目的地型と探索型の学習の狭間 | 『Ultralearning』 を読んで思うこと
きっかけ
学び直しの手がかりがつかめないかと思い、Scott H. Youngの『Ultralearning』を手に取った。たしか、今年の冬ごろだった。
数学や英語をきちんと勉強し直そうと決めてから、半年ほどたったころだったと思う。
この本を選んだのは、学習法のヒントを得ることと、英語で本を読む練習を一度にできないかと考えたからだ。ちょうどそのころ、ファインマン・テクニックについても知りたいと思っていて、何かよい本はないかと探していた。
実際に読み始めると、これがかなり面白かった。分からない単語を一つずつ調べながら、二週間ほどこの本に浸っていた。
魔法の杖は与えてくれないが……
読んだからといって、急に英語が読めるようになったり、数学がすらすら解けるようになったりするわけではない。楽に学べる方法や、短時間で理解できる特別なコツが書かれているわけでもなかった。
結局のところ、何かを身につけるためには、実際に手を動かし、分からないところにぶつかり、学習の仕方そのものも試行錯誤しながら、何度もやり直さなければならない。その意味では、この本は魔法の杖を与えてくれる本ではない。
ただ、自分が何を学ぼうとしているのか。どのような練習が必要なのか。いま行っている勉強が、本当に身につけたい力につながっているのか。そうしたことを自分で考えるためのヒントは与えてくれる。
とりわけ、メタ学習、集中、直接性、直観、実験といった原則には、強く共感する部分があった。
身につけたい能力を、実際に使わなければならない環境に自分を置き、その中で集中して取り組む。結構、泥臭い教えだと思う。
その一方で、学びたい分野をいったん俯瞰し、ゴールから逆算して、何をどの順番で学ぶべきかを考える。かなり合理的に設計された学習モデルでもある。
雑な言い方をすれば、目的地までのルートは綿密に練る。
しかし、いったん走り始めれば、失敗と修正を繰り返しながら、ひたすら足を動かす。そんなストロングスタイルの方法論である。
本書では、それを著者自身や、さまざまなUltralearnerの具体例を交えながら紹介している。
もちろん、当時の自分が本書の方法を全面的に実践していたわけではない。それでも、すでに手探りで始めていた学習と重なる部分は多かった。
ちょうどそのころ、数学などの学習ノートを、できるだけ英語で取ってみようという試みを始めていた。
英語を先に十分勉強してから使うのではなく、英語を使って何かを学ぶ環境に、先に自分を置いてしまおうと考えたのだ。
最初は、ワンフレーズ、ワンフレーズ、おそるおそるAIに「これで意味は通じる?」と尋ねながらノートを取っていた。一文を書き上げるのに、10分や20分かかることも普通にあった。
こんなやり方で本当に大丈夫なのだろうか、と思うこともあった。
けれども、本書を読んで、それは少なくとも、身につけたい能力を実際に使いながら学ぶ、直接性の試みとして捉えられるのだと分かった。
自分が手探りでやっていたことに、名前をつけてもらったような感覚があり、この本にのめりこんだ。
それでも、すべてに乗れたわけではなかった。
目的地は、最初から決まっているのか
本書で取り上げられているUltralearnerたちは、外国語の習得、大学課程の修了、絵画技術の向上など、何らかの分かりやすい成果を上げた人が多い。
そのためか、どうしても、まず目的地を定め、そこから逆算して必要なことを身につけていく、目的地型の学習という印象が強く残った。
もちろん、本書も、最初に立てた計画をただ機械的にこなせばよいと言っているわけではない。feedbackやexperimentといった原則を通して、実際に試し、失敗し、方法を修正していく必要性も繰り返し論じられている。
ただ、そこで主に修正されるのは、目的地までの進み方であるように思えた。
どの練習が効果的なのか。どこが弱点なのか。どの方法が自分に合っているのか。そうしたことを試しながら、あらかじめ定めた目的地へ近づいていく。
けれど、学ぶということは、いつも最初から目的地が見えているものなのだろうか。
何となく気になって本を読んでみたら、知らなかった問題に出会う。
あることを調べているうちに、別の分野とのつながりが見えてくる。最初に身につけようとしていたものとは違うところに関心が移り、学ぶ目的そのものが変わっていく。
好奇心に駆られて、あちこちに寄り道しながら身につけていく知識もあるのではないか。
むしろ、まだよく知らない分野について、学び始める前から適切な目的地を決められるとは限らない。
何が重要なのか、何が面白いのか、どこまで深く知りたいのか。それ自体が、学ぶ過程で少しずつ見えてくることもある。
自分の場合、思考があちこちに飛びやすい。
そのため、最初に目的を定め、そこへ一直線に進むことは、あまり得意ではない。
英語を勉強していたはずなのに、そこで出会った表現から政治や投資の話が気になったり、数学を勉強していたはずなのに、いつの間にか「理解するとはどういうことか」を考えていたりする。
これは単に集中力が足りないだけなのかもしれない。寄り道という言葉を使って、目的を定められないことを正当化している面も、多少はあると思う。
それでも、そうした寄り道の中から、あとになって長く考え続ける問いが見つかることもある。
目的地を定めてから進む学びがある一方で、歩き回るうちに、初めて目的地が見えてくる学びもあるのではないだろうか。
それでも、どっぷりと浸かってみる
それでも、この本から学んだことは多い。
学ぶべき対象から距離をおいたまま、準備ばかりを続けるのではなく、まずはその中にどっぷりと浸かってみる。分からないままでも実際に手足を動かし、失敗し、フィードバックを受けながら、泥臭く突き進んでいく。
そうした本書の方法論を、自分は結構気に入っている。
目的が明確になった時、そこから逆算して必要な練習を考え、実際に使う環境に飛び込む。その局面では、Ultralearningの原則は非常に力強い。
ただ、自分にとって、学びはいつもそこから始まるわけではない。
何かが少し気になって調べ始める。そこから別の問いへ飛び、さらに別の分野とのつながりを見つける。最初は互いに関係のない点に見えていたものが、寄り道を繰り返すうちに少しずつ結びついていく。
そして、あとから振り返ったときに、ばらばらだった点の間に線が引かれ、いつの間にか一つの星座が浮かび上がってくる。
そんな学び方もあるのではないかと思う。
あらかじめ目的地を定め、そこへ向かって走る学び。
歩き回りながら問いを拾い、その問いをつないで目的地を見つけていく学び。
自分はおそらく、その二つの狭間を行き来している。
寄り道の中で問いが見つかったなら、今度はその問いにどっぷりと浸かり、泥臭く突き進んでみる。そ
う考えれば、『Ultralearning』は、自分に最短距離を強いる本ではなく、探索の途中で見つけたものを、本気で学ぶための手がかりを与えてくれる本なのだと思いました。
みなさんは目的地型と探索型どちらが好みでしょうか?

このnoteでは、英語や数学、投資など、思いつくままにいろいろなことを書いています。話題はあちこちに飛びますが、どの記事でも、自分が分からなかったことについて、どう見れば少し理解できるのかを考えた過程を残しています。
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