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【BTS】何故HYBEはマルチレーベルを選んだのか【Big Hit】


【追記:2025/8/3】HYBEのマルチレーベルに関する記事が出ていたので、「関連記事」に追加

組織図を見ながらマルチレーベルを考えた

以前何となくHYBE の組織図を作ってみた私。理由は特にないです。見てみたかったから?

先日更新したところ、「何故マルチレーベルにするの?」という疑問をいただきました。あっその疑問は持ったことがなかったですね!

私にとって、HYBE のマルチレーベル化は「そうなるよね」くらいの受け止め方でした。
BTSにハマるまでK-POPを知らずに生きてきて、別業種の常識を修正しながらこの界隈を見ているので、一般的な意見ではないかもしれませんが🤣

今日は是非、何故私がそう思うのかを語らせてください!
ちなみにこれは私が読み漁った記事やインタビューから理解した内容なので、「真実はこうだ!」というわけではありません。その点だけよろしくお願いいたします。

※こちらをご参照いただくと、わかりやすいかもしれません。

HYBEがBig Hitだった時代の話

BTSの所属事務所であるHYBEは、今やK-POP界最大の企業グループであり、世界拠点を増やしてグローバルな展開を続けています。
しかし前身であるBig Hit Entertainment創立は2005年で、その歴史は意外に浅く、最初はパン・シヒョク(以下パンPD)が作った弱小事務所にすぎませんでした。

貧乏弱小事務所時代のBig Hit

パンPDがJYPでプロデューサーとして働いていた縁から、Big Hitは最初の頃JYPと仕事をしていました。

やがて、同じくJYP出身のソ・ソンジンとも縁ができ、彼が建てたSOURCE MUSICと一緒に、ガールズグループ「GLAM」を育てています。作詞作曲やバックダンサーにバンタンも参加していましたが、売れる前に不祥事を起こして解散。

2012/07/16 デビュー(練習生時代は3年ほど)
2015/01/15 解散

GLAM

K-POP界隈は、「事務所がお金をかけてアイドルを育て、デビュー後返してもらう」システムで成り立っているため、早期に解散されると元が取れません。これは経済的に大きな打撃だったと思われます。

他事務所と共同輩出したグループとも契約が切れ、イ・ヒョンさんも兵役へ行き(2012~2015)、GLAMは解散。
収入の柱になれるアーティストがいない中、資金調達のためBig Hitは2015年に転換社債を出しています(2016に完済)。

2013年のバンタンデビューから2015年「花様年華」で一気に売れる頃までの期間は、事務所の内情が厳しかった時期と丸被りしてるように思います。

彼らの思い出話にもよく貧乏時代の話が出て来ますが、体からの熱気で曇る鏡を新聞紙で拭いたとか、雨が降ると床に水が溜まったとか、調味料が買えなくてジン君が自腹で買ったとか、具体的すぎて涙が出ます。
宿舎の維持すらピンチで、「追い出されそうになったから抵抗した」という有名なエピソードがありますね。バンタン全員地方出身なので、粘れて本当に良かったです(結局宿舎は維持され、彼らは異例の長期間に渡り、共に暮らし続けます)。

BTSのヒットによる業績の回復

売れた次に来る問題

アルバム「花様年華」で無事売れ始めたバンタン。
次に来る問題は、「次をどうするか」です。会社のリソースを新しいアーティストに振り分けるか、ということですね。

初期の資金難もあってBig Hitの初期スタッフ数はあまり増えず、少人数体勢が続いていたようです。
BTSが売れた後も一気に人は増やさず、しばらく慎重に様子を見たという話もありました。

ナムさん
「会社のスタッフが10人しかいなかった頃なのに、当時メンタルケアもしてくれて、パーソナルトレーニングも受けさせてくれて……」

「【HYBE/T&D】新人育成チームとジミンちゃんの守護天使【K-POP】」より

K-POP界では、ヒットグループが出たら次を育てるのが通例です。
自転車操業みたいですが、次々育てて送り出し、グループのピークを連続させていく仕組みであるように思います。

しかしパンPDとBig Hitは、バンタンの可能性に賭けることにしました。
ハーバードBSの論文で、パンPDは「次へシフトするかどうか真剣に考えたが、BTSの可能性を信じ、推し進めることにした。それは正しかった」と述べています。実際、2017年には1兆ウォン企業となっています。

これにより、次のグループ(TXT)をデビューさせるまでには、6年という異例の期間がかかりました。余談ですが、8月に来るという噂の新ボーイズグループも6年間隔になりますね( *´艸`)

