月案の「ねらい」が毎回"楽しむ"になる人へ。行動で書く言い換え30
月案の「ねらい」が毎回「楽しむ」になってしまう理由と、行動の言葉に変える具体的な言い換えを30例まとめました。
「楽しむ」「親しむ」「味わう」で埋まっていく月案
月末の夕方。 子どもたちが降園したあとの事務室で、来月の月案を開きます。
ねらいの欄に、こう書きます。
「秋の自然に親しみ、遊びを楽しむ」
書いてから、先月の月案を見返します。 「夏の水遊びを楽しむ」
その前の月も見ます。 「戸外遊びを楽しみ、体を動かすことを味わう」
……全部同じだ、と気づきます。
書き直そうとしても、代わりの言葉が出てきません。 「楽しむ」を消して、じゃあ何と書けばいいのか。 そのまま20分固まって、結局「楽しむ」に戻す。
私も、2年目3年目のころは、毎月これをやっていました。
なぜ「楽しむ」から抜け出せないのか
私は認定こども園で11年、0〜2歳児クラスを担任してきました。 そして夫は、保育士として10年、年少から年長までを担任したあと、いまは児童発達支援(療育)の現場で働いています。
夫婦で書類の話をするようになって、はっきり見えたことがあります。
「楽しむ」が悪いのではありません。 「楽しむ」しか出てこないのは、"評価できる形"を意識していないからです。
考えてみてください。 「秋の自然に親しみ、遊びを楽しむ」というねらいを立てたとき、月末にどうやって振り返りますか。
楽しんでいたかどうかは、子どもの心の中の話です。 外から見て確かめることが、できません。
だから振り返りも「楽しむ姿が見られた」としか書けなくなる。 そしてまた翌月、同じ言葉を書く。
このループの正体は、語彙不足ではなく、書き方の設計の問題なんです。
療育の書類が、園の月案よりも具体的な理由
夫が療育の現場で日々見ている個別支援計画の話を聞いたとき、正直おどろきました。
計画に書かれているのは、たとえばこういう文だそうです。
「支援者が声をかけた際に、5回中3回、自分から玩具を手渡すことができる」
回数まで書いてあるんです。 (※個別支援計画そのものは、児童発達支援管理責任者が作成します。夫はその計画に沿って支援を実行する側です)
最初に聞いたとき、私は「園の月案でここまで書いたら、細かすぎるのでは」と思いました。
でも、しばらく考えて気づきました。 療育の計画は、保護者と一緒に振り返ることが前提なんです。 だから「見て確かめられる形」で書く必要がある。
一方、園の月案は、担任が自分で書いて自分で振り返ることが多い。 だから曖昧なままでも、なんとなく回ってしまう。
でも、曖昧なまま回っている書類は、実は自分の首を絞めています。 振り返りが書けない。次の月案に活かせない。だからまた「楽しむ」を書く。
療育の「行動で書く」という発想を、園の月案に持ち込む。 これだけで、書ける言葉が一気に増えます。
「気持ちの言葉」を「行動の言葉」に変える
やることは、たったひとつです。
心の中で起きていること(気持ち)を、外から見えること(行動)に置き換える。
たとえば「秋の自然に親しむ」なら、こう考えます。
親しんでいる子は、実際に何をしているだろう?
落ち葉を拾う。集める。においをかぐ。友だちに見せる。
じゃあ、それをそのまま書けばいい。
「落ち葉や木の実を拾い集め、色や形の違いに気づく」
これなら、月末に振り返れます。 拾っていたか。気づいた発言があったか。見て確かめられます。
言い換え30例(場面別)
ここからが本題です。 現場でよく使われる「気持ちの言葉」を、「行動の言葉」に言い換えた30例をまとめました。
NG(よく書きがちな表現)→ OK(行動で書いた表現)の順に読んでください。
A. 自然・季節に関するねらい
1 NG:秋の自然に親しむ OK:落ち葉や木の実を拾い集め、色や形の違いに気づく
2 NG:季節の変化を感じる OK:前の月と比べて、木の様子が変わったことを言葉にする
3 NG:戸外遊びを楽しむ OK:自分で行き先を決めて園庭に出て、遊びを選んで取り組む
4 NG:虫に興味をもつ OK:見つけた虫を保育者や友だちに知らせ、図鑑で探そうとする
5 NG:土や砂の感触を味わう OK:手や足で砂に触れ、感じたことを言葉や表情で表す
B. 友だち・人との関わりに関するねらい
6 NG:友だちと仲良く遊ぶ OK:友だちを遊びに誘ったり、誘いに応じたりする
7 NG:友だちとの関わりを楽しむ OK:同じ遊びの中で、役割を決めて一緒に進める
8 NG:友だちの気持ちに気づく OK:友だちが困っている場面で、声をかけたり保育者に伝えたりする
