DEVIATION 人生の回り道
DEVIATIONという言葉を、最近になって初めて知った。
船乗り用語で、想定した航路から逸脱することを意味するらしい。
そのズレが大惨事に繋がる可能性もあることを考えると、船乗りにとっては生死にかかわる意味を持つ言葉なのかもしれない。
元船乗りの先輩から聞いた、若かりし日のほろ苦い恋の思い出話を、エッセイに綴った。
先輩から届いた感想文の中に、この言葉があった。
若い頃の恋愛について振り返りながら、結ばれることのなかった相手との日々を
「人生のDEVIATIONだったのかもしれない」
と綴っていた。
私がその恋愛の思い出を「恋愛航跡史」と表現したのに呼応して、船乗りの言葉で返してきたのだ。
その洒脱なワードセンスに、思わず敬服させられた。
本来の航路からの、ずれ。
回り道。
寄り道。
船乗りらしい表現だと思った。
同時に、深く納得もした。
人生は、目的地のわからない航海のようなものだと思う。
何が正しい方角なのか、はっきりとわからないまま進んでいく。
何度も迷い、遠回りをして、時には引き返す。
そのたびに少しずつ、進むべき方向を確かめ直す。
それは失敗でも、無駄でもない。
航海には、必ずDEVIATIONがある。
私自身の人生にも、いくつものDEVIATIONがあった。
組織に馴染めなかった35年間。
成功している人をうまく真似ることができずに落ちこぼれた、ビジネススクールでの経験。
迷走を繰り返した退職後の日々。
今になって振り返れば、そのすべてが、今の場所につながる回り道だったと思える。
今回、DEVIATIONという言葉を知ってから、自分の歩んで来た道を、少しだけ違う目で見られるようになった。
未来はきっと、回り道の先にある。
