逆境という「問い」
vol.1776
最近、就職氷河期世代の人が続々と社長や役員に昇格しています。
今月も、日本IBMの村田将輝さんが社長に就任。
メディアでも大々的に取り上げられています。
その中で面白いと思ったのが「氷河期エリート」という言葉です。
厳しい雇用環境だった“氷河期”に、激しい競争を勝ち抜いて大企業や優良企業に正社員として入社し、生き残ってきた優秀なビジネスパーソンたち。
彼らには、ほかの世代にはない強みがあるというのです。
氷河期エリートの強みとは?
経営コンサルタントの日沖健さんは、4つの強みを挙げています。
① 自立した考え
恵まれた会社生活を経験した昭和世代・バブル世代と違って、苦難続きだった氷河期世代は会社や上司を信用していません。会社は会社、自分は自分ということで、自分なりの確固たる考えを形成しています。
② 顧客視点で率先垂範の行動
傍観していると状況が悪化してしまう時代を生きてきた氷河期世代は、様子見せず率先垂範で行動します。また、他の世代では優勢な「まず会社のため」という考えが弱く、顧客第一で行動するのも特徴です。
③ 危機意識が高く、柔軟に方向転換
氷河期世代は、リストラ・コスト削減・事業撤退といった困難を経験したので、危機意識やリスク感度が高いようです。「これはまずい!」と思ったら、しがらみにとらわれず柔軟に方向転換することができます。
④ 忍耐力があり、打たれ強い
氷河期世代には、若手時代に長時間労働・人員削減・成果主義・パワハラなどさまざまな理不尽を経験した人が多く、「多少きつい仕事は当たり前」という感覚を持っています。また、「成果が出なくて怒られるのが当たり前」と考える人も多く、打たれ強いようです。
〈東洋経済オンライン / 2026年8月6日〉
同じ氷河期世代として思うのは、③と④はこの世代の人なら誰しもが持っている強さなのではないでしょうか?
●いつの間にか終身雇用が崩れ、成果主義の社会に
●気がつくと80年人生は100年人生に。
(生涯現役・セカンドキャリアが当たり前の時代に)
●管理職になるまで理不尽に我慢→管理職になったらハラスメントに怯える
などなど、同世代と話していると、そんな恨み節はよく聞きます…😅
ただ、氷河期エリートの人たちとそうでない人たちの違いは①と②にあるのかもしれません。
彼らは「自立」していて、「積極的に行動」する。
そもそも大学時代のときから、その傾向が見られました。
まだまだ「大学は遊ぶために行く場所」という雰囲気が色濃かった時代に、氷河期エリートになるような人たちは今で言う「ガクチカ」に熱心だったように思います。
「原因結果、我にあり」
つまり、氷河期エリートは不遇を感じていたとしても、社会や会社のせいにせず、ただただ自分にできることを考え、率先して行動するからこそ、いま花開いている。
非エリートの私としては、その部分をリスペクトしています…😅
ただ、私がラッキーだったのは、80年代〜90年代にマーケティング業界の中で名を轟かせた谷口正和の会社に入れたことです。
(ただし、最初はアルバイトで潜り込み、正社員になるまで相当な苦労を経験しました…汗)
谷口は、圧倒的な知識量と独自性のある視点があることでメディアにも取り上げられ、今で言うインフルエンサー的な存在だったので、多くの企業のコンサルを手がけてました。
当然、上場企業の社長を相手にコンサルしていたこともあるので
「一流の人とは何か?」
「人の上に立って信を集める人とは、どんな人か?」
ということが分かるんだと豪語していたのです。
その谷口が、私に口酸っぱく言い続けてきた言葉が
「原因結果、我にあり」
です。
とにかく、何か良くないことが起きても、絶対に人のせいにさせてくれませんでした…
「仮に100%、同僚やお客さん(クライアント)、協力会社が悪かったとしても、人を責めず、自分に何か足りなかったことはないか?自分に何かできたことはなかったのかを問いなさい」。
言われていた頃は、「…ちょっと理不尽…」と思っていましたが…(笑)、副社長になって経営を任されてからは、徐々に心を入れ替えました。
確かに、周りのせいにしている人は「人の上には立てない」。
誰かのせいにしていたら、リーダーとの信を失って、組織は活力を失います。
ただ、これは谷口だけが言っているわけではなく、孔子は『論語』の中で
「君子は諸を己に求め、小人は諸を人に求む」
(立派な人は何事も自分の責任として反省するが、つまらない人は責任をすべて他人のせいにする)
と言っていますし、昭和の稀代の政治家、田中角栄さんは
「人を責める者は、運を失い、 自分を責める者は、運を掴む」
と語っている。
さらに言えば、京セラ創業者の稲盛和夫さんも
「逆境のときにこそ、リーダーは部下に希望を抱かせ、夢を持たせるようなことを話していくべきだ」
「ぼやく人、不平不満を言う人は、それだけで経営者として失格」
と仰っているのです。
〈サライ.jp / 2024年12月25日〉
「逆境」が何を問いかけているのか?
それでも、どうしようもない不条理な逆境に苛まれることもあるでしょう…
…私も逆境の連続ですが…
その度に頭に浮かべているのが、『夜と霧』の作者で、アウシュヴィッツ強制収容所などで過酷な生活を経験した心理学者、ヴィクトール・フランクルの
「どれほど過酷な状況でも、その問いにどう答えるか」
という言葉です。
「『なぜこんなことが自分に起きたのか』と人生に問いかけるのではなく、『この状況に対して、私はどう生きるのか』と人生から問われていると考える。そして、どれほど過酷な状況でも、その問いにどう答えるかという自由だけは自分に残されている」。
どんな極限状態においても、最後まで「答え」という自由は自分に残されているというメッセージは、とても心に響くものがあります…
だから逆境は、単なる不幸ではなく
「この経験に対して自分はどう応えるのか」
「どんな人間でありたいのか」
を問われる場でもある。
この世の地獄を経験したフランクルの言葉を前にしたら、…日頃の私の逆境なんて希望しかありません…
氷河期エリートの4つの強みを挙げた経営コンサルタントの日沖健さんは、彼らについて
「氷河期世代が就職・転職・昇進で不利になったり、業務遂行で苦労したことは、一般的にキャリア形成にとっては大きなマイナスです。しかし、逆境に打ち勝つ優れたリーダーを養成するという点では、逆にプラスに作用しているのかもしれません」
という風に評価しているのですが、確かにピンチをチャンスに変えたからこそ、成功の果実を手にしていることは間違いないでしょう。
「逆境に打ち勝つ」という言葉は私のような非エリートにとっては精神的にシンドイですが…
「逆境が自分の未来に、どんな問いをかけているのか?」
くらいならば、勝てなくても引き分けくらいには持ち込めるのかもしれない…
氷河期世代の皆さんも、そうでない世代の皆さんも、もしも逆境を感じるときがあったら、ふとフランクルの言葉を思い出すと、何か光明が見えるかもしれません🤔
…信じるか信じないかはアナタ次第ですが、本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
