「インパクトスタートアップ」への期待
column vol.887
昨日、【出よ! “おじさん” 力】で「起業」について少し触れましたが
岸田政権の「新しい資本主義」でも、イノベーションの担い手として起業家支援を徹底していく構えを見せています。
そんな中、重要なキーワードとしてますます世の中に広がっていきそうなのが「インパクトスタートアップ」です。
単に売れるだけではなく「社会に役立つ」ことを重視する。
社会に貢献しつつ、経済的な成功も目指す新興企業は、そのように呼ばれているのです。
今後ますます注目される “両輪” 起業
この経済的利益と社会的利益の両輪を成立しようとする起業は日本の中でも多くなってきていると感じます。
〈FNNプライムオンライン / 2022年12月30日〉
例えば、東京大学発のスタートアップ「WOTA(ウォータ)」は、災害現場など水が使えない場所で、1度使った水の98%以上をその場で再生して循環利用できる「WOTA BOX」を提供。
中学生、高校生向けのプログラミング用の学習教材を提供している「ライフイズテック」は、累計導入校数は1位で、約50万人の中高生が利用しています。
日本は少子高齢化などの課題を抱える「課題先進国」。
クラウドファンディング仲介サービス「READYFOR(レディフォー)」代表の米良はるかさんは、だからこそ
インパクトスタートアップが成長する土壌が日本にはある
と語っていらっしゃいます。
そんな想いもありまして、米良さんは昨年の10月にインパクトスタートアップの日本初の拠点とも言える「インパクトスタートアップ協会」を発足。
社会課題解決をビジネスに、と考えを共にした23社で立ち上げました。
協会設立の目的は主にスタートアップ同士の情報交換の場とすること。
・インパクトの可視化(数値化など)のためのノウハウの共有
・投資家との関係づくり
・政府への提言づくり
・一般への周知
といった項目を掲げていらっしゃいます。
正会員になるためには、企業の存在意義に社会課題解決の意思が強く組み込まれていること、その活動を実際に行っていることなどが条件に。
協会設立からほどなくして、約100社のスタートアップや大企業から、正会員や賛助会員登録の問い合わせがあったそうです。
この「情報交換」という言葉を聞いて、スタンフォード大学で実施されている「TALK」という取り組みが頭に浮かびました。
「毎週人生を語り合う」スタンフォード大学
スタンフォード大学は優れた起業家を輩出する学校として知られていますが、「TALK」は起業支援プログラムやシリコンバレーとの接点づくりの充実と同じか、それ以上に大切にしているスピーチ会。
〈Forbes JAPAN / 2022年12月27日〉
こちらは、学生の自主開催で続けられている経営大学院の伝統の集まりで、毎週夜9時から、語り手の学生が自分の大切にしている価値観や、その醸成の経緯について45分間語っているというもの。
お互いの人生ストーリーを共有する場として人気で、毎週、同級生の半数を超える250人近くが集まり、一人もスマホを開くことなく真剣に話を聞き、最後は全員立ち上がって拍手喝采で終わるそうです。
そして、感情を共有してくれたことに感謝し、互いの挑戦を応援し、刺激を与え合いながら、高い目標を目指すコミュニティをつくっていく。
単に起業のやり方、経営の仕方という「How」を学んでも、やはり行き詰まってしまう部分はあると思いますので…、 “何を実現したいのか” “なぜそうしたいのか” という「What」「Why」を突き詰める機会をつくることの重要性を改めて感じます。
経済的利益と社会的利益の両立は、もちろんそれを受ける人や社会にとって喜ばしいことでもありますが、起業家側から見ても、単に儲けるため以上に「世のため、人のため」になっているという実感が “続けられる意欲”につながり、結果、自分のためになるような気がしますね。
最近では、企業組織においてもイントレプレナー(社内起業家/新規事業担当者)の育成に力を注いでいる会社も増えていますし、日本マイクロソフトの「Empower Japan Intrapreneur Community」のように、組織の垣根を越えた交流・育成プログラムも多くなっています。
