サロン楽屋話068:ナダル流「ロボットじゃないテニス」──直感を信じるオーガニックな強さ
ナダルの「ロボットみたいなプレーは好きじゃない」という記事。データ全盛の現代テニス、本当にそれで「強く」なれているか? ラケットもシューズもストリングも進化し、出力が底上げされるのは当然。それでもナダルが違和感を覚えたのは、「勝つためだけに計算された」ようなプレー。直感で勝負できる力は、時代が変わっても衰えない──そこに、ナダルの強さがあったのだと思う。
▶ナダルのテニスに、なぜ私たちは熱狂したのか?
「引退から1年、ナダルが現代テニスの“データ至上主義”に苦言『ロボットみたいなプレーは好きじゃない』」との見出しが目に入りました。
データ?
ロボット?
どういう内容なのでしょうか?
ナダルのコメントを引きながら、考えてみます。
▶「自分史上最高」は、これからも更新されていく
「テニスが大きく変わったとは思わないが、やはり進化はするし、プレーも少しずつ変わる。今はストロークもサービスも力強くなっているように感じる」
とナダル。
それは、そのとおりでしょう。
だから、後進たちは(過去の自分も含めた)先人のプレーを、超えていかなければならないのです。
「史上最速」などと言うと、すごいと思われるかもしれません。
けれども、そんなの「当たり前」です(関連記事「記録も環境も私たちも進化中」)。
「自分史上最高」は、これからも更新されていくのです。
▶バボラ『ピュアアエロ』が教えてくれたこと
陸上競技ではスパイクも進化すれば、トレーニング方法も科学的に進歩する。
競技場のトラックだって、昔の土に比べて今のタータンだと、走るスピードの記録は、後進のほうが伸びるのが必然です。
テニスでは、ラケットの素材がウッドからカーボンへと進化し、それを形成するナノテクノロジーなどの製法も進歩して、剛性もウェイトもバランスポイントの設定も、昔とは比べ物にならないくらいのアドバンテージを得ています(関連記事「大事なのは重さとバランス」)。
それにより振りやすく、ブレにくく、反発し、ボールのスピードやコントロールやスピン量も格段に上げやすくなりました。
だから後進たちは、誰がGOATかなどという「価値観」の話ではなく、単純に「パフォーマンス」として、先人のプレーを超えていかなければならないのです(関連記事「ジョコビッチ自身が“GOAT論”に言及『自分が史上最高だなんて言えない』。可能性がある選手は…<SMASH>」)。
▶たくさん食べるのは「はしたない」と思うから……
「私は自分がやっていることが好きだった」
とナダル。
これは、当たり前のように聞こえるかもしれませんけれども、自己肯定感が高いことの証左でしょう。
自己肯定感が削られると、自分の好きなことが「適切じゃない」「間違っている」「へんだ」「恥ずかしい」という感じ方になる。
せっかく足が速いのに「走るだけなんて能がない」といって、引け目を感じてしまうのです(関連記事「苦手なフィールドに迷い込む」)。
たくさん食べるなんて「はしたない」と抑え込んで、フードファイターの素質を、自らスポイルしてしまう。
中島みゆきが歌った『おまえの家』。
「ギターは やめたんだ 食っていけないもんな」──
この一行、自分の才能が芽を出す前に、自らその芽を摘んでしまう切なさの象徴ではなかったか。
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