【和訳】パンPDが語るK-POPの未来、BTSモデル、AI計画【インタビュー】
Billboard誌による、パンPDへのインタビュー
Xで一部を見かけて、全体像を知りたいと思い、探してきた記事です。めっちゃ長い!
内容はかなりビジネス寄りですが、パンPDがどういう考え方をする人で、何を計画しているのか、を窺い知ることができて、非常に興味深かったです。
注意書き
申し訳ないですが、素人仕事なので品質保証はしかねます💦
引用する時は、この記事へのリンクを貼っていただければと思います。
※読みやすさ重視のため、一部改行を追加しています。
※ビジネス寄りの話なため、自分が理解できなかったところには注釈を挟んでいます。また補足として、関連する動画や記事を挿入しています。
HYBE議長、パン・シヒョク氏が語るK-POPの未来、BTSモデル、AI計画など
音楽業界とグローバルな野望に対するビジョンをソウルで語る
ハンナ・カープ著 2023年4月24日
3月、パン・シヒョク氏は、自身の会社にとって最大のライバルの一つであるSMエンターテインメントの買収を検討していた際、プライベートな時間が必要だと感じました。
そこで、50歳のHYBE創業者兼議長は、ソウルの自宅に閉じこもり、親しい友人からの電話も断ち、慎重にリストを作成しました。
それは、長年の夢であった、世界で最も人気のあるボーイズバンドBTSをNCT DREAM、SuperM、aespaといった韓国を代表する数多くのアーティストと同じ屋根の下に迎え入れることが現実化した場合、生じるメリットとデメリットをすべて書き出したものでした。
「数日間一人で過ごし、すべてを検討した後、いつもアドバイスを求めているメンター(訳注:経営コンサルタント・尊敬する経営者などに相当?)に連絡しました。正直なところ、彼らはこのアイデアに反対していました」
とある金曜、パン氏はソウルのオフィスでそう語りました。
そのオフィスは、迷路のようなレコーディングスタジオの一角にあり、ギター、ホワイトボード、そして小さな窓を備えた質素な空間です。
彼は、そうした懸念を聞いた後、メリットとデメリットのリストを再検討しましたが、それでも前に進むことを決意しました。
「個人的には、ビジネス上の問題に感情をあまり持ち込まないようにしていますが、社内からの反発がかなり大きかったので、そちらの方が難しい部分でした」と彼は続けます。
チャンスは2月、パン氏がロサンゼルスで、アトランタのヒップホップレーベル兼マネジメント会社であるQuality Controlを3億ドルで買収するという、全く異なる大型契約を最終調整している最中に訪れました。
2つのタイムゾーンをまたいでほとんど眠らずに働き、日中はアメリカの新しいパートナーと会い、夜は韓国の同僚と話すという慌ただしい日々の中、SMの創業者であり、名高いレコードプロデューサーであるイ・スマン氏が、HYBEに自身の持つSM株の15%の大部分を売却するという驚きの申し出をしたのです。
パン氏と彼の取締役会はこれを受け入れ、SMの株式をさらに25%買い増して筆頭株主になることを約束しました。
しかし、韓国のインターネット大手Kakaoがより高額な買収提案を行ったため、HYBEは最終的に買収を断念しました。現在、KakaoがSMを支配しています。
数週間後、黒いTシャツにトレードマークの眼鏡をかけ、冷たいコーン茶を飲みながら、パン氏は驚くほどの落ち着きを漂わせていました。
特に、SMをより手ごわい競争相手にし、アメリカ国内外への拡大という同じような野心的計画を持つ企業との、ハイリスクな企業戦争から撤退した数十億ドル規模の資産家にしては。
彼は「現時点では、結果に非常に満足しています」と語ります。
その理由の一つは、HYBEが2月に購入したSM株の売却によって、約8700万ドルの利益を得ることになるからです。
しかし、パン氏はまた、メンター(アジアの伝統に従い、名前を明かすことは控えています)が、経済が不安定な時期に、そのような高額な賭けをすることに対して警告していたことを指摘しました。
そして、HYBEがSMへの入札を取り下げた翌日にシリコンバレー銀行が破綻したことで、彼らが正しかったことを確信したと言います。
シリコンバレー銀行の破綻~の下りの意味:
