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本雑綱目 99 西園寺公一 中国グルメ紀行

今回は西園寺公一『中国グルメ紀行』です。
徳間文庫478-1、ISBN-13 ‏ : ‎ ‎ 978-4195978177。
NDC分類では596。技術. 工学>食品. 料理
前提知識必要度(中国茶や中国の酒):★☆☆☆☆
1985年の本だから少し古い。


これは乱数メーカーを用いて手元にある約6000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。時々恣意的に選んでいることもあります。

★図書分類順索引

1.読前印象:西園寺公一 中国グルメ紀行

 中国料理というのは中国では八大料理に分類されるが、日本では四大分類で宮廷料理の北京、点心飲茶の広東料理、海鮮の上海料理、辛味の四川料理というイメージになっていると思う。このように地方によって特色がでるのは、中国が広大で緯度経度によって入手できる食材が昔から異なる(例えば小麦は北部米は南部)ためで、そこから独自の発展を遂げたと認識している。かの国はとても広いのだ。また調理法が細かく細分化されているところからも食に対する関心は高そうで、例えば火を入れるにしてもその方法に二十種類以上の分類がなされているはず。なお中華料理の料理名は基本的にどのように調理したか+食材なので、慣れるとわかりやすい。古代では宮廷料理人などは地位が高く、例えば斉の桓公に仕えた易牙は宰相になった、あたりはグルメ紀行だからきっとあまり関係ないだろう。
 この1985年当時ってまだ化学調味料全盛期が来てないころかな、そうならいいな。化学調味料は中国料理の文化をある程度破壊したと聞いたことがある。料理の話は好きだけど、おなかがすきます。
 とりあえず開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック

 前書きはなかったので目次を見る。
 『北京の味/上海の味』、『シルクロードの味』、『四川の味/雲南の味』、『海の幸/河の幸』、『野の幸/山の幸』、『かわいそうな動物たち』、『酒と肴』、『お茶と茶館』が大分類で、それぞれに数頁のコーナーがある。広東がない〜。
 『シルクロードの味』、『かわいそうな動物たち』、『酒と肴』、『お茶と茶館』を読もうと思います。レア方向に固まった感。北京の味とかも気になりはするんだけど、いつも通り興味の向くまま。
 いつも通り前段はまとめ、後段は感想・雑感。

3.中身

『シルクロードの味』について

ーまとめ
 著者夫妻のシルクロードへの旅路。
 甘粛の名物は牛肉泡饃にゅーろうぱおもー、牛の塊の煮物。中国の鉄鍋で作った茶碗蒸や三枚肉を鶏スープで似た高山肉がおしゃんろうも美味かった。ラクダの背のこぶから水を取ると言う話は嘘っぱちで、こぶは肉質で珍味とされる。摂氏80度くらいのとろ火で2,3日茹でると毛が落ちて皮がはがれ、こぶを適当に切って真水に付ける。白酒や山椒実、生姜や刻み葱をいれ2日置いて水洗いし、鶏スープで軟らかくなるまで煮る。中国のスルメは上手い。
 敦煌では西瓜韮菜しーぐわじゅうつぁいという漬物がある。スイカを2つに割って内側の部分は食べ、適当に塩をした韮をいれてぴったり合わせて目張りをして土に埋める。西瓜も韮も安価なので欠かせない料理。
 天山では磚茶だんちゃ(塊の茶葉を削って使う茶)や馬乳を飲む。羊を丸のまま蒸し焼きにして手づかみにして食べる抓羊肉つわやんろうを頂く際に、口で受け取る等の面白い作法がある。とろけるように柔らかくうまい。
 青海省のパオに足を踏み入れれば御馳走の山があった。ヤク乳と磚茶のブレンド、子羊の丸焼き、主食のツァンバ、裸麦から作られた青稞酒ちんこしゅ。家の門に入るにも、部屋に入るにも、挨拶をするにも三杯の青稞酒。
 西寧ではイスラム教徒が少なくないためか、豚以外の肉がふんだんに振る舞われる。珍味の第一は焼駝掌しゃおとうじゃんで、駱駝の足の裏だ。意外に軟らかく肉とも脂ともつかない奇妙な味。

ー感想
 シルクロードの話、というか僕は張騫の話を描きたいんだが、彼は数年匈奴の地でとらわれて暮らす。その生活には当然食事の描写が必要なわけなんだけど、予想通り中国本土とはかなり違って興味深い。
 磚茶はもともと茶の一番最初の形態ではあるものの、現在の中国では主には雲南くらいにしかお目にかかれない。原因は高騰しすぎた茶葉を朱元璋が贅沢品として禁止したからなわけだが、野菜が育たない高地ではビタミン不足解消の意味のある保存食なのだと知って目から鱗。さすがに駱駝は食べたことがないのでコブも足の裏も食べてみたい。
 それにしても簡単ながらも作り方も諸所に添えられていて、とても勉強になる感じ。材料が手に入らないので実行は不可能だが、料理方法がわかるとなんとなく味は推測できる。

