名作和歌百首選【古詩歌浪漫解】

日本名作詩歌選
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二十一代集、中世幽玄体、本居宣長、与謝野晶子…
日本文化の支柱とすべき真の名作和歌百選。
春 30首
敷島のやまと心を人とはば
朝日ににほふ山ざくら花
清水へ祇園をよぎる花月夜
こよひ逢ふ人みなうつくしき
春来れば京のやまみな絵のごとし
光悦のやま宗達のやま
流れくる色にきほひて言の葉も
心にうかぶ花のさかづき
春をへてなほ分け入らむ山桜
わがことのはの花に逢ふまで
面影に花のすがたを先だてて
幾重越えきぬ峯の白雲
よしさらば散るまでは見じ山ざくら
花のさかりを面影にして
春の夜の夢の浮橋とだえして
嶺に別るる横雲の空
風かよふねざめの袖の花の香に
かをる枕の春の夜の夢
春の夜の有明の月に棹さして
川よりをちの宿やからまし
花誘ふ比良の山風吹きにけり
漕ぎ行く舟の跡みゆるまで
池水の底にうつろふ影の上に
ちりてかさなる山ざくらかな
やまざとは桜吹雪に明け暮れて
花なき庭も花ぞちりしく
ひさかたの光のどけき春の日に
しづ心なく花の散るらむ
春ごとに花の鏡となる水は
ちりかかるをやくもるといふらん
花の上にしばしうつろふ夕づく日
入るともなしに影きえにけり
月影も見し春の夜の夢ばかり
霞に残るあけぼのの空
玉島やいく瀬の淀に霞むらむ
川上遠し春の曙
水無瀬川かすみの水脈のあらはれて
一筋深き遠の山もと
風絶えてかすまぬ音もかすみけり
はつせの山の入相の鐘
いくさとの花鳥の音もかすむ日の
光のうちに籠る春かな
沈みはつる入日のきはにあらはれぬ
霞める山のなほ奥の峰
咲みちてしめの外まで梅園の
春風あまる四方の花の香
大空をおほはん袖につつむとも
あまるばかりの風の梅が香
こちふかば匂ひおこせよ梅の花
あるじなしとて春をわするな
空の梅はるけき月の都まで
ひとつにうつす広沢の池
春の苑紅にほふ桃の花
下照る道に出でたつ乙女
思ひ出でば同じ眺めに帰るまで
心に残れ春のあけぼの
見ぬ世まで思ひ残さぬながめより
昔に霞む春の曙
よき人のよき衣つけて寄り集ふ
都の嵯峨の花ざかりかな
夏 15首
卯花をもる影にして隙もなき
茂きの梢月ぞさやけき
光もて卯月の月のしらがさね
かさねようすし夜はのさ衣
すずみつるあまたの宿もしづまりて
夜深けて白き道のべの月
短夜の月の影透く玉杯に
酒はたたへてのむべかりけり
浮草も涼しき風に片寄りて
水さへ月を待つ今宵かな
こぼれ落つる池の蓮の白露は
うき葉の玉と又なりにけり
鳴きすてて涙こぼしてほととぎす
いづちいくたの杜の下露
夕立の雲もとまらぬ夏の日の
傾く山にひぐらしの声
夕立の雲飛びわくる白鷺の
つばさにかけて晴るる日の影
みどりこき日影の山のはるばると
おのれまがはずわたる白鷺
白鳥は哀しからずや空の青
海の青にも染まずただよふ
草深き夏野分け行くさ牡鹿の
音をこそ立たね露ぞこぼるる
山たかみ見おろす谷の家家に
ともす光や蛍そふらむ
宮城野の木の下闇に飛ぶ蛍
露にまさりて影ぞ乱るる
もえつつもおのが影見る涼しさに
蛍も水の上やゆくらむ
秋 20首
天つ星にまがひし蛍数たえて
水にぞくもる秋の夜の空
わたつみの豊旗雲に入日さし
今夜の月よ清に明けこそ
とまるべき宿をば月にあくがれて
明日の道行く夜半の旅人
石川や瀬見の小川の清ければ
月もながれをたづねてぞすむ
出でぬまの山のあなたを思ひこす
心やさきに月を見るらむ
いにしへの人は汀に影たえて
月のみすめる広沢の池
月を待つ暗き籬の花の上に
露をあらはす宵の稲妻
宵のまのむら雲づたひ影見えて
山の端めぐる秋の稲妻
終宵嵐に波をはこばせて
月のたれたる汐越の松