9 NG:協力する心を育む OK:一つの目的(大型積木を運ぶ等)に向けて、友だちと分担する
10 NG:思いやりをもって関わる OK:泣いている友だちの側に行き、背中をさすったり物を渡したりする
C. 生活・身の回りのことに関するねらい
11 NG:身の回りのことを自分でしようとする OK:登園後、自分でカバンをロッカーに入れ、着替えを出す
12 NG:進んで片付けをする OK:片付けの声かけの後、使った玩具を自分で決められた場所に戻す
13 NG:食事を楽しむ OK:苦手な食材にも自分から手を伸ばし、一口食べようとする
14 NG:手洗いの習慣を身につける OK:外遊びの後、声をかけられる前に手洗い場に向かう
15 NG:午睡の大切さを知る OK:布団に入ってから体を横にして、静かに過ごそうとする
D. 表現・製作に関するねらい
16 NG:制作を楽しむ OK:色や材料を自分で選び、作りたいものを言葉にしてから取り組む
17 NG:音楽に親しむ OK:歌の中の好きな部分を繰り返し口ずさみ、動きをつける
18 NG:自由に表現する OK:描いたものについて、何を描いたか保育者に説明する
19 NG:リズムを感じて体を動かす OK:曲の速さに合わせて、歩く・走る・止まるを切り替える
20 NG:役になりきって遊ぶ OK:ごっこ遊びの中で、自分の役に合った言葉づかいを使う
E. 運動・体を動かすことに関するねらい
21 NG:体を動かす心地よさを味わう OK:園庭を一周走った後、「もう一回」と自分から繰り返す
22 NG:運動遊びに意欲的に取り組む OK:難しい動き(鉄棒等)に、自分から2回以上挑戦する
23 NG:全身を使って遊ぶ OK:登る・くぐる・跳ぶを含む遊びを、続けて取り組む
24 NG:バランス感覚を養う OK:平均台を、途中で降りずに最後まで渡る
25 NG:ルールのある遊びを楽しむ OK:鬼ごっこで、決めたルールを守って遊びを続ける
F. 発達が気になる子への配慮を含むねらい
このカテゴリは、夫が療育の現場で見てきた計画の書き方を参考にしたものです。 個別の配慮を月案に書くとき、この形が使えます。
26 NG:落ち着いて過ごせるようにする OK:活動の切り替え時に、事前の声かけを受けて次の場所へ移動する
27 NG:自分の気持ちを表現できるようにする OK:嫌なことがあったとき、保育者に「いや」と言葉や身振りで伝える
28 NG:集団活動に参加できるようにする OK:集まりの場面で、5分程度、自分の席に座って過ごす
29 NG:コミュニケーションを促す OK:欲しい物があるとき、指さしや言葉で保育者に要求を伝える
30 NG:情緒の安定を図る OK:不安な場面で、決まった保育者のそばに自分から近づく
使うときのコツ
この30例をそのまま写しても、たぶんうまくいきません。 クラスの実態と合わないからです。
大事なのは、変換の手順のほうです。
まず「楽しむ」「親しむ」で書いてみる(下書きとしてはOK)
「それができている子は、実際に何をしている?」と自分に聞く
出てきた動作を、そのまま文にする
この3ステップだけです。 慣れると、2の質問が頭の中で自動で走るようになります。
主任・園長に確認されたときの説明
「なぜこの書き方にしたの?」と聞かれることがあるかもしれません。
そのときは、こう説明すると通りやすいです。
「月末の振り返りを書きやすくするために、見て確かめられる形にしました」
実際その通りですし、書類の目的そのものなので、否定されることはほぼありません。
園と療育で、書き方の文化が違うだけ
最後にひとつだけ。
園の書き方が間違っているわけではありません。 園の月案は、クラス全体の育ちの方向性を示すものなので、ある程度の抽象度が必要な場面もあります。
一方、療育の個別支援計画は、一人ひとりの変化を保護者と共有するためのものなので、具体的である必要がある。
目的が違うから、書き方が違う。 それだけのことです。
ただ、園の書類にも「行動で書く」という選択肢を持っておくと、書ける幅が広がります。 毎月「楽しむ」で固まって20分溶かすことは、確実に減ります。
来月の月案を書くとき、1つでいいので、試してみてください。
あなたのクラスでは、どのねらいがいちばん書きにくいですか? よければコメントで教えてください。次に書く記事の参考にさせてもらいます。

年齢別の文例60本はこちら
この記事の続きとして、0〜5歳の年齢別ねらい文例120本と書き換え見本30をまとめています。
9月の月案用に8/25公開予定です。
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