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本雑綱目 100 有限会社作品公房編 おとなの工作 大人が熱中できるもの作りの教科書

今回は有限会社作品公房編『おとなの工作 大人が熱中できるもの作りの教科書』です。
ASIN B0DD35ZG9Q
NDC分類では507。技術. 工学>研究法. 指導法. 技術教育
前提知識必要度(工作):★☆☆☆☆
amazonではノーブランド商品となってるけど、なんだろこれ。


これは乱数メーカーを用いて手元にある約6000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。時々恣意的に選んでいることもあります。

★図書分類順索引

1.読前印象:有限会社作品公房編 おとなの工作 大人が熱中できるもの作りの教科書

 表紙を見れば、『原理と仕組みがわかればこんなものまで自分で作れる』と書いてあるけれど、その例示が改造電気自動車と、ロボット、仏像、眼鏡フレームとあるあたりでちょっとどのレベルの話かよくわからない……。でもこの書きぶりだと一般的な大人を想定していて、たとえば溶接なんかの特殊技術とか深い知識とかはいらない前提だよな……。僕がこれ系の本を読むなら主に異世界転生した時に使える技術探しなんだけど、ナーロッパ中世の技術で可能なものだろうか?
 とりあえず開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック

 はじめにを読む。
 ビーバーなどの動物もモノ(ダム)を作るが、人間はこれまで本能的にモノづくりを続けてきた。しかし現在は安価に提供される製品を利用し、モノづくりをする本能が死にかけている。かつて手作りとは父の日曜大工や母の手芸作品だったが、現代では驚くほど多種多様なものを自分で作ることができる。手作りの魅力はたった一つのオリジナリティーで、この本は現代ならではの手作りを集めた。
 目次は『自分で作る』に改造電気自動車、ラズベリーパイ(ケーキではなくいわゆるラズパイ)、めがねフレーム、ピンホールカメラ、LINEスタンプ、iphoneアプリ、スモーカー、生ハム、味噌、オーブン陶芸、香水、塩、段ボール映画館、『お取り寄せキットで作る』でドームハウス、エレクトリックギター、スピーカー、アナログ・シンセサイザー、仏像、とんぼ玉、プラネタリウム、『命を守るものを作る』でソーラーシステム、風力発電、飲み水。
 oh...キット等を使ったりするので異世界ではホームセンターのスキルとかがないとだめかもしれない。初めにを見ると最初にマスプロダクションを否定しているのに結局用意するのがキットというあたりが資本に心を売っている延長ではないかという気がしなくもないが、一方でモノ作りをどこまで手作業で行うかという問題はまた別に存在する。なるべく定型資材の提供を受けずに作れるもの(現地調達が可能なもの)を考えてみる。
 『スモーカー』、『生ハム』、『味噌』、『塩』、『仏像』、『風力発電』、『飲み水』を読もうと思います。仏像の方向性はよくわからないが、一応それぞれ原理を知っているものだ。風力発電が個人で作れるのかよくわからないが、学者が土に電極さして発電とかいう時代だしな……。それイオン移動やろ。
 いつも通り前段はまとめ、後段は感想・雑感。

3.中身

『スモーカー』について

 石器時代、焚火で焼いた肉をそのまま置いておくと偶然煙で燻され、水分と脂が落ちて食べやすく腐りにくくなった、という風に燻製は1万年以上も前から始まり、塩漬け、スパイスによる臭み消し技法も相まって燻製法が確立される。用いるチップによって香りと色合いが変化する。ホムセンの段ボールと網で作るスモーカーと一斗缶のスモーカーの作り方の紹介。

 正直なところ段ボールのも一斗缶のも作ったことはある。異世界で作るにはどうしたらいいかを考えると、覆いは煉瓦でもできるだろう。網は金属串があれば組み合わせればできるかもしれない。味についてはチップの香りによるところは大きい。それでチップは異世界現地の木材を削って作るのが前提となるわけだが、それには研究が必要だろう。変な臭いの木や有毒の木もままあるだろうし。通常丁度いい乾いた木が落ちていると考えるのはリスキーなので、あらかじめ削って乾燥させるのがいいような気はする。生木が焼けるのは最悪だ。そう考えれば、塩が安くて入手しやすければ塩漬けが一番楽そうだ(燻製どこにいった)。

