質問217:すべての基本ができてからの段階のように思える……
「基本」を守るほど、テニスは難しくなる。
テイクバック。
打点。
フォロースルー。
体重移動。
意識する対象が増えるほど、体は動かなくなるからです。
上達とは、何かを身につけることではありません。
質問
(※無料ガイドブック『テニス上達のヒント』を)読ませてもらいましたが、初心者の私には色んな場面を想像しながらの理解になります
すべての基本ができてからの次の段階の様に思えます
現在私は57才です テニスを始めて四年目です 全く運動なんてしたことがなく 自分ではやってるつもりでも 人からすれば いつも直立して打っていると言われます
どうしたら 上手になれるのでしょうか サーブもほわ〜んとした ボールで みんな低いボールがそれもスピードのあるサーブです
回答
▶「基本」を守るほど、テニスは難しくなる
テニスが上手くなることは、本当に難しいです。
ただし今現在、常識とされている「基本」と呼ばれるものを、忠実に守ろうとするならば――。
常識的な基本とは、グリップ? 打点? 構え方? 振り方?
みんな「フォーム」に関する指摘ばかりです。
それらを忠実に守ろうとすると、テニスは本当に難しくなってしまうのです。
▶上手くなる人は、アドバイスを聞いていない
こう言うと「とはいえ、その基本を学んで上手くなった人もいる」と思うかもしれません。
実はそういう人たちは、それがいいか悪いかは別にして、案外指導者の言うアドバイスを聞かずに、自分の感覚でチャッチャとやってしまうタイプ(関連記事「『やめる』だけでも、ボールがよく見えるようになるので、上達する」)。
ボールを打つ経験値を積んでテニスに「慣れた」にすぎません(この慣れるという順応が、大きいわけですが)。
ところがコーチのアドバイスをよく聞く生徒さんほど、なかなか慣れません。
どうしてだか、お分かりになりますか?
なぜなら、やれテイクバックだ、インパクトだ、フォロースルーだ、次は体重移動だ、運動連鎖だ、プロネーションだと、しょっちゅう意識する対象が変わるからです。
▶伸びる人は、フォームを考えていない
ここは冷静になって、周りを見渡してみます。
スイングやフォームについて何も考えていなさそうな人ほど、上達していませんか?(関連記事「“ええかげん”でええ。料理研究家・土井善晴先生に学ぶ「自由を感じるテニス」の極意」)。
一方では技術についてよく学び、研究している自分はなぜか伸び悩む、という不思議はないですか?
一般的には「運動神経の差」のひと言で片づけられがちですが、そうではないのです(関連記事「プロ級の上級者はフォームなど気にしていない!」)。
▶体育会系と文化系の違い
体育会系と文化系という区別も、その一例です。
同じ運動をするにしても、前者は体で感覚的に覚えようとし、後者は頭で言葉を理解しようとします。
ハイパフォーマーは、前者(体育会系)です。
とはいえ、両者の運動能力の間には、もともと差異などほとんどありません。
なぜなら両者とも同じような材質で、同じような構造の、同じ程度の重さの脳が、体を操っているのですから。
後者も前者と同じように学習すれば、同等レベルのスポーツパフォーマンスが発揮されます。
▶感覚的か理知的か?
フィジカルの問題はもちろんあります。
先天的な傾向性までは否定しません。
しかしそれも、感覚的に動いてきた人と、理知的に動いてきた人との差が、身体及び身体能力の差となって後天的に現れる影響のほうが大きいと私は考えます。
トレーニング方法をいくら頭で理解しても、筋肉は鍛えられません。
一方考えなくても走り込めば、体は自ずとたくましく機能的に成長します。
▶「情けは人のためならず」――考えるほど、分からない
私もよくたとえますが「情けは人のためならず」なんて、どんなに頭で考えたところで、その本質は分かりません。
人助けは、自分の喜び。
つまり感情です。
それはあたかも、暖かい日差しに包まれるとポカポカ「感じる」ようなもの。
むしろ頭で考えるほど、感じられません。
「貸し作っておけばあとで見返りがある」みたいに、本質から逸れます。
それが喜びだという感覚は、ポカポカと「感じる」ものです(関連記事「『リスペクトは人の為ならず』で自己肯定感アップ!」)。
▶サーブが「ほわ〜ん」になる理由
さて、ご質問いただいたサーブがほわ〜んとなる原因ですが、「結果を意識している」と疑われます。
ビシッと打つとオーバーフォールトする、それを防ごうとするとネットフォールトするというように、気にしていないでしょうか?
