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#本 #要約 団地の空間政治学

本のタイトル 団地の空間政治学
著者 原武史
発売日 2012年9月28日

◆はじめに 政治思想史から見た団地

• 章のテーマ


戦後日本の団地を単なる住宅や都市計画の対象ではなく
政治思想が具体的な形をとって現れた空間として捉え直すことがテーマになっている
団地という場に刻み込まれた戦後民主主義の理想や共同性への志向
その後の個人主義の台頭までを思想史として読み解こうとする導入部になっている

• 著者の主張や論点


団地は高度成長期の住宅不足を解消するための政策的産物であると同時に
戦後日本が思い描いた理想の社会像を体現する場だったという論点が提示される
そこでは平等な住環境や近代的な生活様式が重視され
階級差を薄める空間として団地が構想されたことが強調される
著者は団地をアメリカ的な豊かな生活の象徴とみなす通俗的な理解に疑問を投げかけ
社会主義的な共同性やヨーロッパの社会民主主義的な発想とのつながりも視野に入れている
さらに団地の自治会や住民運動に現れた政治意識を
戦後民主主義の一つの実験として位置づける視点が示される

• 具体例や事例


著者自身が幼少期を過ごした団地での経験が
団地を思想史的に読み解く動機として語られる
日本住宅公団による団地建設の方針
標準的な間取りや設備の設定などが
国家が国民の生活像を設計した具体例として紹介される
また団地における自治会の成立
住民による学校や商店の誘致運動などが
草の根の政治参加の場として取り上げられる
こうした事例を通じて
団地が政策と住民の主体性が交錯する政治空間だったことが示される

• 要約


団地は戦後日本の住宅政策の産物であると同時に
民主主義や共同性の理想が具体化した政治的な空間だったという問題提起がなされる
著者は団地を思想史の対象として捉え
国家の設計した生活像と住民の自治や運動を重ね合わせて
団地の政治性を読み解いていく方針を示している

◆第1章 「理想の時代」と団地

• 章のテーマ


高度成長期の初期にあたる時期を
団地が最も理想的な住まいとして輝いていた時代として捉え
その理想像がどのように形成されたかを検討する章になっている
団地が新しい生活様式の象徴として語られた背景を
国際的な影響と国内の政治状況から考えることがテーマである

• 著者の主張や論点


団地はしばしばアメリカ型の豊かな消費生活の象徴として理解されてきたが
著者はその見方を相対化し
日本の団地がソ連や東欧の集合住宅に近い側面も持っていたことを指摘する
標準化された間取りや設備
共同空間の重視などは
社会主義国の住宅政策と共通する要素を含んでいたという論点が示される
同時に団地は戦後民主主義の理想を体現する場として
平等な住環境や教育機会の提供を目指していたことが強調される
皇太子夫妻がひばりケ丘団地を訪問した出来事などを通じて
団地が国家的な理想の舞台として演出されたことも論じられる

• 具体例や事例


ひばりケ丘団地への皇太子夫妻の訪問は
団地が国民的な憧れの住まいとして位置づけられた象徴的な出来事として詳しく扱われる
新聞や雑誌が団地の生活を明るく近代的なものとして報じ
団地妻や団地家族のイメージを広めたことが紹介される
家電製品を備えた近代的な台所やリビング
子ども部屋などが
理想的な核家族像と結びつけられて宣伝された事例も取り上げられる
また日本住宅公団が設計した標準的な間取りや設備が
どのような生活スタイルを前提としていたかが分析され
そこに込められた価値観が明らかにされる

• 要約


高度成長期の団地は
近代的で平等な生活を約束する理想の住まいとして位置づけられ
国家的な演出も加わって国民的な憧れの対象となった
著者は団地をアメリカ的消費生活の象徴とみなすだけでなく
社会主義的な共同性や戦後民主主義の理想を体現した空間として捉え直している

◆第2章 大阪 香里団地

• 章のテーマ


関西を代表する大規模団地である香里団地をフィールドとして
団地の自治と政治意識を具体的に検証する章である
鉄道沿線の開発と団地建設がどのように結びつき
住民の生活と政治が交錯したかを明らかにすることがテーマになっている

• 著者の主張や論点


香里団地は
単に郊外の住宅地として整備されたのではなく
住民の自治活動が非常に活発だった団地として位置づけられる
著者は香里団地の自治会や住民運動に注目し
そこに革新的な政治意識が育まれていたことを論じる
学校や保育施設の不足
交通機関や商店の整備など
生活上の課題をめぐる要求運動が
地方自治や都市政策に影響を与えたことが指摘される
また香里団地の住民構成
職業や階層の分布が
戦後中間層の形成とどのように関わっていたかも論点となる