『生ハム』について

 生ハムは豚肉を塩漬けして燻製したものまたは燻製せずに塩でつけて乾燥したもの。家畜の飼育が始まった9000年前に作られ始めた。日本で作るには冬がいい。最初にジップロックにソミュール液とともに豚肉を入れ、七日間冷蔵庫に寝かせる。10時間程度塩抜きし、丸一日風で乾燥した後に燻製し、その後3か月風乾燥させる。

 基本的にお手軽クッキングのノリで、冷蔵庫・ソミュール液(スパイスや砂糖などを混ぜた塩水)ありきではじまるが、液を使う湿塩法以外に使わない乾塩法もある。これに書かれていない乾塩法では手動で食材に練りこむので、塩水を作らなくてよいが漬け込みが不均一になる。風が通る場所を冷所に造ればなんとかならなくもない。なんとなくだがこの本が想定しているのは食べておいしい干し肉(ベーコン等)であって、保存のためのカチカチの石のような乾ききった肉をかみしめるように食べるものではないんだろうな。なおスーパーで製品として売られているハム等の製品は塩につけずにソルビット液を注入してアミノ酸発酵の過程をぶっとばして味をしみこませているので実はハムじゃないと思ってる。

『味噌』について

 味噌は発酵食品の代表で、大豆や米、麦などの穀物に塩と麹を加えて発酵させて作る。1300年前からあり、当初は食べ物に付けたりそのまま舐め、鎌倉時代から味噌汁として飲まれるようになった。本朝食鑑では健康食品として評価されている。マルカワ味噌のHPの作り方を紹介すると、大豆を洗い、三倍量の水に18時間漬けた後、親指と小指で挟んで軽く力を入れればつぶれる程度に煮る。煮た大豆を潰し、塩と麹を混ぜて団子状に丸め、熟成容器に詰める。木桶には菌が住み着いているので適する。空気に触れないよう落とし布やラップ、中蓋をして10ヵ月から1年ほど寝かせる。

 各家で個性が出ると書きつつ画一的な味噌の作り方を企業から引っ張ってきて教えるというダブスタっぷりが振り切れてて嫌いじゃない。さて僕の問題は異世界でどうやって味噌を作るかだ。それにはいくつかの段階があるだろう。地球類似の環境を想定するとしても、その異世界に発酵という概念があまりなければ、無害な菌の特定から始めないといけない。乳をとる家畜がいればおそらくチーズは自然発生的に存在するので乳酸菌類似のものがその世界に存在すれば、穀物の漬物はできるだろう。酵母が作れて糖類発酵ができれば酒が造れるかもしれない。日本の味噌や日本酒を作っているものは主に黄麹菌で、沖縄の泡盛に使われているのは白麹菌や黒麹菌を用いる。そう、そこが問題で、そもそも同じ菌が存在するかなんだよ。味噌作るのってマジ難易度高いと思うわ。

『塩』について

 世界の塩の六割は岩塩だが、日本では全て海から取る。海水を汲み、キッチンペーパーやコーヒーフィールターで濾し、鍋で煮て白く濁って半分くらいに減ったら再び冷やしてもう一度濾す。再び中火で煮詰め、最初の10分の1量になればまた濾し、それをフライパンで焼いたり天日で干して乾燥させる。

 塩田法は知ってるからまあいいとして、海が近くにないと大変だな。さて現代の製塩はイオン交換膜を利用して電気的に海水を濃縮して作るため、塩化ナトリウム以外のいわゆるミネラル成分がほぼ除去される。そんなわけで安価で生産できる一方味わいとしては単純になる。とはいえ前提となっている『海から海水を持って来る』行為は自宅の立地からかなり難易度が高いので、海の近くに行ったときにちょっと試してみる……には手間がかかるなあ。

