幸福な王子ごっこ
私の暮らす地域では、この季節に
なると地元の実りが良い時期を迎える。
週末になれば普段は淋しい集落にも
他府県ナンバーが混じり。特産物を
買いに来る者、老親を手伝いに戻る
子らでにぎやかになる。
私は毎年、旧友や恩師に送ったり
誰かと会う時の手土産としている
「ほんの気持ち」と言う奴だ
だからいつも世話になっている
隣近所から買い求めることにしている
これも「ほんの気持ち」
さて、困ったことに私は今年大病を患い
今はもう11月だというのにその大半を
寝て過ごしてしまった。端的に言えば
衣食住をせいぜい維持する程度にしか
お金がないのだ。
仕方がないので幾つかの調度品や服飾
それにパソコンなど、あった方が心は
豊かになるけど無くても致命傷は
避けられる程度のものを売却してお金を
都合した。無い袖は触れないのだけど
毎年の事が途切れてしまうのも淋しい
そうして無事に方々に贈り物を済ませ
次に馴染みの店を訪ねた。そこでも
「ほんの気持ち」を店主に渡し、幾つか
買い物をして、懐かしい顔ぶれが集まる
家々に配って回った。
疲れた。勝手に奔走した挙げ句
私の手元には何も残っちゃいない。
幸福な王子にでもなった気分だ
いや、違う。見栄っ張りなのに
小心者が招いたつまらない話か
童話と違って救いがないのは
寄り添う渡り鳥が居ない事だ。
だから、誰かの目にこの話が届いたら
今だけは私のツバメになってほしい。
