サイエンス?理系?肩書迷子のための科学技術コミュニケーションのコンパスを考えてみた
※この記事は北大 科学技術コミュニケーター養成PJ CoSTEPの講義(2026年5月〜6月)と教科書を参考に執筆しています。
「やっぱり私はサイエンスライターじゃなくて理系ライターを名乗りたい」
CoSTEPで科学技術コミュニケーションを学び始めて2か月以上が経ち、肩書迷子であった私は改めてそう思った。
”サイエンス”と”理系”で何が変わるのか、正直その定義ははっきりしない。
教科書に書かれていることと、実際に理系ライターさんに聞いたお話とでは違う点があるからだ。
そんな中、講義を通じて私が一番学んだことは
科学技術コミュニケーションの中で、自分の立場(目的)を明確にしておくこと
の大切さだ。
なぜ立場(目的)が大切か。科学も技術もコミュニケーションも多種多様な業界と関連先があり、社会課題との関連も強い。簡単に言ってしまうと、
めっちゃややこしくて迷子になる。
いや、本当に。「ややこいな!!」が私の口をついて出る。この感覚はおかしくない。
実は教科書にもこんなことも書かれている。
■逆にわからなくなってくる
「サイエンスコミュニケーションとは?」この問いに答えることは、じつは一筋縄ではいかない。
・・・(中略)
学べば学ぶほど、逆にわからなくなってくる。
・・・
「逆にわからなくなってくる」ことは、専門家に一歩近づくために、必要不可欠な過程である。
そう、わかんなくなってくる。だからこそ、
多様な業界と分野の地図上で自分は何を達成したいのか?
その目的を明確に持つことが大事なのである。
目的を明確にするための地図として、20周年を期にCoSTEPが設定した科学技術コミュニケーションの目的 CoSTEP宣言というものがある。
この宣言に、私は教科書から太字の2点を加えたい。以下6点が科学技術コミュニケーションを行うための地図になる。
1. 俯瞰してみる
2. 伝える
3. 育む
4. 省みる
5. 繋ぐ
6. 仲間を作る
自分が科学技術と社会の狭間で何をしたいか。それがこの1~6の活動の中でどれに当てはまるか。
この地図を見ながら自分の歩きたい場所を探す。講義を受け、自分の活動に落とし込もうとした結果、ポイントを3つ絞ることができた。
科学技術コミュニケーションの地図を歩くコンパス
1.What do you want to do? 何をしたい?
研究を伝えたいのか、教育につなげたいのか、研究技術職を社会実装したいのか、政治や一般市民との関係構築をしたいのか、日常の課題と科学のもやもやを晴らしたいのか。
私の例→科学技術の知識を専門家から話を聞いて一般に面白く伝えたい、翻訳したい。
2.From what standpoint? どの立場で?
科学に従事している人としてなのか、学校の先生や教育者としてなのか、大学や専門機関の広報担当としてなのか、親としてなのか、社会課題を解決したい一般人としてなのか。
私の例→科学に興味がない一般人の代表として科学の面白さを伝える人でありたい。
3.To Whom?誰に?
