「計算だけがどうしてもできない」——算数障害(ディスカリキュリア)のある子への教え方【発達障害対応】
「算数障害」という言葉にたどり着いて、定義はなんとなくつかめた。次は「じゃあ、家でどう教えればいいの?」——そう思ってこの記事を開いてくださった保護者様も多いのではないでしょうか。
算数障害(ディスカリキュリア)は、知的な遅れがないにも関わらず算数の特定領域に困難が出る学習障害です。算数障害には大きく3つのタイプ(数概念型・手順型・空間認知型)があると言われており、これは「繰り上がり」「九九」「筆算」「文章題」といった単元ごとのつまずき方ときれいに対応しています。タイプがわかれば、教え方も見えてきます。
「うちの子は何度教えても繰り上がりで止まってしまう」「九九が覚えられない」「筆算の位がいつもずれる」「文章題になると固まる」——そのひとつひとつに、今日から試せる教え方があります。
この記事でわかること
算数につまずく「構造的な3つの壁」
算数障害の3タイプと単元別のつまずきの関係
繰り上がり・九九・筆算・文章題それぞれの教え方
毎日の練習を保護者様が抱え込まずに済む選択肢
※ 高学年のお子さんで文章題のつまずきが中心の場合は、「【文章題】のつまずきと教え方」のセクションから読んでいただいても構いません。

算数が難しい理由——多くの子がつまずく3つの壁

まず前提として、算数は特性の有無に関わらず多くの子がつまずく教科です。「うちの子だけが苦手」と思い詰めなくて大丈夫です。算数には以下の3つの構造的な難しさがあります。
①抽象記号と量・意味の結びつきが薄い
「3」という数字記号と「リンゴが3個ある」という量感は、本来別物です。これを脳の中で結びつける作業は、文字を覚えるよりも抽象度が高く、子どもにとって負荷の大きい作業です。
②複数の手順を保持しながら計算する二重処理が必要
繰り上がり・繰り下がり・筆算は、「途中の数字を覚えながら次の計算をする」という二重処理が常に求められます。
③文章題は言語理解+数量理解の複合処理
文章題では「文を読んで状況を理解する」「数量関係を把握する」「式に直す」「計算する」と、性質の違う処理が連続します。
つまり、算数はもともと脳に負荷のかかる教科なのです。その上に発達特性が加わると、つまずきが目立ちやすくなります。
算数障害があると、さらに難しくなるポイント
ここからが算数障害特有のお話です。算数障害は大きく以下の3タイプに分けられることが多く、それぞれが単元別のつまずきと対応しています。
数概念型のあるお子さんの場合:数の量感・基数性の習得に課題が見られる
「3個」と書かれた数字の「3」が一致しにくく、数を単なる記号として扱ってしまう傾向があります。10の合成・分解の習得に時間がかかりやすく、繰り上がり・繰り下がりや九九でつまずきやすいタイプです。
手順型のあるお子さんの場合:処理順序の記憶・実行に課題が見られる
筆算のステップが毎回違って見えてしまい、「次に何をするんだっけ?」となりやすい傾向があります。九九のような順序のある記憶や、筆算のような多段階の手順でつまずきやすいタイプです。
空間認知型のあるお子さんの場合:位取りの視覚的把握に課題が見られる
「一の位」「十の位」をどの列に書くかが毎回不安定で、位がずれてしまうことが多い傾向があります。筆算で最も困難が出やすいタイプです。
※特性には個人差があり、複数のタイプが混在する場合もあります。「うちの子はこれだ」と固定せず、単元ごとに「今どこでつまずいているか」を観察する視点でとらえてください。
それでは、ここからは単元別に「なぜ難しいのか」と「どう教えるか」を見ていきます。
【繰り上がり足し算・引き算】のつまずきと教え方
なぜ難しいのか
繰り上がり・繰り下がりが難しい理由は、まずワーキングメモリへの二重負荷です。「一の位の計算結果を覚えておきながら、十の位の計算をする」という処理は、特性の有無に関わらず多くの子にとって重い作業です。
その上で、算数障害のあるお子さんは数の量感そのものが不安定で、「8と2で10になる」という10の補数関係が直感的につかみにくい傾向があります。記号としての数字は覚えていても、「だいたいこれくらい」という量のイメージとつながっていないのです。
スモールステップの教え方
STEP1:10の合成・分解をタイル(具体物)で体験してから入る
いきなりプリントに向かわず、おはじき・10の数タイル・ブロックなどで「8に何個足したら10になるか」を手で触って確認する時間を作ります。「8+2=10」を目と手で覚えることが、繰り上がりの土台です。
STEP2:繰り下がりの引き算は「10から引いて端数を足す」方法で手順を固定する
