資産や公共の安全を守る - その倫理観
赤外線建物診断技能師研修の受講者から、よくあるあるの質問として、
「やっぱり建築の経験がないと駄目だべか~」とか、
「建築の知識や経験はなくてもいいんですよね?」
といった質問を受ける事があります。
本日はこれについて考えてみたく存じます。
はっきり言うなれば、赤外線建物診断は資格を取れば誰でもすぐできる仕事ではありません。しかし一方で、建築学科卒でなければ絶対に無理というものでもありません。
必要なのは、大事な資産を守る意識や公共の福祉、公共の安全に関わっているという責任を自覚し、学び続ける姿勢ではないでしょうか。
確かに、赤外線サーモカメラを用いて撮影し、撮影したデータ解析を行い、建築物の外部仕上げ不具合を検出する技術ではありますので、赤外線建物診断技能師研修を受講することで、これら診断にかかる原理や手順、注意すべきこと等は学べます。
しかし、実際の現実的な診断実務は、赤外線だけで完結するわけではありません。
赤外線で検出できるのは、主に湿式工法(モルタルやタイル張り)で仕上げられた外壁仕上げ面です。一方で、外壁仕上げ材によっては赤外線といった診断手法ではなく目視調査が重要となる外壁面(ボードなどの乾式仕上げ類)が存在しますし、これらが混在した建築物も多いのです。
確かに、専ら目視調査での診断となるボード等の外壁仕上げ材は、逆に不具合箇所からの雨水浸入はあり得ますので赤外線雨漏り診断の適用場面ではあります。
しかし、赤外線診断は非常に有効な技術ではありますが、それだけで全てを判断できるわけではありません。
また、実際の診断実務におきましては、外壁附帯物も存在します。診断とは何の為にするのかを考えますと、その診断目的によって診断対象や診断目線は異なるかもしれませんが、特に「土地の工作物として安全であるか」という観点における診断となりますと、びくともしないほどに外壁面にしっかりと固着しているか(ぐらつかないか)といった確認が必要となることもありますし、時には実際に直接手で触れ確認する作業が必要となります。
そして、特にこのような安全面での観点での診断となりますと、多少なりとも経験に基づく危険予測的な研ぎ澄まされた感覚も必要であります。
雨漏り診断や断熱の不具合におきましては、雨水浸入箇所特定には建築知識も必要となり、その他各種制度の知識も必要です。
その他、法的リスクへの対応等、実務的な対応力も具備しておかなければなりません。
実際に診断を依頼するオーナー目線でいいましても、人生で最も高い買い物でありますし大事な我が家です。また、収益物件におきましては利益を生み出す大事な資産であるわけです。
そして、大事な我が家、資産であるからこそ、高いお金を払って診断を依頼しておられる。
確かに、一般的には建築科等を修めた方が専門家として認知されやすいのは事実です。
しかし実際には、独学で学び続けた方や、一から建設現場や建築事務所で経験を積み重ねてきた方も数多くおられます。
また、ビジネスとして取り組むのであれば、建築士等の専門家とパートナーシップを構築するという方法もあります。
いずれにせよ、学び続ける意欲や高い責任感、高い意識、すなわち高い倫理観を持ち続けることが何より重要ではないでしょうか。
以上、資産や公共の安全を守る、でした。
※危険な土地の工作物が「公共」に影響を及ぼした直近の事故事例
〇大阪・高麗橋でビル外壁崩落事故
〇公園の金属製ポール倒れ下敷きに 小3男児が骨折【川崎・多摩区】