専門家に伝えるのか、知識のない大人に伝えるのか、子供に伝えるのか、世間一般という広いオーディエンスに問いかけるのか、行政に伝えるのか、メディアに伝えるのか、顧客に伝えるのか。
私の例→私と同じように科学に興味がなく過ごしてきた人に、面白いという気づきのきっかけを作りたい。
1.2.3.の問いがまとまれば、おのずと自分の地図上の立場と誰とどのような関りを持っているのが良いか、わかってくるのではないだろうか。
私の例をみると、私は科学技術コミュニケーションを学ぶことで
「科学者や専門家から聞いて、科学に興味がない人の視点から科学に興味がない人に気付きを与える、伝える人になりたい」
という感じになる。
ここでの意外なポイントは
※How?どうやって?は重要視しない
ということだ。
私はライターになりたいから、もちろんライティングが第一ではある。
しかし、「科学者や専門家から聞いて、科学に興味がない人に面白いという気付きを与え伝える人になりたい」を実現する方法はライティング以外にもある。
時によってイラストレーションやアニメーションが有効かもしれないし、対話の場づくりを行い人と直接つながることが有効な時もある。
手段は場面によって変わる。
私が一番得意なライティング以外の力を広げるために、仲間が必要になる。
ちなみに手法は本当に色々ある。ゲーム、トークイベントだけでなく、RPG的な劇をしたり芸術鑑賞をしたり。
その時々で最善の方法が尽くせるように、仲間が集まれば強い。
そんな仲間を作ったり自分の目的やできることを探すにも、CoSTEPでの講義と受講生、講師陣はすごく頼りになる。
まだ2ヵ月しかたっていないが、「ありがたや~~~」と毎日思いながら生活している。
ありがとう!(CoSTEPの回し者みたいになってしまった)
もちろん、すぐにやりたいことが見つかるわけではない。
(私も理系ライターやりたいと言い出すまでに右往左往していた。)
地図を見ながら自分がモヤモヤしたり、ワクワクしたり心が動くポイントを探す時間が必要だ。
結局何と名乗るのかは自分の肌感で決めていい
私はやっぱり「サイエンスライターじゃなくて理系ライターを名乗りたい」と思う。
理由は「サイエンスと名の付くものに嫌悪感がある」という小難しいこと苦手マンの肌感と理系分野に関わりたい願望。
言葉の定義も違う。
辞書にはこのように区別されている。
科学
①ある対象を一定の目的方法のもとに研究し、その結果を体系的に組み立てた学問。一般法則を見つけたり、またその応用を考えたりする。②(狭義で)自然科学。
サイエンス
①科学、学問。②自然科学。
理系
理科の系統。理科系。↔︎文系
科学・サイエンスの方が広く学問全般を指し、理系は理科目を指す。
あと、理系と言われると「へー理系なんや」くらいの広くやんわりとしたカッコよさを感じる。
自分の中での絶妙な言葉のバランスの違和感は残したくないので重要だと思っている。
(あとシンプルに理系ライター集団パスカルに憧れている)
以前書いた記事で、パスカルの竹林さんに聞いた理系ライターとサイエンスライターの違いを書いている。
サイエンスコミュニケーションを学んだ今、サイエンスライターと理系ライターの目的の違いは感じない。
わかりやすい差は名乗っている人口と、サイエンスと理系の違いを知らない人が記事を書いてほしいと思ったときに「サイエンス ライター」で検索するか、「理系 ライター」で検索してるかの違いだと思う。
この検索する側の認知の違いで、仕事が舞い込む方向性が若干違うんじゃないかな。
理系ライターは少なすぎて仕事が舞い込みやすいとおっしゃっていたし。
まとめ
最後が長くなってしまったけど、科学技術コミュニケーションを学んで私が感じたことを自分の現状に落とし込みながら書いてみた。
大切なのは、科学技術コミュニケーションの中での自分の立場を持っておくこと。
そのための地図が教科書+CoSTEP宣言。
1. 俯瞰してみる
2. 伝える
3. 育む
4. 省みる
5. 繋ぐ
6. 仲間を作る
これを実際に取り入れるためのコンパスが以下3点。
1.What do you want to do? 何をしたい?
2.From what standpoint? どの立場で?
3.To Whom?誰に?
※How?どうやって?は重要視しない
地図とコンパスをもって、自分の気持ちが動く場所を探すようにたくさん行動するのも大事だ。
「科学者や専門家から聞いて、科学に興味がない人の視点から科学に興味がない人に気付きを与える、伝える人になりたい」
私の地図の歩き方に共感していただける方、一緒に何か作れそうな方、違った視点を持っている人も、いろんな人とお話したいな。お気軽にお声がけください✨
~たに氏のnote初めての方へ自己紹介~
現役技術職員の理系ライター。科学者や専門家、学芸員、技術職のことを一般に伝えたい。”偏愛をひも解く”をモットーに科学技術を翻訳するライターを目指して活動中。
水族館ZINEを作った経験から雑誌風、ムック本風の執筆〜デザインも可能。
ご連絡先:tanihina1214@gmail.com



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