メンターがパンPDに与えた、経済が不安定な時期に高額な投資をすることへの警告が、銀行の破綻によって裏付けられた、という意味。
メガディール(訳注:企業買収や合併などの大規模取引。イサカやQCの買収を指す)を次々と成立させ、音楽ビジネスのあり方を再構築している男の、アクション満載の人生へようこそ。
グローバルなレコードレーベルやマネジメント大手との提携、あるいはHYBEがアーティストのファンたちの情熱をより有効に活用するためのゲームやテクノロジー企業を物色するなど、彼のアイデアはK-POPの枠を超えて成長することにあり、その理由をK-POPが危機的な状況にあるからだと見ている人もいます。
K-POPスターの文化的影響力が増大しているにもかかわらず、韓国のK-POP輸出は2020年以降減少しています。
2022年には、Billboard Hot 100にランクインしたK-POPは2021年より53%減少し、東南アジアでのK-POP消費は不可解な現象を見せています。
これらの傾向は、「最前線にいる人々にとって憂慮すべきことだ」と、パン氏は3月のソウルでの会議で述べました。
その会議で彼は、K-POPの未来を強化するための3つの段階からなる計画を概説しました。
第1段階:Quality Controlのような海外企業を買収することで、K-POPのグローバルな影響力を拡大する。
第2段階:「スーパースターを継続的に生み出す」ことができる運営体制を構築する。
第3段階:HYBEのWeverseのような、ファンとアーティストの交流を収益化するためのプラットフォームを拡大する。
Weverseは現在、ダイレクトメッセージ、ファン活動を評価する特別なバッジ、Jellyと呼ばれるデジタル通貨など、さまざまな新機能を導入しています。
「今こそ、危機感を持つべき時だと思います」と彼は述べました。
パン氏は2005年にBig Hit Entertainmentを設立し、10年前にBTSをデビューさせました。グループを編成し、音楽を作詞作曲し、マーケティングからソーシャルメディアコンテンツまで、すべてを監督しました。しかし、成功はゆっくりとしたペースで進みました。
韓国での成功に苦戦した後、アメリカ市場でブレイクさせることを決意した彼は、2017年のビルボード・ミュージックアワードにグループを連れて行き、Top Social Artist賞を受賞しました。
その後すぐに、世界中のスタジアムをツアーで回り、メンバーが兵役を終えるためグループが一時的に活動休止することを発表するまでに、Hot 100で6つのNo.1ヒットを記録しました。
しかし、彼自身がアメリカの音楽ビジネスでよく知られるようになったのはごく最近のことです。2021年にスクーター・ブラウンのイサカ・ホールディングスを10億ドル以上で買収するまで、彼とは数回Zoomで話しただけでした。Billboardの計算によると、ブラウンの純資産も10億ドルを超えました。
「彼のビジョンは私の人生を変えました」とブラウンは言います。
(ブラウンは2019年7月、3.3億ドルでビッグマシーン・レーベル・グループを買収した際、その一環として1.4億ドルと評価されていたテイラー・スウィフトのカタログを取得し、最終的にそれをシャムロック・キャピタルに2.65億ドルで売却し、1.25億ドルの利益を得ていました。
その後、ブラウンがイサカをHYBEに売却する頃には、ワーナー・ミュージック・グループ(2020年)とユニバーサル・ミュージック・グループ(2021年)の株式公開、さらにテンセント・ミュージック・エンターテインメントによるUMGへの投資などの影響で、マスター録音の価値が急騰していました。
結果として、ビッグマシーンの残りの資産だけで、ブラウンは約4億ドルの利益を得ることになりました)
()書きの内容:
ブラウンはビッグマシーンを買収し、スウィフトのカタログを売って、残りの資産も高騰したタイミングで売却したことで、高額の利益を得た
契約成立後、ブラウンは初めてソウルを訪れた際、パン氏と経営幹部チーム全員にパネライの時計をプレゼントしました。
これは、彼が20年前にアトランタのレノックス・モールで一番高級な時計店で見つけた、最初のクライアントであるアッシャー・ロスの最初のヒットを祝うために、自分のチームに買ったのと同じモデルでした。