• 具体例や事例


香里団地の住民が
子どもの通学環境の改善を求めて学校建設を行政に働きかけた事例が詳しく紹介される
バス路線の拡充や駅までのアクセス改善を求める運動も
団地住民の集団的な行動として取り上げられる
商店街の形成や医療施設の誘致など
生活に必要な機能を団地内に整えるための活動が
自治会を中心に展開されたことが描かれる
これらの運動が
地方議会や行政との交渉を通じて成果を上げ
団地が地域政治の重要なアクターとなった過程が示される
さらに香里団地の住民の中には
革新系の政党や市民運動に積極的に関わる人々も多く
団地が政治的なネットワークの拠点となっていたことが述べられる

• 要約


香里団地は
住民自治が活発に展開された団地であり
学校や交通など生活上の課題をめぐる要求運動を通じて
地方政治に大きな影響を与えた
著者は香里団地を通じて
団地が戦後中間層の生活基盤であると同時に
革新的な政治意識の形成の場でもあったことを明らかにしている

◆第3章 東京多摩 多摩平団地とひばりケ丘団地

• 章のテーマ


首都圏郊外の代表的な団地である多摩平団地とひばりケ丘団地を取り上げ
東京の膨張と鉄道沿線開発の中で団地が果たした役割を検討する章である
中央線沿線と西武線沿線という異なる文脈の団地を比較し
団地文化と鉄道会社の戦略の関係を考えることがテーマになっている

• 著者の主張や論点


多摩平団地は
日本住宅公団が手がけたモデル的な団地として
戦後の標準的な住まい像を提示した存在と位置づけられる
ひばりケ丘団地は
私鉄会社が沿線イメージを高めるために活用した団地として
企業戦略と団地文化が結びついた事例として扱われる
著者は
これらの団地における自治会活動や住民運動を分析し
東京郊外の団地が政治的な共同性の場であると同時に
鉄道会社のイメージ戦略に組み込まれた消費空間でもあったことを論じる
また団地に住む人々の政治的志向
革新系への支持や住民運動への参加が
戦後東京の政治地図にどのような影響を与えたかも論点となる

• 具体例や事例


多摩平団地では
住民が公園や集会所などの共同空間を活用して
文化活動や学習会を行った事例が紹介される
自治会が中心となって
ごみ処理や環境美化
防犯活動などを組織し
団地内の共同性を維持しようとした取り組みも描かれる
ひばりケ丘団地では
西武線の沿線イメージと結びついた団地広告や
団地を舞台にしたテレビドラマなどが
団地文化を広めた具体例として取り上げられる
またひばりケ丘団地の住民の中から
地域の政治運動や市民運動に関わる人々が現れ
団地が政治的ネットワークの拠点となったことが示される
著者自身の別の著作で扱われた滝山団地の経験とも重ねながら
東京多摩地域の団地が持つ政治性が立体的に描かれる

• 要約


多摩平団地とひばりケ丘団地は
東京郊外の団地が
標準的な住まい像と鉄道会社のイメージ戦略を体現する場であると同時に
自治会や住民運動を通じて政治的共同性を育んだ空間だったことを示す事例である
著者はこれらの団地を通じて
東京の膨張と郊外化の中で団地が果たした政治的役割を明らかにしている

◆第4章 千葉 常盤平団地と高根台団地

• 章のテーマ


千葉県の常盤平団地と高根台団地を対象に
団地のピーク期から衰退期にかけての変化を追い
高齢化や孤独死など現在の問題の淵源を探る章である
団地がニュータウン的な広がりを持つ地域で
どのようにコミュニティが変容していったかを検討することがテーマになっている

• 著者の主張や論点


常盤平団地や高根台団地は
建設当初には活発な自治活動や祭りなどが行われ
強い共同性を持った団地だったが
時間の経過とともにその共同性が弱まり
個人主義的な生活スタイルが広がっていったと論じられる
著者は
団地の高齢化や孤独死の問題が
単に物理的な老朽化の結果ではなく
共同性を支えていた自治会や住民ネットワークの衰退と深く関わっていることを指摘する
また常盤平団地における外国人居住者の増加など
住民構成の変化がコミュニティの再編を迫っている状況も論点となる
団地がかつて持っていた政治的共同性が
どのように失われていったかを追うことで
戦後思想史の一断面として団地の挫折が描かれる

• 具体例や事例


常盤平団地では
団地祭りや盆踊りなど
住民が共同で企画する行事が盛んに行われていた時期の様子が紹介される
商店街が団地の中心的な交流の場として機能し
店主と住民の間に密な関係があったことも描かれる
しかし大型ショッピングセンターの進出や
自家用車の普及によって
団地内の商店街が衰退し
人々の交流の場が失われていった過程が示される
高根台団地では
自治会への参加率の低下や
共同作業への協力が得られにくくなった状況が具体的なエピソードとともに語られる
また常盤平団地に外国人居住者が増え
言語や文化の違いがコミュニケーションの障壁となる一方で
新たな多文化的な共同性の可能性も生まれていることが紹介される
こうした事例を通じて
団地の共同性が揺らぎ
孤立や孤独死の問題が顕在化していく過程が描かれる

