手鞠亭 第十四席「コミュ障の噺」
さて、
本日の噺でございますが――。
わたくし、
人付き合いというものが、
どうにも得意ではございません。
世間では、
こういう人間を
「コミュ障」なんて呼ぶそうでございますな。
まあ、
便利な言葉ができたもんです。
人と会えば、
何を話そうか考え、
話しかけられれば、
どう返そうか考え、
別れたあとには、
「あの返事でよかったんだろうか」
と一人反省会を始める。
一回の会話で、
三回疲れるんですな。
そんな人間がですよ。
なぜか――
noteをやっております。
しかも、
誰に頼まれたわけでもないのに、
文章を書いて、
絵までこしらえて、
「公開」
なんてボタンをポンと押している。
考えてみれば、
ずいぶん大胆なことをしておりますな。
ところがですよ。
人様の記事を読んでいて、
「これ、好きだな」
と思う。
そこで、
「スキ」を押そうとする。
……押せない。
指が、ぴたっと止まる。
別に、
愛の告白をするわけでもない。
高額な契約書に判を押すわけでもない。
ただ、
ハートをひとつ押すだけでございます。
なのに、
「急にスキ押したら変かな」
「この人、私のこと知らんよな」
「馴れ馴れしい奴だと思われないか」
などと考え始める。
しまいには、
そっとスマホを閉じる。
……何のためにnoteを
やっとるんでしょうな。
自分の記事は
世界に向かって公開するくせに、
人様の記事の
ハートひとつ押せない。
ですがね。
最近は、
わたくしも少しだけ進歩いたしまして。
画面の前でひとしきり葛藤した挙句、
「えいやっ」と勇気を出して、
スキを押すようにしているんですな。
どうやらコミュ障というものは、
人と会わなければ治る、
というものでもないようでございます。
ネットの時代になればなったで、
ちゃんと、
デジタル化してついてくる。
まったく、
便利な世の中になったもんでございますな。
ころころ。