『かわいそうな動物たち』について

ーまとめ
 広東料理の烤禾花雀かおほーほわちゅえはとても美味しい雀の焼き鳥。とてもおおきな鼠の丸焼きを食べたことがある。中国語の下水しあしゅいは動物の臓物のことだ。下水料理を肴に飲む白干児ばいがる(高粱焼酎)は最高だ。排骨料理も大好きだが骨の味といえば豚足、中国語では猪脚づうじゃおである。大根の酢漬けがよくあう。
 武漢の野味香いえうぇいしぁんはジビエ料理屋だ。豹は美味く、膝頭の皿骨をいれた虎骨酒ふーぐーじゅうは薬にもなる。広州の従化つんほわ温泉の楽しみは香肉しゃんろう鍋、狗鍋である。行平鍋に似た土鍋に犬ガラでとったスープを一夜煮て、七輪にかけてつつく。具は菜っ葉で、冬でも裸で寝れるほど体が温まる。
 肺病によく強精に効果がある冬虫夏草は地中の幼虫類を宿主とする。産地は四川、雲南等で、ネギや生姜を加えてとろとろに似たアヒルをベースのスープによく用い、調理の際には丁寧に虫部分は取り除いている。
 広州では蛇料理が有名で、龍という字がメニューに使われていれば蛇と心得よ。なお鳳は鶏料理、虎は果子狸ごうずりーと呼ばれる木の実をとる狸だ。蛇の胆酒は秋のさわやかさである。

ー感想
 全然可哀そうだとは思っていなさそうな件。
 この中で食べたことがあるのは雀、豚足、蛇あたりだけれど、豹の酢漬けなどは味の想像がつかない。日本では古来は肉は薬という印象があるものだから、狗鍋は犬の肉を食べるものだと思ったら、ガラなのか。肉は肉で別に食べるのだろうけれど。そのほか冬虫夏草も虫部分を取り除くとか、食べ方について勘違いしていたものは多い。
 中国は広いから、きっと思いもよらない食材というのはたくさんあるのだろう。ベトナムの山間部で食べるヤマアラシは骨が多いが美味とも知人から聞いた。見知らぬ食材は食べてみたい。

『酒と肴』について

ーまとめ
 中国の八大名酒は解放後の1952年、新中国の酒の全国品評会の時に成績順に上から八種類とったものである。だから葡萄酒やブランデーが含まれる。
 紹興酒は世界最古の酒の一つで、呂氏春秋にも出る。黄酒の一種で揚子江以南の沿岸で醸造され、全てもち米を原料とする。濁り酒から始まったが、周代には既に清酒があったようだ。紹興酒は江蘇州丹陽県のもち米、麹は講義、水は冬の紹興県鑑湖かんこの湖心から不凍水をとる。ワインのように料理によって紹興酒を合わせる。
 葡萄酒といえば唐の王翰おうかんの涼州詩だ。葡萄酒は遠くシルクロードを通って西方から輸入されたという説は間違いで、新疆あたりから入って各地に広まった。山葡萄が用いられて歴史は古く、三国志の魏の曹丕が曹操にあてて葡萄酒は穀物酒よりうまいと手紙を書いている。近代式醸造の生産は19世紀からで、山東省煙台の張裕葡萄醸造公司が先鞭をつけた。味美思うぇいめいすーも同張裕の逸品であり、十五種の漢方を用いた合成酒である。中国の醸造酒の歴史は12,3世紀ごろから出、フランスや英国より少し早く、陝西や山西から育ち、南に名品が現れる。
 汾酒は高粱を原材料とし、大麦とエンドウ豆を合わせたものを麹とする。杏花村は竹葉青酒が有名で、汾酒に漢方薬を混ぜたさわやかな酒だ。これが南下して四川に入り、綿陽県で大麯酒たーちゅーちゅーが生まれ、更に南下して瀘州で瀘州大麯となる。三百年前のことで、四川料理によくあう。
 みんな大好き茅台まおたい酒はいいお酒! 中国のブランデー白蘭地ぱいらんでぃーは白葡萄酒を蒸留してできたブランデーをベースにラム酒や香料、漢方を加えて作る。
 中国の詩人は酒飲みが多いが、肴を楽しむ句は少ない。唐以前の酒飲み詩人の詩にでるやおは酒の肴の意味で、殽伊殽やおいーふーは干し肉である。燔炙ふぁんじゅーは焼肉と炙った肝、このほか肉の塩辛等が出てくる。杜甫の飲中八仙歌では膾や生きのいい魚を楽しんだ描写がある。唐詩には時折蟹のはさみや鮒ずしのようなものもでてくる。

ー感想
 詩人の詩には酒の肴がでないとあるが、食についての記録はそれがどんなものかはざっくりしているものの、資料は案外残っている。膾というと孔子の子路の話だが、あれもよく伝承に登る子路の肉を食べたわけではないらしい。
 酒といえば最初に思いつくのが蛇足の話で、お祝いにもらった酒を5人で飲んでも味なんてしないから、蛇を一番早く書いた一人が全部飲もうという話だ。古代の庶民の通常飲む酒(どぶろく)の酒精は随分薄く水のようだったと聞く。一方で強い酒も存在したとも聞くけれど、そのあたりの知識があやふやなのはきっと僕があまり酒を飲まないからだろう。
 紹興酒も好きなのだが、ワインのように料理に合わせるという発想はなかった。日本の中華料理屋でそういう合わせ方をすればいいのにとは思うものの、紹興酒をパカパカあける酒豪というのは日本には相対的に少ないのかもしれない。酒の話書きたいなあ。

『お茶と茶館』について

ーまとめ
 龍井ろんじん茶は今は広まっているが、清の乾隆帝の頃、杭州西湖の傍らの龍井茶畑の茶の木の数は18本に限られていた。献上された茶を乾隆帝が気に入り専用として、増やすことも禁じた。洞庭湖の君山くんざん茶はより酷く、一本の茶の木に限られてすこぶる高価だった。
 中国の銘茶は山の頂の岩上に天然に生えた木から取れるのを最上とする。廬山の雲霧茶ゆんうーちゃ、福建の鉄観音ていえぐうんいん、湖北遠安県の名峰茶みんふぉんちゃ等はこの系統だ。雲南とビルマの間の少数民族が作る普洱茶ぷーあるちゃを手で握り固めて托茶とうおちゃを作る。強く押し固め煉瓦のようにした磚茶は雑だ(美味しくないと言う意味?)。
 北京の町では大通りの片隅で低いテーブル、腰掛けを置いて白い蓋つき茶碗で茶を売る茶攤児ちゃやーたるが現れる。隠居仕事の老人が多い。これに対して屋内で茶を供するのが茶館で、様々なタイプがあり地方色も強い。北京で普通なのは清茶館で、茶だけを売る。上海や広州では落花生や瓜子児(瓜類の種)のようなつまみや、点心、果物、煙草も売る。茶と料理の二股をかける茶店を弐軍舗あるふんぶーという。娯楽を主にするものに茶を嗜みながら碁盤を囲む棋館ちーぐぁんや講談を聞く書茶館しゅーちゃーぐぁん等がある。
 煙草の始まりはきざみだが、香烟は紙巻だ。どの地方でも独自の煙草を製造し、値段もピンキリである。

ー感想
 朱元璋と茶の話が少し書きたくなってきた。朱元璋も随分尖った人だ。磚茶は雑だと書いてあるが、朱元璋が禁止したものこそ高級磚茶じゃなかったのかな。ものすごい手間をかけて少量を作っていた気がする、主に賄賂用に。
 質としてはピンキリでいろいろあるのだろうけれど、一度磚茶を飲んではみたい。僕はお茶自体あまり詳しくはなくて、お茶を飲むのはすきなものの、ティーバックばかりだな。そもそも中国茶は日本茶と飲み方がだいぶん違うイメージがある。

まとめ

 全体的に、池波正太郎の料理紀行みたいなノリだった。料理の最終的なイメージは良くわからないものの、調理方法は描いてあるのでなんとなく参考になるような、それ以前にその料理がその地域でどのような枠組みなのかも合わせて把握できるなかなか興味深い本である。ただこの本はそれなりに古いので、特に都市部の記載では現在時点と内容が異なる可能性は相応にあるとは思う。
 小説に使えるかというと、現地飯を描くにはとても良さそうなのだが、前述のとおり多少の時間の乖離があるところが気にかかる。けれど僻地ほど生活状況は変わりにくい(何か強烈な変化があればあっという間に変わってしまうこともあるけれど)ので、僻地を書くには参考になるのかもしれない。

4.結び

 腹がすく本です。そして読みやすかった。今午前3時なんだけどさ、本当に腹が……。なんとなくルビをひらがなでふって、カタカナにしようと思った時にはめんどうくさくなった。ところで西園寺公一はこの本当時中国に長期滞在していたそうだけれど、ゾルゲ事件に連座して逮捕されて公爵家を廃嫡されて従五位を返上したりとそれなりに波乱万丈な人生の人だ。なお従五位は江戸時代であれば傍流の大名とか大身の旗本のランク。
 次回は有限会社作品公房編『おとなの工作 大人が熱中できるもの作りの教科書』です。
 ではまた明日! 多分!

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