・2012年 「GLAM」デビュー(SOURCE MUSICと合同)→2015年解散
・2013年 「防弾少年団」デビュー
・2019年 「TOMORROW X TOGETHER」デビュー

バンタン前後にBig Hit Entertainmentからデビューしたアーティスト

D-DAYは2020年

バンタンを信じ彼らに全振りしようと決めたBig Hit。しかし、ここで更なる問題が発生します。
Big Hitの財政状況はバンタンの人気により息を吹き返しましたが、事務所の利益のほとんどを彼らに頼っている、非常にリスキーな状態でした。

2013年にデビューしたBTSの契約は、通常の7年契約だと2020年まで。
K-POPにおける「7年目のジンクス」とされる解散や脱退の多い時期が、そしてその先には、韓国人男性として避けられない兵役が待っています。

もしバンタンが再契約を選ばなかったら、どうなるのか。兵役に行けば完全体復活には何年かかるのか、軍白期で人気が落ちるのではないか。その間、会社と雇用をどう維持していくのか。
これはBig Hitにとって死活問題です。会社として「BTSの可能性を信じ、推し進める」ためには、これを解決しなければなりません。

この問題がいつから検討されたかはわかりませんが、少なくとも2018までにはかなり議論が交わされたと思われます。
パンPDのインタビューによると、2018年の時点で、彼らはもう兵役についても話し合っているからです。

最近メンバーが兵役から戻りつつありますが、当初の予定では『ON』リリース後ワルツを経て兵役、という予定だったようです。BTSとHYBEにとってのD-DAYは、2020年だったと言えるでしょう。

インタビュー発言を見る限りでは、BTS側は2020年の『ON』発表後のツアーを区切りとして、順次兵役に入る予定だったようですね。
HYBEの株式上場も2020年なので、会社を含め皆が軍白期を受け止める覚悟をしていた時期なのだと思われます。

「【MUSE/MMM】BTSが歌わない感情【ミニモニ】」より

最大の転機は2018年の契約更新

バンタンは2018年に最初の契約更新をしています。通常より2年も早い更新に世間は驚きましたが、これは必須だったように感じられます。BTSに依存している会社が次へ進むには、BTSの確保が必要だからです。

・会社とBTSは、次の7年もこの成功を続けられるだろうか、と話し合った。
・BTSは「7年間一緒に頑張る覚悟がある」「これまでの成功に対する正当な評価を契約に反映してほしい」と求めた。
・会社は専門家への相談を勧めたが、BTSは弁護士や代理人を同席させることなく直接会社側と話し合いを行い、契約時も同様だった。
・交渉では、金銭的な話題よりも「ファンや顧客に何を提供する必要があるか」という点に焦点が当てられた。

「【練習生】BTSと契約更新【専属契約】」より(原典はハーバードBS論文)

2018年には解散も考えたと、後にジン君が話しています。この時、彼らは自分の人生だけでなく共に育ってきた会社の生死も握る状況であったため、非常に重い決断を迫られていたのではないでしょうか。
未来の保証がない中、バンタンがこの船に再び全員で乗る決断をしてくれたことには感謝しかありませんし、そこには彼ら自身の強い意志を感じます。

BTSがくれた時間をどう生かすか

「マルチレーベル戦略」を選んだ理由

BTSが再契約に同意した後、HYBEは事務所を拡大させ始めます。マルチレーベルへの道が、この再契約から始まったと言っていいと思われます。

主な各レーベルの参入時期
・2019年:SOURCE MUSIC(買収)
・2019年:BELIFT LAB(CJ ENMと合弁)
・2020年:PLEDIS ENTERTAINMENT(買収)
・2020年:KOZ ENTERTAINMENT(買収)
・2021年:ADOR(HYBE設立)

2020/10/15に韓国の有価証券市場に上場、2021/3/30「HYBE」に改名

BTSがくれた、次の7年。
その間に、Big HitはBTSがいなくなっても生き延びられるようにならなければなりません。それが、彼らがくれた信頼に応える道であり、会社として存続するただ1つの方法なのです。

ではどうすればいいのか。2018年には、バンタンは既に国連スピーチを行い、「Love Yourself」ツアーに出ています。
今から新人を育ててデビューさせても、BTSの軍白期には間に合いませんし、彼らの穴を埋めるには足りないでしょう。