結果を意識すると、パフォーマンスは下がるのです。
言い換えれば結果を手放すほど、パフォーマンスは上がります。
結果を気にせず何も考えずに打っていいなら、恐らくほわ〜んとはならないと思います。
もちろんミスも増えるでしょう。
そのミスの経験値を通じて、ミスしない打ち方(感覚)を、身体が自修するのです。
▶堀内恒夫が「大暴投」した理由
元巨人の堀内恒夫投手――最初にわざとバックネット目がけて大暴投するというエピソードをご存知でしょうか。
もちろん、緊張をほぐす狙いがある。
ただ、それだけではありません。
結果を手放すためでもあったと、私は見ています。
暴投を忌避するピッチャーには「暴投してはいけない」イメージがある。
暴投がイメージされているのだから、意識では暴投しないように考えても、体は暴投してしまいます(関連記事「『ミスするかも』と思うとミスする」)。
そういう場合は、どうすればよいでしょうか?
力んでしまうなら、まずは力み尽くしてしまえば、もう力みようがなくなります。
あえて暴投することでイメージを完結させる(終わったことにして結果を手放す)のです。
同じ元巨人・桑田真澄投手が投げる前にブツブツつぶやいて、セルフトークを出し切ったのに似ています。
そのとき、堀内恒夫の暴投はまさか、ほわ〜んではなかったはずです。
▶ミスを避ける基本が、経験を狭める
話を戻しますと、世の「基本」と呼ばれるものは、ミスをしないための教えばかりではないでしょうか?
「振り遅れないようにテイクバックを早くする」
「打ち負けないように打点を体の前にする」
「飛びすぎないように振り切ってスピンをかける」
すべて「基本」として語られる内容だと思いますが、ミスを忌避してこれらを意識することが、経験の幅を狭めます。
暴投はよくないものとして、出ないように、出さないようにと投げるから、ほわ〜んとなります。
▶ミスを受け入れるとミスしなくなる
基本は、確かに大事。
だけど基本の定義が違っていたら、元も子もありません。
私が基本について提案するならば、「ミスをすること」「ミスを受け入れること」。
テニスは「ミスするスポーツ」ですからね。
完璧主義ほど、完璧から遠ざかります(関連記事「完璧を期すると完璧から『遠ざかる』」)。
▶「基本」という名の刑務所
改めまして、テニスでいう基本とは?
グリップ? 打点? 構え方? 下から上にスイングすること?
これらは「囚われ」です。
自由自在のプレーをがんじがらめにする手かせ足かせ(関連記事「打ち方は文字どおり『手かせ足かせ』になる」)。
文字どおり、刑務所に囚われているようなものです。
自由に動けないのですから。
それだと誰であっても、ほわ〜んとなります。
▶技術解説は、間違えようがない
もちろん世の技術解説が、間違っていると言いたいわけではありません。
解説は、すべて合っています。
伊達はラケットを下から引くテイクバックをしている。
ナダルは体の前方でボールを捉えている。
フェデラーのバックハンドは振り切っている。
確かに、そうなっています。
というよりも技術解説は後づけですから、絶対に間違えようがないのです(関連記事「すべての技術的アドバイスは「後づけ」である(自分の宝の見つけ方)」)。
▶上達とは、潜在能力を引き出すこと
最後にご質問にお答えすると、上手くなるにはどうすればいい?
何かをどこかから探してきて、身につける必要はありません。
ご自身の感覚を通じて、内側に潜在する能力を引き出すこと。
57歳で運動経験がないというのも、まったく問題ありません。
むしろスポーツ指導の常識的な考え方に染まっていないぶん、アドバンテージだと思います(関連記事「テニスに運動神経は必要ない!」)。
▶「直立して打つ」は問題ではない
気にされている「直立して打つ」のも、悪いわけではありません。
ヒザを曲げて打てばいいボールが行くという科学的なデータはありませんし、ヒザを伸ばしたままでも、ナイスショットが打てる場合もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=8UvfD9U5MIM
姿勢が直立であるかどうかは、上手く打てるかどうかの本質ではありません。
現象(本質の対義語)に囚われると、冒頭で申し上げたとおり、テニスは本当に難しくなってしまうのです(関連記事「『目に見えない』ところに『目を向ける』とテニスは上手くいく」)。
▶頑張らないほうが、上達する
頑張ってください、と言いたいところですが、頑張る必要はないということも申し添えます。
頑張れば上達する――むしろそういった思い込みを手放すことが大事です。
そうではなく楽しんでいただいたほうが、あっという間に上達します。
だけどフォーム矯正を強制するテニスは、まるで前にならえの号令みたいで、全然楽しくないのです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
https://note.com/tenniszero
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero