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「小手ボクシング」の彼

人間、長らく生きてきますと「あの時のあれは一体何だったんだ案件」ってのが出てきますよね。

私が中2の夏の話です。

中1の時いろいろありまして、私はあまり人とかかわり合いたくなかったものですから

「出来るだけ気付かれないよう」ひっそり学校生活を送っていたんですよ。

そんな私の『かくれんぼ』は比較的うまくいっていたのですが、なぜだか1人だけ私を「放っておいてくれない」同級生がいました。

彼の名はN(敬称略)。

濃い顔のひょろっとした大柄な人で、身長は私より15cmほど大きい175cmはあったと記憶しています。その彼が授業中や休憩中、結構な頻度で私のことを見つめてくるんですよ。

あっ!

別にここから『BL』的展開にはならないですからね。悪しからず。

要は「めっちゃ睨んで」くるんです。教室の右側の真ん中くらいの彼の席から、教室の真ん中の後ろの方の席の私のことを。

本当に理由がわかりませんでした。

当時の私は心を閉ざし、家と学校生活を足し合わせても1日で2言3言しか発していなかった暗黒期の中の暗黒期。「思い当たる節」などあろうはずもありませんでした。

さして絡みもない人物からの「熱い視線」に、私の頭の中でクエスチョンマークが駆け巡っていました。

そんなある日。

体育の授業を終え教室に向かう私に、Nが意図的にぶつかってきました。

「なんなんだよお前。マジで」

私は反射的に私のそれより随分と上部にあるNの胸ぐらを掴みながら、彼に怒声を浴びせました。

すかさず、無言で私の胸ぐらを掴み返すN。2人の「ただならぬ空気」を感じたクラスメイト数人によって、私たちは引き離されました。

「?????」

訳のわからない展開にまったくもって納得いかない私は次の休憩時間にNの席に行き、先ほどの行動の真意を問い質しましたが、彼は相変わらず私を睨むばかりで質問には答えてはくれません。

かといって「腹の虫が治まらない」私は、翌日の休憩時間での「学校に怒られない程度のソフトな決闘」を彼に提案しました。  

ルールはこうです。
・剣道の『小手』をグローブに見立てたボクシング対決。
・休憩時間内無制限1本勝負。
・ギブアップした方が負け。

Nもこれを了承し、翌日の決闘が決まりました。

(翌日)

教室の後方でクラスメイトたちに囲まれながら、私たちの「小手ボクシング」が始まりました。

開始早々、いきり立って私よりだいぶ高い位置から拳をぶん回してくるN。しかしながら「腰の引けたヘッポコパンチ」は、「殴り、殴られ経験豊富な」私にほぼ当たることはありません。

そこからゆっくりとやり返した私。

鼻っ柱付近に私のパンチを集中されたNの口から「ギブアップ」の声を聞くのに、5分はかからなかったと思います。

決闘後には、自分の席で鼻を押さえながら「憑き物が取れた」ように微睡むNの姿がありました。翌日以降、彼が私を睨むことはなくなりました。

高校を卒業するまで(中高一貫高だった)彼とは同じクラスにはならず、口をきくこともありませんでした。

結局「彼がなぜ私に喧嘩を吹っ掛けてきたのか?」は、今でもわからずじまいです。

ただ、今にして思うのは

「もう少し私にも『やりよう』があったかな?」
 
ということ。

不思議なんですよ。

ねじ伏せるようにデリートしたはずの中高生活の記憶の中で、ここの部分だけはなぜか「色が付いている」というか「熱を持って」覚えているんですよね。

彼を殴った時の「ミチャッ」という音も、なぜか耳に生々しく残っています。

中1の時にいざこざがあった3人は「本当にイヤな奴ら」だったので、彼らには『怒り』や『蔑み』の思いしかないので簡単にデリート出来たのですが、Nの場合はこれが出来ずに残っている。

この『違い』は、

「Nが私に向けてきた剥き出しの感情は、上記の3人のものとはまったくの別物である」

と、私が認識していたからだと思うんです。

もはや確認のとりようもないのですが、

Nって実は、私と仲良くなりたかったんじゃなかろうか?

そんな風に推測しているんです。

「おめでたい解釈」ですかね?

ホント、それくらいしか辻褄が合わないんですよ。

彼も中学で私と同じような状況に置かれていて、「似たような空気」を私に感じた⇒で、話しかけたいが接点がない⇒超不器用で私に話しかける方法が見つからず、とりあえず睨んでみる⇒で、リアクションが薄い私に苛立ち喧嘩を吹っ掛ける

このような流れではなかったのかな、と。

だとしたら彼に申し訳ない気がしないでもないし、「もったいなかったかも?」とちょっと思います。

もしかしたら「Nと親友になる世界線」もあったかもしれませんよね。

いよいよもって「下手な想像」が過ぎるかな(笑)?

私の実家には、その母校から定期的に「同窓会のお誘い」の手紙が届きます。

両親は「捨ててもいいよ」と私が言っているにもかかわらず、いつも私が実家に寄る日までそれを保管して待っています。

なので仕方なく私は毎回手紙を受け取り、家に着くやいなや真ん中を破いてごみ箱へ捨てています。

でも、たまにふと。

破った手紙を見つめながら「1回くらいは同窓会に行ってもいいかもな?」と思う時があります。

理由はただ1つです。

まあ、彼が来るとも限らないので行かないですけどね。

ただ、形こそかなり間違ってはいましたが😆「私に興味を持ち関わろうとしてくれた」ことには感謝だし、彼には「しあわせでいてくれたら」と願います。

しかし、あの時のあれは一体何だったんでしょうね?

ま、いっか☺️



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