「人々は私がいつ業界から手を引くのかと思っているでしょうが、私はあの男(訳注:パンPD)のため全力で働いているんですよ」とブラウンは続けます。
「彼は必ず、何か本当に壮大なものを築き上げると信じています」
2021年、HYBEはUMGとの戦略的なグローバルパートナーシップを発表し、BTSの6つのNo.1をリリースしたソニーのコロムビア・レコードと袂を分かちました。
これは、UMGの会長兼CEOであるルシアン・グレンジと、インタースコープ・ゲフィンA&Mの会長兼CEOであるジョン・ジャニックが、パンデミックの間に定期的なZoom会議を通じてパン氏と知り合ったためです。
HYBEとゲフィンは、K-POPのトレーニングと開発システムをモデルとして、UMGのゲフィン・レコードによって開発される、アメリカを拠点とするグループのオーディションを発表しました(当初はボーイズバンドとして計画されていましたが、現在はガールズグループです)。
また、UMGはHYBEのWeverseプラットフォームを通じて、アーティストとの直接的なコミュニケーションを強化することを検討すると発表しました。

しかし、ビジネスの才能を持ちながらも、パン氏はクリエイターとしての心を忘れず、現在もENHYPEN、TOMORROW X TOGETHER、&TEAMのために、スタジオに出入りして新曲やビジュアルを制作しています。
Quality Controlの創設者であるケビン “Coach K” リーとピエール “P” トーマスが、ロサンゼルスのパン氏の自宅で初めて夕食を共にした際、彼らはリル・ヨッティの『Let's Start Here』を、サンプルを一切使わずに制作した過程について話し合いました。
「彼はそのプロダクションにとても興味を持っていました。しっかりとチェックしていて、よく理解していたんです。彼自身プロデューサーですからね」とリーは回想します。
リーとトーマスは5月に初めて韓国を訪れる予定で、リーはすでに韓国語の「こんにちは」をマスターしたという。その間も彼らはHYBEとQuality ControlのWhatsAppグループチャットを通じて、パン氏と連絡を取り続けています。
また、トーマスはパン氏の明るく楽しげなエネルギーに惹かれたと語り、「彼は僕たちの文化やアーティストについて本当によく知っていました。しっかりとリサーチをしていたんです。」とその印象を語りました。
パン氏とLE SSERAFIMのファーストスタジオアルバムを制作したナイル・ロジャースは、こう語ります。
「彼が素晴らしいギタリストであり作曲家でもあることは、あまり知られていません。LE SSERAFIMの新曲『Unforgiven』で、彼がエンニオ・モリコーネの『The Good, The Bad and The Ugly(続・夕陽のガンマン)』のテーマを取り入れた手法は、まさに彼の音楽的才能を示しています」
国際的な取引にはつきものの忙しさを完全に避けることは難しいですが、パン氏は一般的なレコード会社の会長が守るようなスケジュールには縛られないようにしています。
「ルーティンは生産性を高めるのに役立つと言う人も多いですが、私はできるだけリラックスして怠け者でいるのが好きです。すでに忙しいスケジュールの上にルーティンまで設けると、のんびりする時間が奪われてしまう気がします」とパン氏は述べています。
彼の理想的な怠け方とは、ロサンゼルスにいる時は本や漫画を読んだり、泳いだりすることです。
「眠くなると、つい居眠りしてしまうこともあります」
オフィスビルの屋上にある開放的なカフェテリアからは、ソウルの漢江とその向こうに広がる桜の咲き誇る街並みが見渡せます。そこでパン氏は通訳を通して(彼は気が置けないアメリカの同僚とは英語で話しますが、インタビューは韓国語で行うことを好みます)、K-POPの未来と世界制覇のビジョンについて詳しく語りました。
Q.: 韓国の東南アジアへの音楽輸出は、K-POPの最も重要な市場の1つですが、2022年には30%減少しました。また、世界で4番目に人口の多い国であるインドネシアでは、SpotifyのチャートにおけるK-POPのシェアが28%減少しました。K-POPの成長が鈍化しているのはなぜでしょうか?
