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【実話】第3章 支えるって、何?うつ病の親友に僕ができたこと

大切な人が、目の前で静かに壊れていくとき――
あなたなら、どうしますか?

専門家でも、お医者さんでもない自分にできること。
それは、「ただ、そばにいること」でした。

この章は、うつ病や無気力感と向き合う彼と、
何もできない無力さに苦しんだ僕の、長くて静かな時間を描いています。

「支える」って、きれいごとじゃない。
迷って、傷ついて、それでも「支えたい」と願った、僕の原点の話です。

もしあなたが、誰かのそばにいたいと願っているなら、
この章が、少しでも力になれたら嬉しいです。


この話は連載形式で書いています。 
3章を読む前に、できれば 「第1章 | ある日、親友が死んだ」と「第2章 | 普通が壊したもの」を読んでいただけると、彼の苦しみと僕の想いが、より深く伝わると思います。
物語の背景を知ったうえで、3章を読み進めていただけたら嬉しいです。

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診断を受けてから、彼はしばらくして休職することを決めた。

「とにかく一度、全部から離れて休んだ方がいい。」
そう医者に言われて、勇気を出して仕事を休職することに決めた。

だが、休職してるのにも関わらず、スマホには彼宛ての連絡が絶え間なく届いた。「○○の件だけど、どうなってる?」「これ、君の担当だよね?」そんなメッセージが、彼の心をさらに追い込んでいった。

ついにはプライベートの友達の連絡すらも、通知が鳴るたびに動悸がするようになった。着信音が鳴るたびに、体がビクッと反応してしまう。

そのうち、彼はすべての通知をオフにした。
人と関わることすら、もう限界だったのだと思う。

何かしてやりたい。心からそう思っていた。
でも、俺にできることなんて、正直何もなかった。

病気のことを調べても、心のケアについて勉強しても、「専門家でもない自分には何もできない」という無力感に何度も押し潰されそうになった。

でも、それでも、俺は「そばにいること」だけは諦めなかった。

週に1回、彼の家に会いに行った。一緒に散歩したり、温泉に入ったり、昼飯を食べたり。大事な話はしない。悩みを聞き出そうとしない。
ただ、どうでもいい話をして、昔みたいに笑い合った。

「お前が一緒にいてくれて助かった」
彼はそう言ってくれた。

俺には何もできないと思っていたけど、それでも「親友として変わらずにいること」は、彼にとって意味があったのかもしれない。

数ヶ月が経ち、彼の様子には少しずつ変化が現れた。

最初は、まるで魂が抜けたようだった目に、少しだけ光が戻ってきた。
外に出れば、「風って気持ちいいな」とつぶやき、ラーメンを食べれば、これうまいな」と笑った。

「そろそろ働けるかな」なんて、彼の口から未来の話が出たときは、心の底から嬉しかった。

「もう大丈夫かもしれない」
そう思った。あの時は、心からそう信じた。

だけど、それはほんの一瞬の春のようなものだった。

次に彼を襲ったのは、静かな「無気力感」だった。

うつ病やパニックの症状は落ち着いたように見えて、
その代わりに、感情の起伏がなくなっていった。

「友達との遊びも、やる気が出ない」
「自分が何のために生きてるかわからない」

彼の中から「喜び」や「希望」といった感情が少しずつ消えていくのが、そばにいる俺にも分かった。

「死にたい」とは言わなかった。
でも、「生きたい」とも言わなかった。

その沈黙が、何よりも怖かった。

俺は、彼の力になりたかった。だが、どれだけ救いたいと思っても、自分の言葉は空回りして、彼の心には届かないように感じた。

会いに行っても、彼が笑う回数はどんどん減っていった。

かつての彼が持っていた「不器用だけどまっすぐな優しさ」や「独特の視点」も、どこかへ消えてしまったようだった。

「あいつはもう、戻ってこないのかもしれない」
そう思ってしまう自分もいた。

それでも、俺は、信じたかった

あいつの中には、まだ「あの頃のあいつ」が生きているってことを。

「支える」って、なんだろう。

何かをしてあげることだろうか。
正しい言葉をかけることだろうか。

俺には、正直わからなかった。

でも今、振り返って思う。

「そばにいること」
「正面から向き合うこと」
それが一番の支えだったんじゃないかって。

励まさなくていい。アドバイスもしなくていい。
ただ、そばにいて、笑って、また会いに来てくれる人がいる
それだけで、人は生きる目的ができるって、彼が教えてくれた。

彼は今も、完全に回復してはいない。

それでも、少しずつ、少しずつ、前を向こうとしている。

無感情な時もあるけど、目の奥に宿る光が、以前より強くなってきたように見える。あのとき、彼のそばにいて、俺はひとつだけ強く感じたことがある。

「こんな人を、救いたい」

社会とズレてることで否定されて、壊れていく人が他にもいるなら。
社会の中で、誰にも気づかれず、声を殺して泣いている人がいるなら。

その人の「ズレ」を、個性として受け止められる存在になりたい。
「そのままでいいんだよ」と伝えられる人間になりたい。

だから、俺は心理カウンセラーになると決めた。

あの夜、親友が泣きながら壊れていったあの瞬間が、今の自分の原点だ。

きっとこれからも悩んだり、迷ったりすると思う。

でも、俺はあの夜の涙を、決して無駄にはしない。

そしていつか、社会に馴染めず、苦しむ人の「居場所」になりたい。
自分らしく生きることを、もう誰も諦めないように。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
少し長くて、少し重たい話だったかもしれません。
それでも、あなたの大切な時間を使って、ここまで読んでもらえたことに、心から感謝しています。

この物語は、すべて実話です。
誰かを支えたくても、うまくできなかった自分。
何もできなかったようで、それでも「そばにいる」ことで伝わったもの。
そして、「普通」に苦しみ、「ズレ」に悩みながらも、それでも生きようとしている誰かの姿。

誰かひとりにでも、「こんなふうに感じたこと、あるかも」と思ってもらえたなら、この文章を書いた意味は、きっとあったと思います。

「支えるって、なんだろう」
「自分には何ができるんだろう」
そう悩みながら書いたこの3章が、今まさに誰かを想っているあなたの心に、
少しでも寄り添えたなら、それだけで十分です。

僕はこれからも、誰かの「そのまま」に光を当てられるような活動を続けていきたいと思っています。
そして、社会の中で苦しむ人がひとりでも減っていくように――。

どうか、あなたの「ズレ」も、誰かの「違い」も、否定されることのないように。
この世界が少しでも、生きやすくなりますように。

最後まで、本当にありがとうございました。


第1章 ある日、親友が死んだ

「もう無理かもしれない」
笑っていた親友が、泣き崩れた夜。 命はあった。でも、心が壊れていた。 これは、「普通」に壊された男の話。


第2章 | 普通が壊したもの

子どもの頃は「面白い個性」。でも社会に出た瞬 間、それは「欠点」に変わった。社会が求める普通 とズレていることで、壊れていった心と身体。

第3章|支えるって、何?うつ病の親友に僕ができたこと

休職してもなお鳴り止まないスマホ。誰とも関われなくなっていく親友に、僕は何ができるのか。
うつから無気力へ――揺れ動く彼の心に、何度も無力さを痛感しながらも、「そばにいることの力」を信じて、僕は静かに一歩を踏み出した。
これは、支えたいと願ったひとりの友の物語。
そして、心理の道へと進む僕自身の、原点の記録。

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