〈AMP / 2022年12月2日〉
こういったことは、もちろんイノベーションという観点でも必要ですが、それだけではなく、いかに自分のミッションを明確にし、主体的に仕事に取り組める社員を育むという観点でも重要だと感じます。
スタンフォード大学的に言うならば、「自分の人生のストーリーを語れる人」を増やすこと。
そういった哲学できる場が、もっと拡がっていくと日本の未来は明るいのではないでしょうか。
「インパクトスタートアップ」の課題
一方…、、、日本でのインパクトスタートアップの認知度はまだ低く、世界規模で見ると堅調に伸びているインパクト投資金額も、日本ではまだ1.3兆~5兆円越しか確認できていないそうです。
前章で「両輪を成立するのは自分のためにもなる!」という理想的なことを語っておりましたが、現実的には投資金額が伸びない主な原因の1つに「回収までの長さ」が挙げられます。
一般のスタートアップは3~5年で利益を回収できるとされる中で、インパクトスタートアップは10年以上かかることもある。
ここは1つの課題です。
また、どうやってインパクト(社会に与える影響)を評価するのか、日本では制度が整っていません。
アメリカでは「B Corp(ビーコープ)認証」という公益性の高い企業に対して国際的な認証制度がありますが、日本でも経産省で推進するスタートアップ育成プログラム「J-STARTUP」をインパクトスタートアップバージョンにするなどの議論が始まっています。
いずれにせよ、今年から政府が進める「スタートアップ育成5ヵ年計画」が始まります。
インパクトスタートアップへの支援についても「休眠預金」を活用する施策や新たな法人格の検討などが始まる見通しなので、引き続き注目していきたいと思います。
期待膨らむ「日本のスタートアップ」
最後は、起業にまつわるハッピーなニュースで締め括りたいと思います。
昨年はサッカーW杯で盛り上がりましたが、スタートアップ業界でもW杯が開催されたのをご存じでしょうか?
イーロン・マスクさんの宇宙ロケットベンチャー「SpaceX」などにも投資し、世界16拠点で24のファンド、1600億円規模の投資資産を展開しているベンチャーキャピタル、米ペガサス・テック・ベンチャーズが開催している「スタートアップワールドカップ」です。
〈ASCII START UP / 2023年1月3日〉
昨年も70の国と地域からスタートアップ企業が5万社以上応募しています。
各国で予選が開催され、日本エリアからも105社が応募し、 “空飛ぶクルマ” を開発する「株式会社SkyDrive」が日本代表に選ばれていました。
そして迎えた9月の世界大会。
世界ファイナリスト10社が登壇し、優勝投資賞金約1億円をかけて競い合ったのですが、何とSkyDriveはアメリカ、イスラエル、中国といった世界の強豪に競り勝ち、準優勝という快挙を成し遂げたのです。
いやぁ〜アツイ!凄いですね〜
また、日本予選決勝に残ったファイナリスト企業10社の中にも、両輪企業が揃いました。
従業員のコミュニケーションを円滑にして熱意を持って働く従業員を増やすため、AIの力で1on1の動画を解析してアドバイスする「revii」を手掛ける「株式会社ZENKIGEN(ゼンキゲン)」。
“充電インフラが足りない” という社会課題を解決するために電気自動車向けの充電サービス「Terra Charge」を開発した「Terra Motors株式会社(テラモーターズ)」。
などなど、社会課題を解決するために立ち上がったと思われる企業が目白押しですので、ぜひASCIIの記事も合わせて読んでいただけると幸いです。
今は企業に勤めながら起業する1つの形として「パートタイム起業」などもありますので
今後、1億総スタートアッパー時代なんて日が来るかもしれませんね。
いずれにせよ、一回、スタンフォード大学生にあやかって「自分の人生のストーリー」を考えてみたいところです😊