BTSが現在活動していないことが影響しています。認知度に関する調査を見てみると、グローバル市場におけるK-POPとBTSの普及率を比較した場合、BTSの方がK-POP自体よりも普及している傾向があります。
しかし、東南アジア市場におけるK-POPの成長が鈍化していることについては、特別な理由があるはずです。ポップカルチャーの消費に関する好みが少し変わったのかもしれませんし、他の文化コンテンツを見ているのかもしれません。
当社としては今のところ確信はありません。積極的に調査を行っています。
国別のGoogle Trendsを見ていても、「ここ、K-POPが好きって言うよりBTSが好きなんやな……」って思う国があります。
Q.: Quality Controlの買収によってヒップホップに足場を築いた今、ラテン音楽ビジネスのパートナーを探すことに注力しているとのことですが、進捗状況はいかがですか?
昨年から多くの企業や創業者と会っています。そして、ボーイズグループやガールズグループがそれらの市場で成功するために適応する方法を見つける必要があります。

Q.: ということは、他のジャンルで活動する企業を買収するのは、韓国のモデルを適用して、それらのジャンルでボーイズバンドやガールズグループを作ることが目的ですか?
必ずしもポップの手法を他のジャンルに適用するつもりはありません。私たちがやろうとしているのは、HYBEの運営システムとテクノロジーを活用し、各ジャンルのトップレーベルを買収することです。私たちは相乗効果を期待しています。そうすることで、アメリカ市場での存在感を向上させ、高めたいと考えています。
カントリーミュージックのボーイズグループを作るつもりだと言っているわけではありません。それは今私たちが求めているものではありません。
しかし、ポップやラテン音楽では、ボーイズバンドやガールズグループの需要がすでに証明されています。私たちはK-POP業界で得た経験を応用し、それらの市場の基本的なルールに従おうとしています。
Q.: これまで他のK-POPアーティストがBTSの世界的成功に迫ることさえできていない中で、あなたはその成功を再現できると思いますか?
もしあなたの質問が、BTSのようなアーティストを再び作り出す可能性についてであるならば、答えはノーです。
しかし、HYBEからBillboard Hot 100チャートで1位を獲得するK-POPアーティストが現れるかどうかを尋ねられたら、答えはイエスです。
(ジミンは4月3日にシングル「Like Crazy」が初登場1位となり、ソロアーティストとしてこれを達成した最初のBTSメンバーになりました)
BTSのマネジメントと様々なレーベルを運営した経験から、強力なネットワーク、インフラ、経験を得ることができました。これらの力があれば、HYBEは才能あるアーティストの助けを借りて、目覚ましい成果を繰り返すことができるでしょう。
BTSは、グループとしてもソロとしても、Billboard chart historyにおいて最も成功したアーティストの一つである。
グループとして、BTSは25曲以上をHot 100にチャートインさせ、そのうち10曲がトップ10入り、6曲が1位を獲得している。
7人全員がソロでHot 100にチャートインを果たし、特にジミンとジョングクは単独で1位を獲得している。
Q.: 他にどのような資産の買収を検討していますか?
私たちの優先事項は、それぞれのジャンルをリードするレーベルと、強固で信頼できる関係に基づいたトップアーティストとの契約を持つマネジメント会社を買収することです。
ゲームビジネスについては、魅力的な知的財産、事業規模、開発能力を重視しています。メタバースやプラットフォーム事業も視野に入れ、テクノロジー分野の隠れたチャンピオン企業をさらに買収していく予定です。
Q.: 現在アメリカの視聴者に最も人気のある従来のボーイズバンドやガールズグループの外で、K-POPはどのように発展していくと思いますか?
K-POPの独自性と強みは、多人数で構成された単一性別のグループにあります。
そのため、HYBEはソロアーティストや男女混合グループではなく、複数のメンバーで構成されるアーティストのマネジメントとプロデュースにおいて、蓄積された専門知識を活用することに重点を置いています。
Q.: 長年、ボーイズバンドが売上を独占していましたが、現在では多くのガールズグループがより成功しているようです。この変化の背景には何があるのでしょうか? また、振り子は戻るのでしょうか?