繰り下がりの引き算には、教科書でよく出てくる「さくらんぼ計算」と、もうひとつの方法があります。さくらんぼ計算が難しいお子さんには、次の手順を試してみてください。
手順:前の数を「10と端数」に分解 → 10から引く → 端数を足す
例:13-8 → 13を「10と3」に分解 → 10-8=2 → 2+3=5
(教育の場ではこの方法を「減加法(げんかほう)」と呼ぶこともあります)
「10から引く」部分は、STEP1で練習した10の補数の知識をそのまま使えるため、量感を持って計算しやすいお子さんが多いです。
STEP3:方眼ノートで「繰り上がりのメモ欄」を設け、ワーキングメモリを外在化する
繰り上げた1や、計算の途中経過を頭の中ではなく紙の上に書き出す習慣をつけます。方眼ノートの上のマスを「メモ欄」と決めて、繰り上げの1を小さく書く場所を固定するのが効果的です。
声かけ例:「ここに小さく書いておこうか。頭の中に置いておかなくていいんだよ」

【九九】のつまずきと教え方
なぜ難しいのか
九九が覚えられない理由は、まず聴覚的短期記憶への過負荷です。9段×9個=81通りの音列を、意味と結びつけずに丸暗記しようとすると、誰にとっても重労働です。
算数障害のあるお子さんは、数直線や量感との接続が十分でないため、九九が「意味のない音列」になってしまいやすい傾向があります。「3×4」が「同じ3個のまとまりが4つある」という量のイメージとつながっていないと、いくら唱えても定着しにくいのです。
スモールステップの教え方
STEP1:「かけ算=同じ数のまとまり」を具体物で体験する
九九を唱える前に、おはじきやタイルで「3個ずつ4つのまとまりを作る」という体験をします。「3×4は、3個のかたまりが4つあるってことだよ」と、目と手で意味を入れてから音を覚える順番が大切です。
STEP2:数直線(0〜18の目盛り)で「2つずつ・3つずつ進む」を視覚化する
0から始めて、2の段なら「2、4、6、8……」と数直線の上を指でジャンプしながら進みます。九九が「ジャンプの記録」だと体感できると、丸暗記の負荷がぐっと下がります。
STEP3:1日1段、小刻みゴール設定にする
「9段一気に」は、ほとんどのお子さんにとって過負荷です。「今日は2の段だけ。全部言えたら終わり」とゴールを小さく区切ることで、達成感が積み上がります。
STEP4:即時フィードバックのルーティン化
答えたらその場で「合ってる」「もう一回」とすぐに返すルールにします。時間が経ってからまとめて○×をつけると、お子さんは何が間違いだったか思い出せません。
声かけ例:「今日は2の段だけ。全部言えたら終わりにしよう」
【筆算(繰り上がり・位取り)】のつまずきと教え方
なぜ難しいのか
筆算は、桁の位置管理+繰り上げの記憶+計算の実行という三重処理が同時に走る単元です。これは特性の有無に関わらず難しい作業です。
特に空間認知型の算数障害があるお子さんにはきつい単元で、「一の位はどの列に書くんだっけ?」「繰り上げた1はどこに書くんだっけ?」と、毎回位置関係が不安定になりがちです。
スモールステップの教え方
STEP1:方眼ノートで「1マス1数字」を徹底する
筆算のときは必ず方眼ノートを使い、1マスに1つの数字しか書かないルールを徹底します。位がずれて見える問題が、これだけで大きく減るお子さんもいます。
STEP2:手順表を作って机の端に貼る
筆算の手順を、お子さんと一緒に書き出して机の端に貼り出します。
一の位を計算する
繰り上がりがあれば□に書く
十の位を計算する
繰り上がりを足す
答えを書く
「次にどうするんだっけ?」となったら、手順表を指でなぞって確認するだけで進めます。手順を全部覚えておく負担がなくなります。
STEP3:繰り上げた数字を「小さい▢」に先に書いてから計算する習慣
繰り上げの1は、計算する前に小さく▢に書いてしまいます。「あとで書こう」と思うと忘れやすいので、書く順番をルーチン化するのがコツです。
声かけ例:「まずは一の位だけ計算して、ここに小さく書いておこうか」
【文章題】のつまずきと教え方
なぜ難しいのか
文章題は、言語理解→状況把握→立式→計算と、性質の違う処理が連鎖する単元です。これも誰にとっても負荷が高い作業です。
算数障害のあるお子さんは、これに加えて「読む負荷」と「計算する負荷」が同時にかかることで、どちらかの処理が追いつかなくなりがちです。「読んでいるうちに数字を忘れる」「計算に集中すると問題文の内容を忘れる」といった状態になりやすいのです。
スモールステップの教え方
STEP1:「わかっていること(赤)」「求めること(青)」の色分け読み取り