雲はみなはらひはてたる秋かぜを
松にのこして月をみるかな
花すすきおほかる野辺は唐衣
たもとゆたかに秋風ぞ吹く
荻の葉の夜風のそよぎ吹きかへて
月にしめれる笛の音かな
むさし野に秋のよすがらわけいりて
月と虫とのはてをしらばや
吹く風もしらべかはして今宵あふ
星やうけひくいとたけの声
吹きしをる四方の草木のうら葉みえて
風にしらめる秋の明ぼの
萩に露つゆには月を宿しつつ
風吹かぬ間を夢の世と知れ
風わたる野べの千草におく露の
いくたび花の色にちるらむ
おきわたす田の面の露も深き夜の
稲葉におもる秋の月影
ちりつもる紅葉に橋はうづもれて
跡たえはつる秋のふるさと
ちはやぶる神代も聞かず龍田川
からくれなゐに水くぐるとは
冬 15首
龍田川影のみ見えて風早み
空に流るる木々のもみぢ葉
神かぜにいぶきちらして紅葉せし
山より冬はふかくなるらむ
おのづから氷り残れるほどばかり
絶えだえに行く山河の水
とぢはてぬ水一筋の道見えて
あたりは氷る冬の山河
流れ行く落ち葉ながらに氷るらむ
風より後の冬の山河
ただひとへ上はこほれる河の面に
ぬれぬ木の葉ぞ風にながるる
月宿る沢田の面に伏す鴫の
氷より立つ明け方の空
時雨つつ四方のもみぢは散りはてて
霰ぞおつる庭の木のはに
かげとめし露のやどりを思ひいでて
霜に跡とふ浅茅生の月
ひかげさす枯野の真葛霜とけて
すぎにし秋にかへる露かな
山深み霜ふむ跡の一すぢや
木の葉のおくの人の通ひ路
白妙に幾重かさなる色ならむ
氷の上の雪の夜の月
降りうづむ野山の雪を光にて
たがひにこゆる冬の夜の月
島山はつもるも見えずかきくれて
友船しろき雪の海原
冬草も見えぬ雪野のしらさぎは
おのが姿に身をかくしけり
恋 10首
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の
長き永夜をひとりかも寝む
色見えでうつろふものは世の中の
人の心の花にぞありける
思ひ川たえずながるる水のあわの
うたかた人に逢はで消えめや
葛の葉のうらみにかへる夢の世を
わすれがたみの野辺の秋風
長からむ心もしらず黒髪の
みだれてけさは物をこそ思へ
はかなくもたえぬうつつにしたふかな
見し夜の夢の昔がたりを
夕暮はかならず人を恋ひなれて
日もかたぶけばすでに悲しき
その子二十櫛に流るる黒髪の
おごりの春の美しきかな
おもかげも絶えにし跡もうつり香も
月雪花にのこるころかな
君にちかふ阿蘇の煙の絶ゆるとも
万葉集の歌ほろぶとも
雑 10首
かにかくに祇園はこひし寝るときも
枕の下を水のながるる
寂しければ酒ほがひせむこよひかも
彦山天狗あらはれて来よ
大寺の円き柱の月影を
土に踏みつつものをこそ思へ
おのづからうつらばうつるうつるとは
月も思はず水も思はず
生もゆめ死も夢ゆめもやがてゆめ
ただ一枝の花をながめて
東の野にかぎろひの立つ見えて
かへり見すれば月傾きぬ
ひむがしの大樹のもとの神がたり
四方の草木も言やめて聴け
琴のねに峰の松風かよふらし
いづれのをよりしらべそめけむ
冥きより冥き道にぞ入りぬべき
はるかに照らせ山の端の月
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ
乙女の姿しばしとどめむ
補遺 連歌 5首
花にかさなる峰もおぼえず
桜ちるあとのしら雲日は暮れて
水上まさる庭の夏山
花落つる池の流れをせきとめて
夕かさねて秋やゆくらむ
月いづる山は山より猶遠し
錦のうへに文字や織るらむ
山の端の紅葉をわたる秋の雁
音もあられのあらし木枯
瀧津瀬の落ち葉が上に玉こえて
日本名作詩歌選
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