ガールズグループの成功は、時代精神と関係があると思います。北米市場を見てみても、ポップやヒップホップの女性アーティストが目覚ましい成功を収めています。ガールズ・サポート・ガールズ文化の強化に伴い、女性アーティストに対する女性ファンの支持が急速に高まっています。
HYBEは3年前にSOURCE MUSICを買収し、新しいレーベルADORを立ち上げることで、このトレンドに歩調を合わせてきました。その結果、LE SSERAFIMやNewJeansのような優れたガールズグループを紹介できたことを誇りに思っています。
ガールズグループが収益面でボーイズグループを上回る日が来るかどうかについては、状況を注視していく必要があります。
ガールズグループがボーイズグループと同程度の収益を生み出すことを願っています。ガールズグループの成功の連鎖は始まったばかりであり、ボーイズグループに匹敵する収益を生み出すには至っていません。
また、アーティストの人気上昇とファンの購買意欲との間に、明確な相関関係はありません。
K-POPの場合、人気はガールズグループの方が高いが(兵役がないこともあり)、購買力はボーイズグループファンの方が高い、という傾向がある様子
Q.: K-POPファンは、グッズやフィジカルアルバムの購入に熱心です。なぜその熱意が、ストリーミングプラットフォームで同じように発揮されないのでしょうか?
私は消費パターンがストリーミングプラットフォームを中心に再構築されることを望んではいません。K-POPアーティストは、より効果的な収益モデルを構築してきました。
ストリーミングプラットフォームでのシェアを拡大しながら、現在の成長を継続したいと考えていますが、ビジネスの観点から特別な戦略を立てる必要はありません。
NewJeansは北米でオフラインのプロモーション活動を一切行わずにBillboard Hot 100チャートにランクインし、LE SSERAFIMはSpotifyで驚異的な速さでオーディエンスを増やしています。
質問の背景と回答の意味:
欧米の音楽市場ではストリーミングが主流になっているのに対し、K-POP市場ではフィジカル販売が主流なのは何故かという問いに対し、パンPDはK-POP市場はアルバム販売やグッズ販売など、より多様な収益モデルを構築してきたため、ストリーミング偏重戦略を取る必要がないというスタンス。
Q.: 他の国やジャンルのアーティストでも、K-POP のように組織化され、熱心なファン集団を築けると思いますか?
企業やアーティストはファンのニーズに応えることで、大規模なファンダムを育てることはできると思いますが、それを組織化したり形作ったりすることはできません。
Q.: 最近のソウルでのスピーチで、あなたは「K-POPは、グローバル市場においてゴリアテのような3大企業を前にしたダビデのような存在だ」と述べ、K-POPがこうしたグローバルな流通企業に対して交渉力を高めるためには「ある程度の規模に達する必要がある」と発言しました。あなたは大手レコード会社を、パートナーというより競争相手と見ていますか?
私は彼らを競争相手だと思ったことは一度もありません。常にパートナーだと考えています。これは、ルシアン(訳注:UMGの会長兼CEOであるルシアン・グレンジ)が私の回答を読むかもしれないから言っているわけではありませんよ(笑)
市場シェアを増やすこと自体は、私にとってあまり意味はありません。シェアを拡大するためには、より多くのレーベルを買収する必要がありますし、運営コストもかかります。それを賄うためには、他の事業の進行を遅らせる必要が出てきますし、莫大な時間と労力も求められます。それは、私たちが目指している方向ではありません。
私たちの会社は、音楽を基盤としたライフスタイル・プラットフォーム企業です。K-POPビジネスで培った経験、システム、技術を応用することで、グローバル市場における企業の規模と影響力を拡大していきたいと考えています。もちろん、グローバルな音楽市場でのシェアを全く気にしていないと言えば誇張になりますが、それが最も重要なことではありません。
Q.: ストリーミングサービスにアップロードされる音楽の量は指数関数的に増えており、各社の市場シェアが圧迫されつつあります。この状況を懸念していますか?
現時点で、当社の立場を考えると、音楽の量や供給元、プロデューサーの増加によって脅威を感じることはありません。K-POPの市場規模はまだ非常に小さく、成長の余地が十分にあります。私たちはむしろ市場の挑戦者という立場にあります。
メディアはますます個人化され、人々の好みも多様化しています。そのため、音楽の量が増えたとしても、それがK-POP市場の縮小につながるとは考えにくいです。
Q.: また、交渉力を強化すれば、より良い流通契約を結ぶことができ、「それによって企業の財務状況が改善し、会社とアーティストの成長につながる」ともおっしゃっていました。それなら、なぜ自社でコンテンツを配信しないのですか?