問題文を読みながら、わかっている数字や条件は赤丸、聞かれていることは青で囲む作業を最初にします。これだけで「何を求めればいいのか」が視覚的にはっきりします。
【挿絵C:問題文に赤・青の丸をつける子どもと母親】
キャプション:問題文を色分けするだけで、「わかっていること」と「求めること」がはっきり見える。この一手間が文章題への取り組みやすさを大きく変えます。
STEP2:テープ図または絵に置き換えてから立式する
文章のままでは情報量が多すぎるので、テープ図や簡単な絵に置き換えるステップを必ず挟みます。「視覚化してから立式」の順番を固定すると、立式の正解率が上がります。
STEP3:計算部分だけを切り出して別に解く
立式までできたら、計算は別の紙やマス目に切り出して解きます。読解と計算を分離することで、ワーキングメモリの負荷が大きく下がります。
声かけ例:「まず、わかっている数字に丸をつけてみよう。何個あった?」
文章題の中でも特につまずきやすい「割合・パーセント」については、別記事「割合・パーセントが苦手な子への教え方」で詳しく扱っていますので、必要に応じて参考にしてください。
まとめ:単元別ポイントを「ひとつだけ」試してみる
ここまでの教え方を、単元別に整理しておきます。
繰り上がり・繰り下がり:10の合成を具体物で体験 → 減加法を試す → メモ欄でワーキングメモリを外在化
九九:意味(同じ数のまとまり)を入れてから音を覚える → 1日1段の小刻みゴール
筆算:方眼ノートで1マス1数字 → 手順表を机に貼る → 繰り上げを先に書く
文章題:色分けで条件を整理 → 図に視覚化 → 計算を切り出して解く
全部を毎日やる必要はありません。お子さんが今いちばん困っている単元を1つだけ選んで、その単元の中の1ステップだけ試してみる——それで十分です。完璧を目指すより、続けられる形を見つけることのほうがずっと大切です。
算数全体のつまずきポイントを俯瞰したい方は、算数につまずく子への家庭学習ガイドもあわせてご覧ください。
毎日教えるのが大変と感じている保護者様へ
ここまで紹介した教え方を実践しようとすると、問題を用意したり、手順表を作ったり、その都度声かけのタイミングを見計らったり——保護者様にも相当な集中力が求められます。共働きや下のお子さんのお世話と並行して、毎日これをやり続けるのは、正直なところ、とても大変なことです。
そういった方に参考にしていただきたいのが、家庭学習デジタル教材「天神」です。
※天神はWindows PC専用の教材です(タブレット・Macには対応していません)。 あらかじめご了承ください。
天神を使った研究では、週1回・たった10分の使用を3ヶ月続けるだけで、すべての対象児童の視覚ワーキングメモリ課題の数値が改善したという結果が、日本LD学会で発表されています。先ほど「算数障害のあるお子さんはワーキングメモリへの負荷で詰まりやすい」とお伝えしましたが、天神はまさにその部分に働きかける設計になっています。
障がい児教育の第一人者・山内康彦先生(障がい児成長支援協会 代表理事)も「知らないと損ですよ」「一番おすすめの教材です」と推薦しています。
スモールステップ設計で「1問ずつ」進める
天神の算数は、いきなり繰り上がりや筆算に入るのではなく、前提となる単元から順番に積み上げる設計になっています。10の合成・分解 → 繰り上がりのないたし算 → 繰り上がりのあるたし算 → ……というように、スモールステップで進むため、つまずいた単元が明確になります。
「全体的には読み上げ機能や画面の見やすさが子どもに合っていて良いように思いました。算数については、問題が1つ1つ段階を踏んで組まれているところが、子供の理解につながっていきそうに感じました。」
——天神体験後アンケートより

1画面1問・即時フィードバックでワーキングメモリの負荷を軽減
天神の問題画面は1画面に1問だけ表示される設計です。ほかの問題が目に入って気が散ることがなく、目の前の1問に集中できます。答えを入力するとその場で正誤が表示されるため、間違いを引きずらず即時に修正できます。
ワーキングメモリが続きにくいお子さんにとって、「あとでまとめて○×」より「1問ずつその場で確認」のほうが負荷が小さく、定着しやすい流れです。

レクチャー動画で視覚的に概念を理解できる
新しい単元に入るときは、まずレクチャー動画でその単元の概念を学びます。アニメーションで視覚的に説明されるため、文章を読むことが苦手なお子さんでも内容が入りやすい設計です。
レクチャーは複数のページに分かれており、再生画面では「現在のページ/全体のページ(例:2/4)」が表示されます。目次画面ではおおよその所要時間(例:約3分)が確認できるため、保護者様が「ここまでやろう」と区切りをつけやすくなっています。