• 要約


常盤平団地と高根台団地は
かつて強い共同性を持っていた団地が
商業構造や交通手段の変化
住民構成の変化などを通じて共同性を失い
高齢化や孤独死の問題を抱えるようになった過程を示す事例である
著者はこれらの団地を通じて
団地の挫折が戦後思想史における共同性から個人主義への転換と深く結びついていることを明らかにしている

◆第5章 団地の時代は終わったか

• 章のテーマ


団地の現在と未来を問い
団地の時代が本当に終わったのか
それとも形を変えて続いているのかを考える章である
団地の再生や新たな共同性の可能性を探りつつ
戦後日本社会の今後の住まいとコミュニティのあり方を展望することがテーマになっている

• 著者の主張や論点


著者は
団地の時代が単純に終わったとみなす見方に疑問を呈し
団地が依然として重要な居住空間であり続けていることを強調する
高層マンションやニュータウンなど新しい形態の集合住宅が登場しても
団地が持っていた共同性や政治性の問題は解決されていないと論じる
むしろ個人主義的な生活スタイルが広がる中で
孤立や孤独死の問題は深刻化しており
団地の歴史を振り返ることが
今後のコミュニティ形成を考える上で重要だと主張する
また団地の再生に向けて
自治会の再編や多世代交流の場づくり
外国人を含む多様な住民の参加を促す仕組みなどが必要だと論じ
団地を新たな共同性の実験場として捉え直す視点を提示する

• 具体例や事例


多摩ニュータウンなど
団地的な性格を持つ大規模住宅地が
高齢化や空き家問題に直面しつつも
住民や行政の取り組みによって再生を模索している事例が紹介される
自治会が高齢者の見守り活動を行ったり
子ども食堂や地域カフェを運営したりする試みが
新たな共同性の芽として取り上げられる
また団地の建物をリノベーションし
若い世代やクリエイターを呼び込むプロジェクトなどが
団地のイメージを変えつつある事例として紹介される
外国人居住者が増えた団地で
多文化交流イベントを開催し
言語や文化の違いを乗り越える努力が行われている例も挙げられる
こうした具体的な取り組みを通じて
団地が再び政治的共同性の場となりうる可能性が示される

• 要約


団地の時代は単純に終わったのではなく
形を変えながら続いており
高齢化や孤独死などの問題に向き合う上で
団地の歴史から学ぶべき点は多いと著者は主張する
自治会や住民の取り組み
リノベーションや多文化交流などを通じて
団地は新たな共同性の実験場として再び重要な意味を持ちうると展望されている

◆全体のまとめ

• 団地を思想として捉え直す視点


本書全体を通じて
団地は単なる住宅政策の産物ではなく
戦後日本が思い描いた理想の社会像が具体化した政治的な空間として描かれている
平等な住環境や近代的な生活様式
共同性を重んじる自治活動などが
戦後民主主義の思想と結びついていたことが示される

• 団地の栄光と挫折の歴史


高度成長期には
団地は理想の住まいとして国民的な憧れの対象となり
自治会や住民運動を通じて政治的共同性が育まれた
しかし商業構造や交通手段の変化
住民構成の変化などによって共同性が弱まり
高齢化や孤独死の問題が顕在化する挫折の過程が
大阪
東京多摩
千葉の具体的な団地を通じて描かれている

• 戦後思想史の一断面としての団地


著者は
団地の歴史を
戦後日本の思想史の一断面として位置づけ
共同性を重んじる戦後民主主義の理想が
どのように形成され
どのように揺らいでいったかを
団地という空間を通じて読み解いている
団地の自治や住民運動は
草の根の政治参加の場であり
その変容は日本社会における政治意識の変化と深く結びついていることが示される

• 団地の現在と未来への示唆


最後に著者は
団地の時代が終わったとみなすのではなく
団地の歴史から共同性の可能性を再発見し
高齢化や孤独死など現代の問題に向き合う手がかりを得るべきだと提案している
自治会の再編や多世代交流
多文化共生などの取り組みを通じて
団地は再び政治的共同性の場となりうるとされ
戦後思想史を踏まえた未来志向の視点が示されている

• 全体要約


団地の空間政治学は
大阪
東京多摩
千葉の具体的な団地を丹念に調査し
団地が戦後日本の理想と挫折を体現した政治的な空間であることを明らかにする書である
団地の自治や住民運動に現れた共同性と政治意識
その後の共同性の衰退と個人主義の台頭を通じて
戦後民主主義の思想史が立体的に描かれ
団地の歴史を踏まえた今後のコミュニティ形成への示唆が提示されている

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