私は、専門分野は専門家に任せ、その対価として著作権使用料を支払う方が良いと考えています。3大企業はすでにその分野で非常に優れた成果を上げています。自社で流通を手がけるよりも、彼らとの交渉力を高め、私たちが支払う流通手数料を引き下げる方が利益も出ますし、私たちにとっても良いことです。
3大企業=音楽流通を専門とする大手企業=世界三大メジャーレーベル
・UMG(Universal Music Group)
・SME(Sony Music Entertainment)
・WMG(Warner Music Group)
Q.: あなたの会社は非常に速いスピードで成長しています。長い間、緊密な組織を運営してきた中で、この変化をどのように感じていますか?
急速な成長は喜ばしいことですが、同時に大きなジレンマも伴います。急成長している企業が成長の鈍化を迎えた時、その影響は一般的な企業よりもはるかに大きくなります。本来、成長のスピードは環境の変化に応じて柔軟に調整されるべきですが、急成長している企業にはその自由がありません。
社員の視点から見ると、会社の急成長は彼らの生活の質にも影響を与えかねません。
HYBEで働くことは、まるで飛んでいるロケットの上に乗っているようなものです。韓国では「走る虎の背に乗る」と表現することもあります。社員がそのスピードに耐えられる限り、会社と共に成長できます。しかし、もしそのスピードや変化が圧倒的すぎると、振り落とされてしまうこともあります。
皆、必死にそのスピードについていこうとしていますが、それが時には社員にとって負担になることもあります。
企業文化の観点から見ると、新しい社員の急激な流入によって、HYBEの文化を維持することが非常に難しくなっています。HYBEは、比較的体系的で現実的な価値観を保持し、それを共有するために努力を続けています。
しかし、毎年ほぼ倍増するようなスピードで社員が増える中で、すべての人を一つの統一された価値観のもとにまとめることは決して容易ではありません。
特にパンデミック中は、対面での交流がほとんどなく、バーチャルな環境での業務を余儀なくされたため、企業文化が崩れていくのを見るのは私にとって辛い経験でした。
状況がある程度正常化した今こそ、私たちは前を向いて進むべき時です。私たちは、現在のニーズに応え、社員の生活をもっと充実させるために、企業文化を刷新したいと考えています。
HYBEの企業文化が統一された価値観を維持してきたのは、それが普遍的な人間の価値観に基づいているからです。仕事に情熱を抱く優秀な人材が、責任を持って自由に協力し合うことで、その共有された信念が会社と社員双方の成長をもたらすと、私たちは信じています。
Q.: あなたは「ソリューション」ビジネスの重要性についてよくお話しされていますね。これはアメリカでは360ディールと呼ばれ、レコード会社にアーティストの収入源のすべてに対する権利を与える契約を指します。K-POP以外の領域にも事業を拡大する中で、そうした契約を結ぶことは可能でしょうか?
日本のようにソリューションビジネスの体制がすでに確立している市場では、ソリューションビジネスを加速させていくことになると思います。しかし、アメリカのような市場では、異なるアプローチを取る必要があるかもしれません。
ソリューションビジネス:ユーザーの課題解決を中心に据えたビジネスモデル。単なる製品やサービスの提供に留まらず、ニーズに応えることで長期的な信頼関係構築を目指す。
360ディール:音楽業界における契約形態の一つ。レコード会社がアーティストの全収入源(音楽販売、公演、グッズなど)に対する権利を持つ。
要するに?
K-POP業界では、アーティストと事務所の関係が密接であり、事務所がアーティストの活動全般――音楽販売だけでなく、公演、グッズ、スポンサーシップなどを管理・サポートする体制が一般的です。これは、360ディールとよく似ています。
しかし、どの地域でもこのビジネスモデルを適用できるわけではないため、各市場に合わせたやり方を探す必要があります。
Q.: カタログ購入者の中には、ファンがお気に入りの曲やアーティストに投資できるように、所有する音楽の権利を証券化する人もいます。Weverseプラットフォームでそのようなサービスを提供する予定はありますか?