「わかるところから復習し、自信をもたせるところや、間違えたところは少し問題を変えて出されるところ(同じ答えにしない)がいいと思います。」
——天神体験後アンケートより
さかのぼり学習で「10の合成」から始められる
繰り上がりや九九でつまずいているお子さんの多くは、その前の単元(10の合成・量感の理解など)が定着していないことが原因のケースがあります。お子さんが取り組むべき学年は、無料体験時にご確認ください。
ヒント機能で「保護者様がそばにいない時間」もサポート
問題を間違えたときには、ヒントが自動で表示されます。「一の位から順に計算する」「繰り上がりに注意しよう」といった気づきのきっかけ作りを、保護者様の代わりに教材がしてくれます(ヒントは間違えたときや、ヒントボタンを押したときに表示され、出題時には出ていません)。
文章題には「音声読み上げ機能」(オプション)
文章題で「読む負荷」と「計算の負荷」が同時にかかってしまうお子さんには、音声読み上げ機能もあります。問題文・ヒント・解説をすべて音声で聞きながら取り組めるため、読むことに使うエネルギーを計算に回せます。
「文章を読むことが苦手で文章問題をやりたがらなかったが、読み上げてくれることで、問題に取り組むことができた。」
——天神体験後アンケートより
※音声読み上げはオプション機能で、ご利用には別途費用(55,000円税込)がかかります。詳細は資料請求時にご確認ください。
「天神を使えばすべて解決する」というものではありませんが、毎日の反復練習の場として、そして「できた!」という体験を積み重ねる場として、保護者様の負担を減らす選択肢のひとつになれると思います。
現在、天神では無料体験を実施しています。体験専用のPCを無料でお届けするので、実際にお子さんが操作する様子を確認してからご検討いただけます。クレジットカードは不要で、体験後に購入を強くすすめることもありません。
アール医療専門職大学の坂本晴美准教授(医学博士・発達障害専門)が発達障害の児童を対象に行った研究では、こんな報告があります。
「何事にも自信が持てなかったお子様が、天神を始めてわずか1ヶ月で自ら『習い事をしたい』と意欲を見せるなど、劇的な変化が見られました。『できた!』という自信が、学習意欲だけでなく、運動や日常生活への挑戦意欲、つまり『自立心』へと繋がっていくのです」
——アール医療専門職大学 准教授 坂本晴美先生
※効果には個人差があります。ただ、「繰り上がりが解けた」「九九が1段言えた」という小さな成功体験が自己肯定感の第一歩になる可能性は、どのお子さんにも開かれています。
→ 天神 無料体験・資料請求はこちら
https://www.tenjin.cc/lp/wp/hattatsu-s-02-price/
よくある質問
Q1. 無料体験はどんな内容ですか?料金はかかりますか?
A. 完全無料・クレジットカード不要・購入義務なしです。体験専用PCを無料でお届けし、通常4日間お試しいただけます。料金詳細は資料請求時に同封の資料でご確認ください(月額換算で1教科あたり約2,750円〜の買切り型です)。一度購入すればご兄弟も追加料金なしで使えます。
Q2. うちの子はグレーゾーンですが、天神は合うでしょうか?
A. 天神は様々な特性を持つお子さまにも幅広くお使いいただけます。診断の有無ではなく、お子さんの今の学び方に合うかどうかが大切です。スモールステップ・音声読み上げ・さかのぼり機能は診断がなくても同様に活用できます。まずは無料体験でお子さんの反応を確認してみてください。
Q3. 子どもが算数を嫌がっています。どうすれば取り組みやすくなりますか?
A. 「うまくいかない経験」が積み重なったお子さんほど、算数への抵抗感が強くなりやすいものです。天神では暗算サーキットなどゲーム感覚のコンテンツから始め、「これなら楽しい」という気持ちを取り戻してから苦手単元に入るのがおすすめです。最初の一歩を「できた」で始められると、その後の取り組みがぐっと変わります。
Q4. 算数障害かどうか、家庭で判断する方法はありますか?
A. 家庭での観察でできることとできないことがあります。「数字の概念と量が結びついていない」「同じ計算手順が毎回変わって見える」「位取りが毎回ずれる」といった傾向が継続する場合は、学校の特別支援コーディネーターや地域の発達支援センターへのご相談をおすすめします。天神は、算数への苦手意識があるお子さんの学習継続を支える教材として使っていただくことができます。
この記事は天神メディア編集部が作成しました。発達障害の特性には個人差があります。学習面で気になることがある場合は、専門機関へのご相談もあわせてご検討ください。
