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2026/4/12 迷えるポーンの進路選択(プロモーション)

 今朝は6時に起きてから、一心不乱に部屋の掃除。ここ数日、なんだかんだバタバタしていて部屋が荒れていた。そんななかで昨夜、友人Yから「朝活でチェスを指そう、お前の家で」という恐ろしい提案が来た。

 Yは謎に「朝活」という言葉をよく使い、僕を休日の早朝に呼び出す。そして、なぜか朝活でさえあれば内容は何でもいいと思っている節がある。ある時は2キロくらい先にあるはま寿司(札幌には地元密着型の回転寿司が充実しているため、全国チェーンの回転寿司が逆に少ないのだ)まで歩かされ、ある時はコメダ珈琲店のモーニング、そしてある時はround1でボーリングと、たぶんマジで朝活なら何でもいいんだと思う。

 round1なら、家から1キロほど歩いていくだけだ。大したことはない。しかしチェスとなると話は別だ。僕の部屋には実家から取り寄せたチェス盤がある。そして札幌にチェス盤がある公共の場所はたぶんない(いや、あるのかもしれないけど僕は知らない)。Yが僕の部屋に来ることが確定である。なんてこった、ちょうど部屋が荒れているときに……

 昨夜はかじつくんとやっている別のアカウントで『劇場版名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の感想&レビュー記事をアップし、そのビューを伸ばすのに必死だった。おかげさまで300ビューを突破し、自己最高記録を更新した。映画感想レビューとしてはだいぶ跳ねたほうだと思う。いつか、この日記も毎日300ビューくらいされたらいいな...…

 そんなこんなで画面の見過ぎで眼精疲労になり、なんとか残りの気力で洗濯物を干して、そのまま気絶するように寝た。だから、今朝は朝から大掃除。ざっと3時間半でなんとか綺麗になり、Yを招集。

 Yはチェスをやるのが初めてだったので、一から手取り足取り教える。結果的には僕の4勝1敗。5戦目は勝ち方を教えるために負けてあげたんだから!べ、べつにぼーっとやってたら初心者に普通に負けたとか、そんなんじゃないんだからね!勘違いしないでよね!

 せっかくチェスを嗜んだので、今日はチェスの話をする。将棋とチェスのルールで最も違う点は、持ち駒の有無である。将棋では自分が捕った駒を持ち駒として使うことができるが、チェスはできない。展開のなかで盤面上からどんどんと自分の駒も相手の駒も数が減っていく一方なのだ。つまり、将棋は持ち駒の数的優位を生かして相手を捩じ伏せるゲームであり、チェスはその逆で、少ない手駒で相手を追い詰めるゲームであると言える。

 そのため当然、序盤の戦略としてはいかに相手の強い駒を減らしていくかに焦点が置かれる。強い駒がいなければいないほど、自分のキングが追い詰められるリスクを減らすことができるからだ。そして、将棋における歩兵にあたる弱い駒、ポーンは比較的放置されていく。お互いがそれを意識すると、次第に強い駒が盤面からいなくなっていく。そのなかで、終盤の決め手を担うのはなんとポーンなのだ。

 さっき「将棋における歩兵にあたる」と言ったが、ポーンの動きはもう少し複雑だ。歩兵と同様、下がるや横に動くことはできない。前進あるのみである。だが初期位置から動き出すときだけは2マスまで前に進むことができる。そのあとは歩兵と同様に1マスずつ進む。そして、ここが重要なのだが、なぜか正面の敵駒を取ることはできず、左右斜め前の敵駒を取ることができる。そのため、ポーンはグラグラと左右にぶれながら、前にひたすらちまちまと進んでいく。

ポーンの動き早見表。やっぱり変な動き。

 こうしてひたすら前に進んで1番前の8列目に到達した時、それ以上前に進めなくなったポーンはプロモーションと呼ばれる華麗な変身をする。なんとクイーン、ビショップ、ナイト、ルークのうち任意の駒に成ることができるのだ。これが終盤のカギを握る。強い駒がいなくなった盤面に、突然最強の駒が爆誕するからだ。これがきっかけで形成が逆転することも多々ある。

ポケモンでいうとイーブイみたいなもの

 これが将棋と大きく違う。将棋では、敵陣に入ったときに成れるものが駒の種類によって決まっている。歩兵・桂馬・香車・銀将は金賞に成る。飛車は竜王に成り、角行は竜馬に成る。これは親の家業を継ぐ近世日本人の進路に重なるところがある。百姓の子は百姓になり、商人の子は商人になり、将軍の子は将軍もしくは大名になる。

 現代の日本では、親の家業によって職業選択が規定されることは憲法的にはない。皆、何になっても良い。しかし、大学生は学部によって職業選択が規定されることがある。医学部医学科生はほとんど医者になるし、法科大学院生はほとんど法曹業界に入るだろう。そういう意味では、今でも大学生の一部は将棋の駒のような進路の規定された生き方をしている。彼らはそこまでの間に、固い意志でもう迷うのを終えているのだ、たぶん。僕は彼らのことをカッコいいと思う。

 僕は、そのような職業を規定する分野の大学院にいるわけではない。中学校と高等学校の国語の教員免許を持っているから、教員になってもいい。でも、そうでない進路を選んでもいい。ここ数日僕が悩んでいたのは主にそういうことだ。僕はクイーンのような圧倒的な飛距離を持たないし、ナイトのように跳ね回ることもできない。ただひたすら、ポーンのように一歩一歩進むほかない。おまけに他人やトラブルとぶつかって、左右にフラフラとぶれながらじわじわと前に進んでいく、か弱い駒なのだ。

 僕はポーンだ。
 迷えるポーン。
 僕はいま、いくつかの駒種にプロモーションすることができる。
 でも、8列目に到達する時は近づいている。
 いったい、何にプロモーションするのか。
 決断の時は、すぐそこにある。

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