『仏像』について

 仏師が無料動画で教える地蔵の掘り方を紹介するので、最初に仏師がHP上で販売している仏像彫刻入門キットを買おう! 図案の型紙を作り、輪郭線を鉛筆で描く。彫刻刀で正面方向の輪郭を出した後、側面奉公の輪郭を出す。耳、顔、足を出して最後に目鼻口。

 これ、無料動画見れば事足りるのでは。基本的にこうすればよい的なコツは記載がないのと、仏師が彫刻刀を動かすとおりに掘っていこう、というやっぱり動画を見ることを前提とした記載なので、正直キットものを本にする必要はないのではないか。説明書を見ろ的な。異世界では軟らかい木があればきっと掘れる、けど専業の人はいるだろうし素人が掘ったものに意味はないかもしれない。ゴーレムを作る能力でもない限り。

『風力発電』について

 風の力で風車を回し、その動力で発電する。大型風力発電は羽の動きが遅いため、増速機がギアで回転数を増やす。風車には様々なタイプがある。日本では台風(風速25m/s以上で止まる)、タワー(高所)が必要、モーターがうるさい、住宅地の風ではコスト高という問題があるが、そこで取りいだしたるのは風力発電キット。このように組み立てます。いざというときには使えるかも。

 風を動力に使いたいけれど、全てキット頼みでは……というかそもそも風力で稼働する以外のところはモーターも伝達線も現在技術を当然の前提として提供されている。インフラというのはなかなか大変だよな。

『飲み水』について

 まずは水の備蓄をすべきだが、足りなければろ過する。キャップのついたペットボトルの底をカッターで木ってさかさまにして、布、小石、炭、砂の順に詰め、キャップに小さな穴をあけて上から雨水等を注ぎ入れてろ過する。汚れがひどい場合は繰り返す。その他海水から飲み水を作る方法と、現実的には携帯用の浄水器を買うことをお勧めします。

 基本的にろ過の際に習う一番原則的な方法。おま、煮沸の行程をいれろよ。火が用意できる場所かどうかはさておき、飲用とするならば原則として煮沸過程をいれるべきだ。飲み水は透明であっても病原菌や毒物等の汚染は避けられない。少なくとも煮沸すれば病原菌は飲用可能な程度に減らせる。あと何度もろ過するよりはこのペットボトルろ過機を縦に並べればいいだけでは。

まとめ

 全体的に、思考や創造性の入る余地がないモノ作りの本だと思う。現代で失敗せずに間違わないモノ作りを目指したもので、基本的に必要な道具はすべて揃えて少しだけ手を動かす、という内容の本。基本的にここに書かれているのは(ラズパイとかLINEをのぞいて)知識として知っているし、一部は試したことがあるものばかりだが、モノの作りの基礎的なところを知らない人にとっては興味深いのかもしれない。それで学習・理解を得るには本来はもっと単純な実験的なところから始めるべきだと思うのだけれど、この本はその過程をふっとばし、頭を使わずこの通りにやると何かが出来上がる、ということを目的にした娯楽のための本だ。クリエイティビティとは程遠いとは思うが、お気楽にちょっと日曜大工をやってみたい人にはよいだろう。ディスるつもりはなくて目的が違うというか、僕はどちらかというと実験して独自規格をアウトプットしたいタイプなので、少し趣旨が違った。
 小説に使えるかというと、現代ドラマな家族ドラマで日曜大工でもさせるなら使いようはあるんじゃないかと思うがって感じ。異世界では無理です。

4.結び

 そういえば100だが1つうっかり欠番してるので、99冊目。1話目は目次です。
 ものすごくエア感がある。そして改めてものを作る過程とは何かを考えさせられた。やはり人間は必要があって物を作るのである。そしてその必要な時という視点が決定的に欠けていて、資本主義に踊らされている感が強い。多分作者、構造的にダブスタになってることに気づいてないんだろうなと思う。
 次回は柳生宗矩『兵法家伝書 付 新陰流兵法目録事』です。
 ではまた明日! 多分!

★リクエスト企画
 蔵書が6000冊に達したので、読む本を5冊までリクエスト受け付けます。6/17現在おひとり様ご予約。残り4冊分。↓にDBの短縮URLをおいているので、リクエストがあればこちらからご連絡ください。

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