Big Hitは当時、人も時間も不足していました。
この言い方は語弊があるかもしれませんが、そもそもBig Hitは三大事務所が強いK-POP業界でいきなり急成長した新規事務所であるため、組織としての地盤がそこまで強くないのです。

「マルチレーベル戦略」は、Big Hitに不足していた「リソース」を補う、唯一のショートカットルートであり、これを選んだのは必然と言えます。

マルチレーベル戦略とはどういうシステムか

これは、既に中堅の実力を持つ事務所を傘下に入れ、それぞれの独立性を保ちつつグループの一部として扱う方式です。
Disneyの下でピクサーやマーベルが個性を発揮しているのと同じように、本社の資金や組織力を使い、下部組織の独自性を保ったまま組織を拡大するやり方だと思います。新卒より中途採用を選び即戦力を取った、時間を買った、という例え方もできますね。

子レーベルをそのまま維持することで、それぞれの文化やスタイルが残りますし、資金のみならずWeverse運営や法的対応などのHYBEリソースを共有できるため、現場はアーティストへ注力しやすくなります。
市場ごとの対応も容易ですし、いざとなれば分割もできるため、経営戦略の幅も広がります。

これまでのK-POPのやり方とは違うかもしれません。ただ、非常に合理的だと思います。
これまでの業界の方法では生き残れなかったからこそ、新しい方法を生み出す必要が生まれ、それが功を奏したのが、今の形なのではないでしょうか。

こうして会社規模を拡大し、上場を果たしたBig Hitは「HYBE」に改名し、ただの音楽事務所ではない、複合企業として本格的に歩み始めました。
これにより、HYBEは「BTSの不在」を乗り越えるための、強固な基盤を築いたと言えます。

マルチレーベルの生む影響

どんな手法にもメリット・デメリットがありますが、三大事務所やTV局に対抗できる力をつけ、発言力を伸ばし、バンタンの戻る場所を確保するためには、会社を大きくするしかありません。

ミン・ヒジン(元ADORのCEO、現在背任容疑で裁判中)のような件もありましたが、決算を見る限りでは、この選択は総合的に良い方向へ向かったように思われます。なんだかんだで最大の危機である「BTSの軍白期」を乗り越えましたからね。

ちなみにTV局との戦いについては、自分が韓国のTVを見ないので「バンタン売れたからもう国内では出ないのかな」などと思っていたのですが、和解の記事で揉めてたことを知り、驚きました。

2019年末、BTSはアメリカ・ニューヨークのカウントダウンライブに出演するため、韓国の年末歌謡祭へ出演しませんでした。MBCはこれに怒り、報復措置として、TXTを含むHYBE所属アーティストの番組出演を排除し、HYBEもそれに対抗したと言われています。
2023年にはMBCとHYBEが正式に和解しました。

事件要約

BTSという世界的グループの成功を武器に、テレビ局に依存しない道を選び、SNS・YouTube・Weverseなど独自の発信力を育てていくHYBE。
MBCとの和解は、HYBEがもう「地上波に頼らずともやっていける存在」であるという証明であるようにも見えました。

拡大を止めないHYBE

何故同業者を引き抜くのか

HYBEのマルチレーベル化に際し、「何故同業者を引き抜くのか」という意見を聞いたことがあります。

これは個人的な意見ですが、他にいないからだと思います。
韓国の人口は日本の半分以下で、エンタメ業界はソウルに集中しています。業界自体が若いので、業界人口もそこまで多くないと思われます。

BTSの成功によって、HYBEは一気にグローバル企業に拡大しましたが、巨大企業に相応しい人材の確保が追いつかない、はあるあるだと思います。
三大事務所(SM・JYP・YG)が牛耳る構造の中で、新興のBig Hitは常に人材不足と戦っていたのではないでしょうか。

即戦力の経験者を外から補充せざるを得ないとなると、同業者を勧誘することになります。そのためHYBEは業界内からも人を集めると同時に、ゲーム業界などの親和性の高い異業種からも積極的に登用しています。
ちなみに何故ゲームかと言うと、韓国はネットゲームが強いので、ゲーム業界にネットワークやIT系の人材が多くいるからです。

ちなみに、登用した後は後でまとめるのが大変、もあるあるです。人材教育は本当に時間がかかりますからね……。ファイティン!

