加者から保護する必要があります。
7.銀行ごとのシステム差
銀行ごとに、
トークン化預金の形式
勘定系
ウォレット
API
状態管理
取消し・凍結機能
が異なれば、共同網との接続アダプターと共通状態モデルが必要です。
8.ガバナンス
誰が仕様を変更するか
新規参加を承認するか
障害時に停止するか
損失を負担するか
技術ベンダーを選ぶか
というルールが、技術以上に重要です。
Swift Ledgerとの違い
Swift LedgerとTCH構想には共通点があります。
どちらも、
銀行主導
トークン化預金
既存金融との接続
24時間決済
プログラマブルな処理
共同インフラ
を重視しています。
しかし、立ち位置が異なります。
Swift Ledger
グローバルな金融メッセージネットワークが運営
銀行間コミットメントの共有・状態同期が中心
預金と鍵は各銀行が管理
最終決済にはRTGSやコルレス口座などを利用
複数国・複数通貨の銀行接続を志向
The Clearing House
米国の清算・決済インフラ運営者が主導
トークン化預金の銀行間清算・決済を明示
RTPとCHIPSへ直接接続できる立場
米国金融機関全体が参加可能な業界網を志向
米ドル商業銀行マネーの決済基盤として出発する可能性が高い
整理すると、
Swiftは、世界の銀行を共通の状態管理でつなぐ。
TCHは、米国の既存清算・決済インフラをオンチェーンマネーへ拡張する。
という違いがあります。
Project Agoráとの違い
Project Agoráは、
トークン化商業銀行預金
トークン化中央銀行準備
多通貨
複数法域
コンプライアンス
アトミック決済
を共有プログラマブル基盤へ組み込みました。
一方、TCH構想が現時点で明示している中心は、トークン化商業銀行マネーです。
中央銀行準備をトークン化して同じ基盤へ置くことは公表されていません。
したがって、
Agoráは、商業銀行マネーと中央銀行マネーを同じ取引へ統合する。
TCHは、商業銀行マネーの共同網を既存の銀行決済インフラへ接続する。
という違いがあります。
TCH型は制度変更を限定しやすい一方、銀行間最終決済をどこで、いつ完了させるかが残ります。
Agorá型はアトミックに決済できますが、中央銀行を含む基盤・法制度・ガバナンスの変更範囲が大きくなります。
Pontes/Appiaとの違い
Pontesは、市場のDLT基盤を、Eurosystemの中央銀行マネー決済へ接続します。
Appiaは、その先の欧州トークン化市場全体を設計します。
TCH構想との違いは、決済のアンカーです。
Pontes/Appia
中央銀行マネーを中心に設計
T2を法的ファイナリティのアンカーとする
証券・担保・市場DLTの決済が主な対象
中央銀行・公共部門主導
TCH
商業銀行マネーを中心に設計
RTP・CHIPSなど民間銀行インフラを活用
企業財務、銀行間決済、デジタル資産など広い用途
銀行業界・民間FMI主導
米国は、中央銀行が一つの新市場基盤を設計するのではなく、銀行業界の既存インフラが先にオンチェーンへ拡張する道を選びつつあります。
現在地を過大評価しない
TCH構想は、銀行業界の主要プレーヤーが共同で公表したという意味で重要です。
しかし、2026年8月時点では、
商用稼働していない
パイロットの取引件数は公表されていない
詳細アーキテクチャがない
参加規則がない
稼働時期がない
法律構成がない
清算・最終決済方式がない
という段階です。
したがって、
「米国で共同のトークン化預金網が稼働した」
と説明するのは正確ではありません。
現在の到達点は、
米国の銀行業界が、トークン化預金を一行の商品ではなく、共同の清算・決済インフラとして扱う方向を公式に示した
というものです。
構想の重みは、完成度ではなく、TCHと主要銀行が共通インフラの必要性を認めたことにあります。
The Clearing Houseが示したこと
これまで、トークン化預金の多くは、一つの銀行の中で発行・移転されるサービスとして成長してきました。
しかし、預金マネーの本来の価値は、自行内だけで動くことではありません。
異なる銀行の顧客間で、額面どおりに、確実に、最終的に支払えることにあります。
そのためには、
銀行別の預金を維持する
銀行間債務を形成する
清算する
流動性を節約する
最終決済する
既存口座へ戻す
共通ルールで運用する
仕組みが必要です。
The Clearing Houseの構想は、
トークン化預金の競争が、「どの銀行が最初に発行するか」から、「複数銀行の預金を誰が清算・決済するか」へ移った
ことを示しています。
さらに、オンチェーン金融が既存決済網を置き換えるのではなく、
RTPやCHIPSのような既存インフラ自身が、オンチェーン金融の一部へ変わっていく
可能性を示しました。
米国銀行界が作ろうとしているのは、新しい暗号資産市場ではありません。
既存の銀行預金を、オンチェーンでも使える共通の銀行マネーへ進化させるインフラです。
次回予告
次回のProject Fileでは、イギリスのGreat British Tokenised Deposits プロジェクト、英国の銀行預金は、オンライン詐欺を減らせるかを取り上げます。
主な参照資料
The Clearing House, Major Financial Institutions Unveil Bank-Led On-Chain Money Initiative, 5 June 2026.
The Clearing House, RTP Network.
The Clearing House, CHIPS.
The Clearing House, Modern Liquidity Management and the Strategic Role of the CHIPS Network, April 2026.
The Clearing House Association, Technology-Neutral Approach to Tokenized Deposits, 9 June 2026.
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