私は以前、カタログを資産として捉えていました。債券の売買と非常に似ているため、まったく興味がありませんでした。また、経済状況の変動が激しいことを考えると、資産としてのカタログの価値は実際には低下しています。
しかし、HYBEにとってカタログは非常に強力な証券化商品になり得るものです。もちろん、私たちはそうしたビジネスには関心がありますし、いくつかの方法を検討しています。ただ、証券取引法の関係で、現時点でそれ以上の詳細はお話しできません。
カタログとは?
音楽業界における「カタログ」とは、特定のアーティストやレコード会社が所有する楽曲の著作権や原盤権の集合体のことで、近年投資対象として注目されています。最近だと『Butter』の著作権の一部が売買されたというニュースがありました。
Q.: 生成AIの台頭に向けて、HYBEはどのように準備を進めていますか?
私は以前から、音楽を創作・制作する主体が人間のままであり続けるとは限らないのではないかと疑問を持っていました。人間のニーズや嗜好を満たせるのが、人間のアーティストだけである時代が、どれほど続くのか分かりません。そして、この考えはHYBEの事業運営や戦略にも大きな影響を与えています。
私たちは、声を完全にクローンできる技術を持つ企業「Supertone」を買収することができました。
この技術は、単に声のトーンを再現するだけでなく、イントネーションまで忠実に再現できます。たとえば、あなたの声を録音し、それにアンジェリーナ・ジョリーのイントネーションや話し方を適用して、まったく別の声にすることも可能です。また、この技術を使えば、どの言語でもその人物の特徴を再現でき、声を年齢に応じて若返らせたり、年を取らせたりすることもできます。
現在、私たちはこの企業とともに小規模なプロジェクトをいくつか進めており、そのうちの一つは5月に公開・展開する予定です。社内では「プロジェクトL」と呼んでおり、まだ試験段階にあります。
Project Lは、音楽と技術を融合したアーティスト「MIDNATT(読み:ミッドナット)」のデビュープロジェクトとしてHYBE議長のバン・シヒョクが予告していたもので、スウェーデン語で「午前0時」を意味するMIDNATTは、BIGHIT MUSICのアーティストでありグループ8eightとしての活動でも知られる歌手イ・ヒョンのもう一つの自我であることが明らかとなり、Project Lを通じて本格的な活動に乗り出していくことが発表されました。
Q.: BTSのメンバーの声を模倣して利益を得る目的で、そのような技術が悪用されることを懸念していますか?
もちろん懸念はあります。しかし、それがこの技術の追求を妨げることはありません。できるだけ早く規制や制度が整備され、AIに関する社会的な合意が形成されるべきだと考えています。
最近、ハリウッドの全米脚本家組合(WGA)がAIによる脚本執筆を扱うための文書を作成しました。AIが脚本を書くことを禁止したり、AIの使用自体を避けたりするのではなく、社会の変化に適切に対応することが重要だと私は考えています。
Q.: スクーター・ブラウンとの仕事上の関係はどのようなものですか?
私たちは仕事に対して、個人的な親密さ、信頼、共感を持ち込んでいます。もちろん意見の相違が生じることもありますが、根本的な信念を共有しているため、共通の目標に向かって進むことができます。
スクーターはご存知の通り、非常に機敏に仕事をこなします。一方で、私はより慎重に物事を考え、最適な解決策を模索するタイプです。この違いがあるからこそ、信頼できる社員の助けを借りながら、会社にとって最良の結果を生み出せるのだと思います。
スクーターと私が共に働く上で最も素晴らしい点は、互いの信頼を言葉で多く説明する必要がないことです。彼と私は異なる大陸でキャリアを築いてきましたが、未来に対するビジョン、アーティストへの姿勢、人生哲学が驚くほど似ています。そのため、時には言葉の壁を超えて、信頼だけで物事を成し遂げることもあります。
Q.: 世界の音楽業界の経営者やクリエイターの中で、まだ会ったことがなく、最も一緒に仕事をしてみたい人物は誰ですか?
スクーター・ブラウンはHYBEの米国事業を統括しており、私は彼をとても信頼しているので、彼が推薦する人とは喜んで会いたいと思っています。
クリエイターの中では、ファレル・ウィリアムスに会ってみたいですね。ジミー・アイオヴィンがファレルを紹介してくれて、テキストで挨拶を交わしたことはあります。彼がルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターに就任した際には、お祝いのメッセージも送りました。
しかし、まだ直接お会いする機会はありません。
Q.: これまでにどのアーティストと会ったことがありますか?