企業文化の観点から見ると、新しい社員の急激な流入によって、HYBEの文化を維持することが非常に難しくなっています。HYBEは、比較的体系的で現実的な価値観を保持し、それを共有するために努力を続けています。
しかし、毎年ほぼ倍増するようなスピードで社員が増える中で、すべての人を一つの統一された価値観のもとにまとめることは決して容易ではありません。
特にパンデミック中は、対面での交流がほとんどなく、バーチャルな環境での業務を余儀なくされたため、企業文化が崩れていくのを見るのは私にとって辛い経験でした。

「【和訳】パンPDが語るK-POPの未来、BTSモデル、AI計画【インタビュー】」より

広がり続けるHYBEの版図

BTSの契約問題・軍白期というリスクを越えてもなお、拡大を止めないように見えるHYBE。それは何故なのでしょうか。

現在のHYBEは、K-POP唯一の「コングロマリット(企業連合体)」であり、世界的エンタメ企業でもあります。

他の事務所は子会社含め、基本芸能中心の業種

しかし、HYBE LATIN AMERICAやHYBE CHINAの設立など、拡大路線は留まるところを知らないように見えます。それは何故でしょうか?

理由の一つに、HYBEが目指しているターゲットが既に世界だから、と言うのがあると思います。今のHYBEはグローバル化した複合企業ですから、ライバルは韓国の音楽事務所ではなく、ワーナーやソニーといったメジャーレーベル(いわゆる「BIG3」)になります。

イ・スマンからのSMエンタ株式買い付けが成功していれば、先に韓国音楽業界制覇に行ったかもしれませんが、結果的にはそうならず、持ち株をテンセントに売却することで中国資本との縁および資金を手に入れ、世界進出に本腰を入れたように見えます。

SM創業者のイ・スマンと現経営陣との間で対立が発生した際、イ・スマンはHYBEに持ち株売却を持ちかけた。HYBEはSMエンタの経営権取得を目指したが、泥沼になったので撤退。この時カカオ(SMの親会社)が株価操作をした疑惑で、現在裁判進行中。
後にHYBEはSM株を中国資本のテンセントに売却した。

何となくで聞いて欲しいSM株の話

もう一つの理由としては、これは私の妄想濃いめですが、韓国は政治と業界・市民が強く結び付いている国です。一般的な日本人の感覚だと驚かされることがしばしば起こります。
それはお国柄や国民性でもありますが、グローバル展開していく上では予期せぬリスクを生む可能性も、排除しきれません。

HYBEの組織図を見ていると、いつHYBE AMERICAやHYBE JAPAN(現YXレーベル)が本社になってもいいのでは、と思うことがあります。
税金対策で本社だけ他国に移動するとか、本国の干渉や政治危機を逃れてアメリカへ移転するとか、そういう話は他業種ではよくあることですが、韓国でそれをやったら裏切り者扱いになるでしょうから、そうなる可能性は低いでしょう。――でも、ゼロではないですね。

世の中何が起きるかわからないので、組織に柔軟性を持たせることはリスクヘッジとしても、経営戦略としても、重要だと思います。

HYBEは、“K”を超えるのか

K-POPから出たHYBEが「K」を捨てるのか、それともその王冠を戴いたまま世界と対抗するのか。これは非常に興味深いテーマです。
既にバンタンはK-POPの枠からはみ出し、欧米チャートと真向勝負しており、世界は変化を迎えています。これは遠い未来の話ではなく、変革はすぐ傍にあるような予感もします。

兵役から戻ったBTSが、そしてHYBEが今後どのような嵐を巻き起こすのか、どちらも規格外なので予想がつきませんが、私はファンダムの隅っこからワクワクと行く末を見守りたいと思います。楽しみ( *´艸`)


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現在、HYBE傘下には10個以上の独立レーベルが存在し、それぞれが独自にアーティストを発掘・育成する仕組みで運営されている。
このような構造はワーナーミュージック、ソニーミュージック、ユニバーサルミュージックなどグローバルメジャー3社が数十年間構築してきたマルチレーベル戦略と似ている。メジャー3社は、各地域のローカルレーベルに基づいて様々な音楽の色彩とアーティストを奨励し、ポートフォリオを広げてきた。
グローバルメジャー3社と比べると、HYBEだけの差別点も明らかだ。アーティストマネジメントにとどまらず、各レーベルの独立した発掘・育成体系とこれを裏付ける知的財産権(IP)事業インフラ、ファンダムプラットフォームWeverseなどを有機的に連結した統合構造を備えた。

ニューシス「하이브, '멀티 레이블 시스템' 진화 중…'글로벌 메이저'로 향한다(HYBE、「マルチレーベルシステム」進化中…「グローバルメジャー」に向かう)」より

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