背徳感が幻になる逸品
この世には背徳感という言葉があり
我々は確かにそれを認識している。
バツの悪い幸せ。
最近、少し腹が出やすくなった。
ビタミン不足に陥ると
鼻のてっぺんにうっすらと赤信号。
塩分を摂取し過ぎた翌朝は
上手く発酵しなかった様なパンのよう
カサつき少し嵩張って見える。
背徳感を求める心を宥めるかのように
身体がサインを送る30代。
いやいや、まれに胃袋を背徳感で満たす事は
人生をより良くするのだ。
腹一杯に食べたい夜に
机に並ぶ数々のバーガー。
食べきれない。
背徳感ごと冷蔵庫に閉まう日々が続いた。
そして朝起きてまた食べるが
昨日ほど満たされる事はない。
そんな僕はこの欲と素敵な夜を過ごした事がある。
異国のジャンク料理、タコスのおかげだ。
極めてお手軽な料理。
みじん切りにした玉葱
乱切りトマトと青唐辛子
塩胡椒とおろしニンニクを投入して
1時間ほどボールで寝かせる。
挽肉炒めて、タコスパウダーで煮詰める。
ライムを野菜に絞って、出来上がり。
カリッと炙ったトルティーヤ。
このカーテンに肉と野菜を乗せて
チーズでおめかしして、包み込む。
口を一杯に広げて実食。
野菜の瑞々しさが口内に雪崩こむ。
決して、肉だけでないのだ。
清流を堰き止めるかのよう口を閉じる。
幕が開いた。
タコスミートが場を盛り上げる。
俺がいるぞ!とミートは拳を空に掲げる。
肉だ、お前を見たかった!
一緒に拳を空に掲げなら
力強い姿に心は躍っていく。
チーズが肉の横でニコニコニコ。
どんな演者の横に並んでもニコニコニコ。
本当は主役を張れる存在なのに
主役を生かすこともお手のもの。
観客は肉だ肉だ!と叫びながら
チーズ、お前が居てくれて良かった、と
心の中でお礼を告げる。
天から水滴は絶え間なく降っている。
そうか。
この肉の舞台を楽しんで続けられているのは
野菜の爽やかな滴のおかげなのだ。
時より降ってくる酔いどれ滴。
僕はショーシャンクのように
身体全てをメキシコの夜空に捧げていた。
気づけば皿は空。第一部はこれにてお終い。
僕は何度も幕を開いて閉じた。
額を拭うときらりと光るまた滴。
きっとこれは汗だ。背徳感の結晶だ。
ハンバーガーを頬張った時と同じ。
不思議だ、満たせたはずなのに実感がない。
翌朝。
野菜をたくさん食べた!ビタミン不足解消!
自信に溢れる朝だった。
冷蔵庫にはまだ彼らがいた。トルティーヤはない。
大丈夫だ。
ふわふわの白米のうえでもいつも通り巡業である。
あの夜、僕は背徳感を満たせたのだろうか?
確かに汗は一杯流れたはずなんだけど。
いや、幻は幻のまま、と
僕はまたスプーンを動かした。
また翌日。
食べたら太るよな。
満たされたお腹と数字を見て
夢から覚めた僕は直ぐ目を瞑った。
↓僕がよく見ているレシピはこちらです。タコスは美味しいよ。
メシ通さんのご紹介
https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/kagezou-mesiya/2019-00040