最初に会ったのはザ・キッド・ラロイで、彼が『Stay』を制作しているスタジオでした。それ以来、時々ビデオ通話をしたり、彼のライブを観に行ったりしています。彼の人柄が好きですし、アーティストとしても尊敬しています。
HYBEがイサカ・ホールディングスを買収した当初、スクーターに「ラロイと一緒に仕事をしたい」と話していたのですが、その時にスクーターが「ちょうど彼と契約するところだ」と言ったのを聞いて、とても驚いたことを覚えています。
ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデとは、何度かビデオ通話をしたことがありますが、直接会ったことはまだありません。HYBE Americaの他のアーティストにも、まだ会う機会がありません。
正直なところ、アーティストと直接会うことが必須だとは思っていません。HYBEは、アーティストとの間に強い信頼関係を築いてきた、信頼できるマネジメントチームやレーベルを買収しました。したがって、私が彼らに直接会うことが、特に価値を生むわけではないでしょう。
もちろん、もしアーティスト側から会いたい、あるいはアドバイスを求めたいという要望があれば、いつでも歓迎します。ただ、私の方から積極的に対面の機会を設けることはないと思います。
これは、HYBEの韓国のレーベルに所属するアーティストについても同じです。
BTSは、彼らが若い頃から多くの親しい時間を共有してきたため例外ですが、それ以外のアーティストとは、基本的に彼らからの要望がある時にのみ会うようにしています。
それぞれのレーベルのリーダーたちが、アーティストと強い信頼関係を築いているので、私が直接関わる必要はないと考えています。

Q.: ツアーやコンサートのプロモーション事業について教えてください。それは成長の機会になりますか?
HYBEのコンサート事業部は、単にコンサートの企画・制作・実施を行うだけではなく、エージェンシーとしての役割やプロモーターとしての機能も兼ね備えたビジネス組織です。この点が、他のツアープロダクション会社やプロモーターと異なる点です。
私たちは、アーティストを深く理解した上でコンテンツを制作し、一貫したメッセージを通じて観客に没入感のある体験を提供しています。また、小規模なステージからスタジアム級のコンサートまで、さまざまな規模のショーを企画・制作できる能力と実績があります。
現在、HYBE JapanやHYBE Americaとの協力をさらに拡大する計画を進めており、それぞれの地域でコンサート・ツアービジネスをより強化していくことを目指しています。
また、2018年初頭から、自社でチケット事業を展開するべきかどうかを議論してきました。今後も議論の余地はありますが、NFT(非代替性トークン)などの技術が発展する中で、チケット業界に大きな変革が起こると予想されます。HYBEとしても、こうした変化を注視しながら、新たな可能性を模索していくつもりです。
NFTの具体的活用例:デジタルフォトカード
HYBEは2011年にDunamuと提携し、NFT事業に参入することを発表。2022年にデジタルコレクションプラットフォーム「MOMENTICA」をリリース。
HYBEはNFT事業を通じて、ファンダムを基盤とした新しいビジネスモデルを展開し、デジタル技術を活用してアーティストIPの価値を高めています。
Q.: 最近のスピーチで「今は5年後、10年後のことを考えて、パン・シヒョクの後を引き継ぐことができる人を育てるために多くの努力をしています」とおっしゃいました。それが実現した際、次は何をされますか?
私はまだ引退を考える立場ではありません。多くの責任を背負っているので、引退を考えるにはまだ時期尚早だと思います。
この業界に残るのであれば、非常に高齢になるまでこの会社で役割を果たし続けるか、別の会社を立ち上げるかですが、どちらも可能性は低いです。もしまったく異なる選択肢があれば、それを考慮するかもしれません。

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BIGHITの先輩、イ・ヒョンさんがMIDNATT名義で歌った曲『Masquerade』。
— 音色 (@thracia776_bts) March 15, 2025
Supertoneの音声AI技術が使われてて、字幕感覚で音声トラックを切り替えられる。面白い!
原語は韓国語なんだけど、日本語歌唱になる。#hybe #supertone
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